ケアマネを支える先進自治体 VOL.14
【福岡市】スタートアップ企業と連携、ケアプラン作成支援AIを開発!(後編)
近年、急に注目を集め始めているのが、AI(人工知能)によるケアプラン作成支援です。ケアマネジャーの負担軽減にもつながるツールとして期待されていますが、現場には、まだまだ浸透していません。そんな中、スタートアップ企業と連携し、ケアプラン作成支援のためのAIの開発に乗り出したのが、福岡市です。介護保険課の担当者に、その内容や目的などを聞きました。
写真左から:
福岡市 保健福祉局 介護保険課 課長 青木忠通さん、主査 伊藤真一さん
AIの「将来予測」で目指す、健康寿命の延伸
―ウェルモさんとの取り組みが本格的に動き出すのは、AIを活用するシステムの販売が始まる2023年度以降と考えられますが、そこで期待される効果について、お聞かせください。
システムを使えるようになれば、介護保険サービスを使う要支援者一人ひとりに対し、どのようなサービスを使えば改善が期待できるかを提案できるようになります。また、一人ひとりの「体の状態の将来予測」も提示できるようになります。
―「体の状態の将来予測」とは、具体的にどのようなことでしょうか。
今、持っているイメージでは、「もし、サービスを使わなければ、1年後には体がこの程度悪化します。だけど、デイサービスで機能訓練をすれば、1年後にはこの程度まで改善できる」といった予測のことです。この「体の状態の将来予測」があれば、要支援者は、将来の自分の状態について、具体的にイメージすることができ、サービスに対する意欲と、そのサービスが盛り込まれたケアプランへの納得感は、ぐっと高まるはず。
AIを使ったシステムが提案するサービスは、基本的には自立支援・重度化防止につながるものです。こうしたサービスに対する意欲が高い利用者が増えれば増えるほど、市内の高齢者の健康寿命も延びていくでしょう。
福岡市としては、この取り組みで、はじめて要介護2以上に認定される人の年齢の平均を現状より高めたいと思っています。
重度化防止に取り組むケアマネジャーにこそ必要なAIの支援
―ケアマネジャーの業務にはどのような影響が考えられますか。
地域包括支援センターのケアマネジャーについては、重度化防止につながるケアプランを作る際の負担が軽くなるはずです。
―どういうことでしょうか。
要支援認定を受けても、なかなか外に出たがらなかったり、運動を始めたがらなかったりする高齢者はいます。ケアマネジャーがそういう方々にデイサービスに行って、運動しましょうと勧めても、なかなかその気にさせるのは、難しい。
このシステムを使えば、なかなか外に出たがらない高齢者やその家族が、その高齢者の体の状態が今後、どうなっていくのかを具体的にビジュアルでイメージできるので、高齢者自身が「それなら運動をやってみようか」という気にもなったり、家族が「おじいちゃん(おばあちゃん)、デイサービスに行って運動して、いつまでも自分で歩けるようになろうよ」と勧めたりするケースも出てくると思います。
つまり、ケアマネジャーさんにとって、データを駆使した、わかりやすい「将来予測」は、ご利用者様の背中を押す際の力強いよりどころとなってくれるのではないでしょうか。
薄れつつある現場のAIへのアレルギー
―現場のケアマネジャーの中には、AIそのものに苦手意識を持つ人もいるようです。
そうですね。この点についてはウェルモさんが、なぜ苦手意識が生まれているのかなども聞き取り、対応策を示していただけるものと考えています。
ただ、今の現場のケアマネジャーさんは、少し前に言われていたほどAIに苦手意識を持っていないようにも感じます。実際、この取り組みについて地域包括支援センターで説明した際の反応も「どこまでのことができるのだろう」と疑問を持つ人はいても、「AIをプランに活用するなんてシステムは、誰も使わないよ」という反応はありませんでした。
またAIの活用を阻む「ハードル」の一つに利用料金があると思われますが、この点は福岡市内の地域包括支援センターでは、5年間は無料で使えます。仮にAIアレルギーが残っている人がいるとしても、この5年間、実際に使うことで、アレルギーは消えていくのではないでしょうか。
AIはケアマネの「不得手」をフォローする存在
―最後に、ケアマネジャーがケアマネジメントに取り組む上でAIを活用する意義について、お考えをお聞かせください。
ケアマネジャーさんの中には、看護師から資格を取った方もいれば、介護福祉士からキャリアップした方もいます。また、制度発足以来、現場で働いている方もいれば、1年目の方もいます。これまでの活動の背景も経験年数もバラバラであるのが介護支援専門員の現状ですから、できあがるケアプランの内容も、おのずと違ってきます。
言い換えるなら、経験してきた職などによって、得手不得手があって当然ということです。それだけに、不得手な分野での対応を迫られた際、苦労される方も少なくないのではないでしょうか。
AIによるケアプラン作成の支援は、そうした不得手をフォローする意味で、とても有用なものだと思います。
また、中にはご家族やご本人からの要望がちょっと多く、適切なプランを組みにくいというケースもあるでしょう。そうした方に対しても、AIが示す将来予測を使えば、比較的スムーズに話を進められるのではないでしょうか。例えば「AIによれば、ご希望のようにたくさんの生活援助を使ってしまうと、数年後にはご自身でできることが減ってしまう可能性が示されています。ここは少しがんばってみませんか」といったように。
介護保険制度は、あくまで高齢者の自立支援を助けるもの。お手伝いさんをつけて安楽に過ごしてもらうためのものではありません。ケアマネジャーさんがこの介護保険の理念を守る上で、AIは強い味方になってくれると思います。
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