白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.36
24改定、ケアマネジャーが心がけるべきポイントは(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、単位数まで明らかになった2024年度の介護報酬改定(24改定)の内容を踏まえ、居宅介護支援事業所の管理者やケアマネジャーが心がけるべきポイントなどについて、白木先生がアドバイスします。
「質」より「量」を重視した24改定
全容が明らかになった24改定ですが、ケアマネジャーに関する内容については、次の方針が貫かれているように思えます。
「今いるケアマネジャーにより多くの件数を持ってもらえる仕組みを導入することで、介護難民の発生を防ぐ」
つまり、担い手を増やすのでなく、1人がより多くの利用者を担当できるようにすることで、ケアマネジャー不足に対応しようとしている、ということです。その方針がもっとも端的に現れているのは、介護報酬がほぼ半減する担当件数が引き上げられたこと。いわゆる「逓減制の緩和」です。そしてもう一つ挙げられるのは、テレビ電話などを活用する「オンラインモニタリング」の導入でしょう。
少しうがった見方をすれば、24改定ではケアマネジメントの質はさておき、ケアマネジメントの量を優先する方針が示されたとも言えます。この点、私はかなりがっかりしました。同じように気落ちされた方も少なくないでしょう。
それでも、(当たり前のことですが)ケアマネジャーの必要性と存在意義は変わりません。介護保険が円滑に運用され、機能していることや、引きこもりの方やヤングケアラーの存在など家庭や地域での潜在的課題を社会全体で共有できるようになったことは、ケアマネジャーのアウトリーチの成果と言っても言い過ぎではないとおもいます。特に事業所の管理者は、24改定や法定研修の変更に関わらず、「私たちケアマネジャーは地域社会において重要な役割をにない、存在価値のある存在である」ことを現場のメンバーに伝え続けていただきたいと願っています。
ケアマネの処遇改善のためにも「特定事業所加算」の算定を!
その上で、24改定を踏まえ、現場は何を心がけるべきかを考えます。
24改定では、居宅介護支援の基本報酬の単位は10単位から13単位の引き上げとなりました。単位が引き上げられたこと自体は評価できるでしょう。ただ、この程度の単位の積み増しだけでは、ケアマネジャーの処遇改善はおろか、昨今の急激な物価高騰に対応することも難しいでしょう。
健全な経営を実現するには、やはり特定事業所加算の算定が必須となるでしょう。それも、できる限り上位の加算を目指すべきです。幸い、特定事業所加算の単位数も全区分が14単位の引き上げとなっています。さらに特定事業所加算に関しては、運営基準減算の要件が削除されました。この点も現場の負担を軽減する上で前向きな変化と捉えることができます。しかし、特定事業所加算の要件から運営基準減算が外れたからといって、運営基準減算そのものがなくなったわけではありません。念のため、気を付けてください。
残念ながら、24改定によって特定事業所加算が劇的に算定しやすくなった、というわけではありません。それでも、この物価高騰を乗り越え、ケアマネジャーとして働く方の処遇を改善するためには、できる限り特定事業所加算を算定するよう工夫していただければと思います。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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