ケアマネを支える先進自治体 VOL.12
【生駒市】生駒市が4つの地域ケア会議を実施するワケ(後編)
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、介護や医療に携わるさまざまな専門職と行政関係者らが知恵を絞る地域ケア会議。困難事例への対応を検討するだけでなく、ケアマネジメントの質向上のためにも大変、有益な会議です。この地域ケア会議を4つも運営しているのが奈良県生駒市です。地域包括ケア推進課の担当者に、その狙いなどを聞きました。
写真右から:
地域包括ケア推進課 森口史子さん、予防推進係長・澤辺誠さん、駒井裕子さん
他、基幹型地域包括支援センター 係長・田村純子さん
ケアマネの意識変革につながる「I」
―4つの地域ケア会議を設置したことは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーにとって、どのような意義があるのでしょうか。
4つの会議の中でも「地域ケア会議(I)」は居宅介護支援のケアマネジャーさんの意識を変えるきっかけになると思います。
―ケアマネジャーの意識、ですか。
はい。居宅介護支援のケアマネジャーさんは、ほとんどが要介護の方を担当しています。要支援の方や総合事業を使う方に比べて、より介護を必要としている人です。
そのせいか、ケアマネジャーさんは「その人が生活する上で必要なサービスを用意する」「生活を送る上で不足したり、不便であったりすることをサービスでフォローする」といった意識を強く持ち、ケアマネジメントしている方が多いように感じます。
―そうした意識だと、具体的にどのような対応となるのでしょうか。
例えば、「自宅では入浴が難しい上、外出も難しい人に、入浴と外出の機会を確保するため、1週間に3日、デイサービスを使ってもらう」といったような対応となるでしょう。
―あまり問題があるようには思えない対応ですが…
その通りです。こうした意識でサービスを提案すること自体は問題ないし、むしろ必要なことだと思います。
ただ今後、地域社会に高齢者がどんどん増えていくことを思えば、ケアマネジャーの皆さんには、こうした「足らずを埋める」意識だけでなく、より自立支援につながる意識と発想も持ち合わせていただきたいと思うのです。
「自立支援」の意識と発想を持つことの意義は
―より自立支援につながる意識と発想を持つと、実際の日々のケアマネジメントでは、どのような対応ができるようになるのでしょうか。
先の例えに続けると、「1週間に3日、デイサービスに通ってもらった。さらに、サービスを使わない残り4日には何をするのか」という点にまで意識が向くことになります。その人の自立した生活を維持し、向上させていくには、こういう意識が必要だと思うのです。
―なるほど!
居宅介護支援のケアマネジャーさんは利用者さんの要望を聞き、家族さんの声に耳を傾けるだけでも大変でしょう。「とにかく今、この利用者さんを支えるにはどうしたらいいのか」に意識が集中してしまってもやむを得ないと思います。
それでも、自立支援のための意識も持ち、サービス以外の日にも目を向けるようになってほしいとも思うのです。なにしろ、在宅の要介護高齢者の最も近くで生活を支えているのがケアマネジャーさんですから。
自立支援のための意識を育てる上で、当市の「地域ケア会議(I)」に参加することは大変、意味があると思います。参加者全員が、常に自立支援の視点で話し合いをしているわけですから。
インフォーマルの活用を促す国の制度
―介護保険サービスを利用しない期間まで目を向けるとなると、インフォーマルサービスも意識する必要もあるように思います。
そうですね。ただ国も、ケアマネジャーさんにそうした意識を持ってほしいと期待し始めているのではないでしょうか。2021年度の介護報酬改定で、居宅介護支援の特定事業所加算の要件に「必要に応じて、多様な主体等が提供する生活支援のサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していることを要件として求める」ことが加わったのは、その表れだと思います。
―ところで、昨年から続くコロナ禍は、地域ケア会議にどのような影響をもたらしていますか。
地域ケア会議は人数制限をして実施しています。実は何回かオンラインで実施したのですが、どうも、意見が言い合いにくい。少人数の会議ならオンラインは便利です。しかし大人数では、参加者の反応や発言を把握しにくい場合があり、使い勝手が悪いですね。特に当市の地域ケア会議は短い時間で多くのテーマをこなさなければならないため、オンライン会議は不向きでした
「予防は包括、要介護は居宅」から卒業を
―最後に、今後、居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんに期待したいことを教えてください。
ケアマネジャーさんの中には、介護保険制度が誕生して以来、ずっと現場で頑張っているという人が数多くいらっしゃいます。20年余り現場で培ったノウハウは、まさに地域の宝ですよ。
今後は、そのノウハウを利用者の自立支援のために積極的に生かしてほしいですね。具体的には「予防は包括、要介護は居宅」という発想から卒業し、要支援者などへの支援などに、より目を向けてほしいのです。
そもそも利用者の立場に立てば「要介護の間はケアマネさんが担当。改善したら地域包括支援センターが担当」では、混乱するのではないでしょうか。
さらに言えば、介護保険制度内だけでなく、地域の資源やインフォーマルサービスまで活用し、利用者の生活の自立を支えるという意識を持ってほしいですね。
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