白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.01
生活援助に基準回数!(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する新企画「実践! 仕事力の磨き方」。今回は「生活援助の基準回数」について、前・後編でお送りします。
基準回数を超えたら市区町村に届け出!
昨年10月から、訪問介護に新しい基準が設けられました。決められた回数以上の「生活援助」をケアプランに付ける場合、そのケアプランを市区町村に届け出なければならなくなったのです。
その回数は、下の表の通りです。
生活援助の基準回数(1月あたり) | |
---|---|
要介護1 | 27回 |
要介護2 | 34回 |
要介護3 | 43回 |
要介護4 | 38回 |
要介護5 | 31回 |
市区町村は、ケアマネから届け出のあったケアプランを地域ケア会議で検証します。そして、改善が必要という結果が出れば、ケアプランの組み直しを促してくることもあります。
もちろん地域ケア会議には、ケアプランを作ったケアマネも出席しなければなりません。
評判の悪い制度改正、その真の狙いは…
この制度改正、現場には評判が悪いですね。中には「国は生活援助を切り捨てようとしているのではないか」と誤解する人もいます。昨年4月、「生活援助」の単位数が減らされたこともあり、そう思ってしまう人がいるのも無理はありません。
当然のことですが、この制度は「生活援助」の切り捨てを目的としたものではありません。むしろ、ヘルパーと利用者が一緒に取り組む「生活援助」を増やすことで、利用者の自立を促すことを目的とした制度です。
その点は、基準回数導入に先立ち、「生活援助」と「身体介護」の線引きが大きく変更されたことでもわかります。一言で言えば、これまで「生活援助」だったサービスの一部が、ヘルパーが「共に行う」ことで、回数の制限がなく単位数も高い「身体介護」に位置付けることができるようになりました。その内容については来月に詳しく説明します。
本人ができることや好きなことを、ヘルパーと「共に行う」ことで、自立する力と生活の質を高める。ケアマネは、その実現を目指してアセスメントし、プランを組んでほしい―。
これこそが今回の制度改正の趣旨なのです。
もはや許されない!漫然とした生活援助
一方で、もはやNGといえるのが、「今まで使ってきたサービスだから‥」と「生活援助」を使い続けること。きちんとしたアセスメントをせず、漫然と「生活援助」を続けると、本人ができることまでヘルパーが肩代わりすることになります。そうなると、「生活援助」を使うことで、逆に本人ができることが減ってしまうことになりかねません。
また、「訪問介護以外のサービスを使うと高くつくから…」という、マネーマネジメントを優先したプランも通用しません。本人の自立を考えるなら、介護保険外のサービスの活用だって、積極的に提案すべきでしょう。
ケアマネのアセスメントと利用者への理解が不足していた場合の週間サービス表の一例。利用者にとって不可欠なサービスであれば、毎日でも生活援助を付ければよいが、あまりに頻繁な場合は、なぜ必要なのか、改めて見直すことも大切。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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