ケアマネのスキルアップを直接支援する仕組みも

―金沢市の地域ケア会議マニュアルには「ケアマネジメント支援会議」も置かれています。これは、どのような会議でしょうか。

「ケアマネジメント支援会議」は、地域のケアマネジャーのスキルアップを目指す会議で、具体的には地域内のケアマネジャーが参加する事例検討会です。地域包括支援センターの主任ケアマネジャーがスーパーバイザーとなり、毎年1回から2回ほど実施しています。

2つの体系の会議で支援困難な人を地域で支える

―なるほど。これらの「地域ケア会議マニュアル」を作成したことで、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの活動には、どのような影響があったのでしょうか。

まず、先述した「ケアマネジメント支援会議」や随時型の地域ケア個別会議があることで、一人ひとりのケアマネジャーだけでは支援が困難な人でも、多職種が連携し、地域で生活を続けることができています。

例えばつい先日、認知症により自宅に帰れなくなってしまった利用者を担当する居宅介護支援事業所のケアマネジャーと話をする機会がありました。その方は、もともと家族や親戚とも縁が薄い上、自宅に帰れなくなることが何度もあり、その度に警察に保護される、ということを繰り返していました。

ケアマネジャーや介護関係者が認知症の一人暮らしの方を支えるのは、実はとても難しい。公的な介護保険サービスだけでは、十分に対応できないからです。しかもその方の場合、家族や親戚からの支援も期待できません。それでも、その方の担当ケアマネジャーは「私一人では、どこまでどのように支援すればいいかも分からないケースではありますが、地域ケア会議で地域包括支援センター職員や行政の方から助言と支援をいただくことで、なんとかなっています」とおっしゃっていました。

また、定例型の地域ケア個別会議は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが介護保険制度の枠を超えたネットワークを築く上で、役立っているようです。実際、地域内にある介護保険制度以外のサービスを把握したり、成年後見制度や年金の仕組みへの理解を深めたりすることができているという話も聞いています。

ケアマネに期待したい「発見や支援が難しいケースの把握」

―支援体制が十分に機能している金沢市ですが、今後、ケアマネジャーに期待することはどのようなことでしょうか。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーの一番の特性は、1人ひとりの高齢者の家に定期的に訪問し、その方の生活状況を詳細に把握できることです。だからこそ、いわゆる「8050問題」や「ヤングケアラー問題」など、制度のはざまにあって、発見や支援が難しい問題を把握する上で、とても重要な役割を担っていただけると期待しています。

しかし、だからといってすべてをケアマジャーにお任せしたい、というわけではありません。

課題を見つけることは期待しますが、課題を解決するのは多職種による連携で行うべきです。それを実現するために地域ケア会議のマニュアルを策定したのですから。