白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.24
どうする?締め切り迫るBCPの作成(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。第24回は災害発生時や感染症の流行時に備えるための、業務継続計画(BCP)の作成のポイントです。
基本方針は「難しく考えず、いいとこどり」
2024年3月31日までに作成が求められているBCP。中には、その名前を聞くだけで、ちょっと憂鬱になってしまう、という人もいるかもしれませんね。
BCPについては「すべて自分たちの手で作り上げよう!」と考える必要はありません。基本的な内容は厚生労働省が公表していますし、ネットで検索すれば、さまざまな自治体が、参考資料を公表しています。自分たちだけで作成することを難しく感じているのであれば、こうした「ありもの」から、いいところどりをすることをお勧めすます。
もっとも1人ケアマネジャーなどの小規模の居宅介護事業所にとっては、いいところどりするのも、しんどく感じられるかもしれません。このような場合は、近隣の小規模事業所に声をかけて、一緒に作成すればいいと思います。
中にはBCPに関する運営指導を気にしている方がいるかもしれませんが、BCPの運営指導の目的は「計画があるかどうか」の一点です。内容を詳細にチェックし、不備を指摘することを主眼とはしていませんので、細かな内容にまでこだわる必要はありません。とにかく、利用者や働くケアマネの安全が確保される計画があれば、それでいいのです。
そんなBCPですが、感染症と災害の二つを作成することが求められています。さらに、それぞれ平時と緊急時を想定した対応策を作らなければなりません。
流行時に備え、平時の基本対応の徹底を目指す―感染症編
まずは、感染症のBCPのポイントについて考えます。感染症というと、新型コロナウイルス対策をイメージしがちですが、それだけでなく、ノロウイルスやインフルエンザなどへの対応も用意しなければなりません。
平時の居宅介護支援で感染症への対応としては、「事業所の車を使ったら、車内を消毒する」や「消毒で使ったウェットテッシュは、密封して捨てる」「定期的に事業所を換気する」といった具体策を全員に周知し、徹底することがポイントになります。
一方、誰かが感染した場合などの緊急時を想定した対応としては、「感染したケアマネが担当していた利用者を事業所内の誰が肩代わりするのか」といったことを決めておかなければなりません。
緊急時に特に問題となるのは、感染したケアマネの行動履歴を明らかにしなければならない点でしょう。行動履歴というのは「そのケアマネがどこに訪問し、どのような感染対策を講じていたのか」といったことですが、日々の細かな行動を後から思い出していくのは、かなり難しいですね。
いざという時、スムーズに対応するためには、平時の基本対応を徹底しておくことが大切です。
例えば「利用者宅を訪問した際には、利用者もケアマネもマスクをし、前後の手指消毒も実施する。窓もできる限り開けてもらう」「消毒で使ったウェットテッシュは、密封して捨てる」「定期的に事業所を換気する」などの基本対応を全員が徹底していれば、緊急時の行動履歴の把握も容易です。さらに、平時から訪問スケジュールや利用者の状況を事業所内で共有できていれば、緊急時でも、それほど慌てることはないでしょう。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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