白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.14
注目の「LIFE」、ケアマネが知るべきことと、やるべきこと(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。第14回は、国が推し進める科学的介護の基本システム「LIFE」についてです。
21改定の目玉施策「LIFE」とは…
「科学的介護の本格始動」。2021年度の介護報酬改定の目玉施策の1つです。そして、その根幹と位置付けられるのが、新たに登場した全国規模の介護のデータベース「LIFE」です。
ただ、全く新しいシステムというわけではありません。利用者の状態を表すデータ「CHASE」や通所・訪問リハビリサービスに関するデータ「VISIT」など、すでにあるデータを統合して誕生したものです。
「LIFE」は、全国の介護事業者からデータを集めるだけでなく、集まったデータを各事業所にフィードバックもします。PDCAサイクルに基づいた取り組みを推し進めることで、要介護度やADLの維持・改善を目指すためです。
データのフィードバック、ケアマネにもメリットあり!
そうしたデータのフィードバックは、ケアマネにとっても有益な面があります。
具体的には、デイケアやデイサービスでの取り組みの実情をデータで確認できる点は、多くの居宅のケアマネにとってありがたい情報といえるでしょう。
そうしたデータは、アセスメントを省みたり、データを入力した事業所のサービスの内容を見直したりするきっかけにもなります。場合によってはアセスメントでの勘違いや、不適切なサービスを発見することにつながるかもしれません。
例えば、ドライヤーを使えるはずの人まで髪を乾かしてしまっているようなことがあれば、ちょっと過剰な介護といえます。データを通し、その事実が把握できたのなら、サービスの提供のしかたを少し見直すべきでしょう。
知っておくべき「LIFE」の限界
ただし、現状ある「LIFE」のデータだけで、「サービス回数そのものを増やすかどうか」や「サービスを変更するかどうか」といったことまでを判断するのは、少し不安です。
また、認知症の人や高齢で要介護度が重い方の場合は、「LIFE」のデータのフィードバックがADLの改善やQOLの改善に役立つかどうが、疑問が残ります。
さらにデータの確かさにも不安がないわけではありません。例えばデイサービスの場合、複数の職員が日替わりで利用者をケアします。つまり、決まった人が一定の基準に基づき、利用者の経過を観察し続けているわけではありません。そうしたサービスにおいて、利用者の状態の変化を正確に判断するのは、決して簡単なことではありません。
「LIFE」のデータを活用する際には、こうした限界も認識しておく必要があると思います。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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