ケアマネのための身守り講座 VOL.2
利用者や家族からの無理難題への対応
日本ケアマネジメント学会副理事長で、ケアマネとしても20年近くのキャリアを持つ白木裕子先生が、ハラスメントの発生を防ぎ、いざという時に身を守るための術を伝授する「ケアマネのための身守り講座」。第2回のテーマは「利用者や家族からの無理難題への対応」です。白木先生は、「まず、できることとできないことを、はっきりさせること。それでも無理難題を突き付けてくる場合は、事業所全体で対応しつつ、地域包括支援センターや自治体とも緊密に連携すべき」と指摘します。
悩ましい「ギリギリの無理難題」
ケアマネであれば、利用者や家族から無理難題を言われて困ったことは、一度や二度はあるでしょう。それも度が過ぎればハラスメントです。法で認められていないことや、公序良俗に反するようなことを要求される場合は、きっぱりと断りましょう。
悩ましいのは次のような場合です。
- ヘルパーが気に入らないからと、何度となく交代を求める
- 「特定事業所加算を算定している以上、24時間対応が可能なはず」と言い張り、深夜や早朝に連絡を繰り返す
- サービス担当者会議を週末の夜に開くよう求める。しかも、必ずすべての事業者の代表を参加させるよう要求する
- 月末のギリギリの段階で、わずかな誤字などを指摘し、書類を丸ごと書き直させる
いずれも制度で認められていないわけではありません。ただし、この要求をすべて受け入れていると、仕事が進まなくなるでしょう。こうした「ギリギリの無理難題」に対応するかどうかは、かなり難しい問題です。
対応するかどうかの見極めはケース・バイ・ケースですが、例えば単なる好みで何度もヘルパーの交代を求める場合は、過剰な要求といえます。
悪意ある要求には行政を巻き込んで!
中には悪意を持ってとてもできない対応を迫る、“モンスター利用者”もいるでしょう。
利用者や家族からの要求にそうした危うさを感じた場合は、行政や地域包括支援センターと相談し、協議すべきです。協議の結果、悪意のある過剰な要求と判断されれば、利用者に対応できないことを冷静に伝えましょう。
特に対応が困難な場合は、担当者会議に行政関係者の参加を求めるのも一つの手です。また、打ち合わせや交渉の内容を録音することも有効です。
NGその1-「対応を担当者に丸投げ」
具体的な注意点としては、対応を現場担当者に丸投げしないこと。事業所全体の課題として、管理者も対応に乗り出しましょう。また、対応中のケースの詳細については、事業所全体で共有しましょう。悪意のある人が急に事業所に電話してきたりする場合もあります。そんな時、適切に対応するためには詳細な情報の共有は不可欠です。
NGその2-「土下座」
時には、こちらが謝罪すべきこともあるかもしれません。しかし謝る場合でも、何に謝罪しているのかを明確にし、その上で丁寧に詫びましょう。担当者や管理者に土下座を求めてくることもあるでしょうが、どのような事態であっても、土下座は決してやってはなりません。
担当者の人格を否定し、攻撃してくるような人もいるでしょう。そのようなケースに直面したら、管理者は契約の打ち切りも想定し、毅然と対応してください。それでも強硬に要求を通そうとしたり、ハラスメントを激化させたりする場合は、弁護士に連絡し、対応を検討してください。
利用者(お客様)は神様でしょうか?ケアマネは社会保険制度の支援が責務です。利用者の御用聞きではありません。不当な要求にはしかるべき対応を取りましょう。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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