白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.17
ヤングケアラー問題…ケアマネジャーはどう向き合う(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。第17回は、ヤングケアラーを支援する上でケアマネジャーができることを考えます。
丁寧なアセスメントで問題の有無を探る
介護保険制度だけでは解決が難しいヤングケアラーの問題ですが、それでも、ケアマネジャーができることはあります。
まずできることは、担当している家庭に課題を抱えるヤングケアラーがいるかどうかの確認です。就労前の学生など、若い家族がいる家庭を受け持った時は、特に気を付けてアセスメントをしましょう。
とりわけ注意が必要なのは神経難病を抱えた利用者や、認知症のBPSD(周辺症状)が激しい利用者の家庭、高次脳機能障害がある利用者の家庭です。こうした利用者がレスパイトのための入院やショート利用をしていない場合、誰に介護のしわ寄せが行っているのか、丁寧にアセスメントしなければならないでしょう。主な介護者はもちろんですが、それを支援し、補っている人の状況についても確認すべきです。
対応は地域包括支援センターを中心に
支援が必要なヤングケアラーが確認できた場合は、まずは地域包括支援センターに連絡しましょう。
繰り返しになりますが、介護保険制度だけではヤングケアラーを支えることは、きわめて難しい。時には教育現場や企業、地域社会との連携が必要になる場合もあります。やはり、地域包括支援センターが中心となって対応する必要があるでしょう。
ケアマネの「本分」をヤングケアラー問題にも生かして!
ヤングケアラーの中には「家族を介護するのは当たり前」と思い込み、自分の置かれた状況を受け入れてしまっている人もいるでしょう。また、「サービスを使うとお金がかかるから、子どもに介護を手伝わせる 」と、家族や親族から介護を押し付けられている場合もあるかもしれません。
そうした人には介護保険だけでなく、支援のためにはさまざまな制度があることを伝えたほうがいいでしょう。知らないからこそサービスにつながっていない場合もありえますから。
その際も、ケアマネジャーだけでなんとかしようとするのではなく、地域包括支援センターも巻き込んで、家族にかかわる様々な立場の方に情報を共有し、アプローチし続けましょう。ケアマネジャーの声が届かなくても、ヘルパーさんや訪問看護師さんの声なら届くかもしれません。医師や学校の先生から伝えることで、何かが変わることだってあるでしょう。
私たちケアマネジャーの本分は、在宅の現場に潜む課題を把握し、その課題を解決するために、関係機関につなげていくことです。ヤングケアラーの問題解決にも、その本分を発揮しましょう。大切な子供たちの将来を守るためにも。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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