ケアマネを支える先進自治体 VOL.3
【練馬区】事業所の垣根を超えたケアマネ同士のOJTを実現(前編)
介護業界の中でも居宅介護支援は、規模が小さな事業所が多いことで知られます。それだけに、多くのケアマネジャーが、仕事をしながらスキルアップすることの難しさに悩んでいます。そんな現場の悩みを解消するため、独自のOJTの仕組みを導入しているのが、東京都練馬区です。同区では、地域のケアマネジャーと連携し、事業所の垣根を超えたOJTを実施しています。
左:練馬区 高齢施策担当部高齢者支援課 課長・屋澤明夫さん
右:地域包括支援係 加藤智美子さん(同行型研修導入当時の担当主査)
「手練れ」と初任者がペアになる同行型研修
練馬区では、区内のケアマネジャーを対象に「練馬区ケアマネジメント体制強化事業」を実施しています。この事業は「スーパービジョン研修」「地域カンファレンス研修」「ファシリテーター研修」「質の向上ガイドライン研修」などで構成されていますが、その研修の一つとして「地域同行型研修」があります。
「地域同行型研修」は、日本ケアマネジメント学会の研修を練馬区版に変更したもの。主任ケアマネジャーが、資格をとって3年以内の初任のケアマネジャーとペアになって、利用者宅を訪問する研修です。つまり、「手練れ」のケアマネが経験の浅いケアマネと組み、OJTを実施するという内容で、東京都では初、全国的にも珍しい取り組みです。
最大の特徴は、所属する法人や事業所の垣根を越えてOJTを実施できることですね。1人で事業所を運営しているケアマネであっても、OJTを受けたり、アドバイザー役を担ったりすることができます。
ケアマネの支援力向上を地域全体で支える
この取り組みを開始した背景にあるのが、練馬区でも進む高齢化です。区の総人口は74万人ですが、そのうち、高齢者は約16万人。中には、独居の高齢者や高齢者だけの世帯で暮らす人も多く含まれています。しかも、その数は年を追うごとに増えていきます。
介護保険の要であるケアマネジャーの支援力の向上は、喫緊の課題でした。
そして、ケアマネジャーの支援力を向上させる上で課題となったのが居宅介護支援事業所の規模の小ささです。例えば、区内には210カ所(2020年9月時点)の居宅介護支援事業所がありますが、「1人ケアマネ事業所」は、その4分の1から5分の1を占めます。
つまり、練馬区のケアマネジャーは同業の方の仕事ぶりを学んだり、気づきを得たりする機会が少ない環境に置かれているのです。
この状況下でケアマネジャーの相談援助の技術力を向上させるには、事業者の努力に頼るだけでなく、地域全体で技術力アップを支援する仕組みが必要でした。そのために立ち上げたのが「地域同行型研修」だったのです。
初任も主任も、ともにスキルアップを目指す
「地域同行型研修」のカギを握るのが、アドバイザーを務める主任ケアマネジャーです。そのため、主任ケアマネジャーには、「地域同行型研修」を実施する前に、全体研修6時間と専門研修①4時間の「スーパービジョン研修」を受講してもらいます。研修終了した翌年、専門研修②4時間を受講し、アドバイザーを実践した振り返りを行います。
「地域同行型研修」の具体的な内容としては、ペアを組んでいる主任ケアマネジャーと初任のケアマネジャーが、それぞれの担当者の「サービス担当者会議」「モニタリング」に一緒に赴きます。そのほか、事前研修として6時間、初日研修として6時間。そして、最終日にも6時間の研修も行います。
最終日には初任の方が研修で得た気づきと、主任の方が得た気づきの両方を発表してもらう場を設けています。
つまり「地域同行型研修」は、初任の方だけでなく、主任ケアマネジャーのスキルアップも目指した取り組みなのです。
この研修が本格的に始まった2017年度には26ペアが参加しました。その後、18年度には23ペア、19年度は28ペア、20年度は17ペアが参加してくれています。
ちなみに、研修に参加することで、報酬が出るわけではありません。インセンティブといえば、主任ケアマネジャーの方がアドバイザーを担当してくれた場合、更新研修で区の推薦が得られることくらいでしょうか。
それでも、これだけの数のケアマネジャーが参加してくれたのは、地域全体でケアマネジャーを育てるという、この研修の趣旨と特性に魅力を感じてくれたからでしょう。
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