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ケアマネを支える先進自治体 VOL.10
【石巻市】震災からの再構築、ケアマネと医師を軸とした医療介護連携(後編)

宮城県石巻市。10年前、東日本大震災がもたらした震度6強の揺れと8.6メートルを超える津波で3,000人を超える死者が出た街です。この街では、震災後、市・ケアマネジャー・医師を軸とした在宅医療・介護連携を推進してきました。その取り組みの原動力となった石巻市包括ケアセンターの元所長・長純一氏らにお話しをお伺いしました。

前編はこちら「避難所などで実感した連携構築の必要性」

【石巻市】震災からの再構築、ケアマネと医師を軸とした医療介護連携(前編) 写真右から:
居宅介護支援事業所 主任ケアマネジャー(震災時は地域包括支援センター勤務)・江藤美智子さん
元石巻市包括ケアセンター 所長・開成仮診療所 元所長・長純一さん
石巻市包括ケアセンター 保健師・大須美律子さん

ウェブとリアルでケアマネが相談しやすい環境を整備

大須:在宅での医療・介護連携を実のあるものにするには、まずは、ケアマネの医師への苦手意識を克服してもらわなければなりませんでした。また、医療機関に、介護との連携への関心を高めてもらう必要もありました。

そこで石巻市では、ケアマネが医療関係者に相談しやすい仕組み作りに乗り出しました。2017年7月のことでした。

具体的には「石巻市在宅医療・介護連携ウェブサイト」に、市内の各医療機関が希望する連絡方法や情報提供の方法について、わかりやすく掲載しました。ファクスがいいのか、メールがいいのか、電話でいいのか、といった極めて具体的な方法を提示してもらったのです。さらに、医師がケアマネと連携する上で、支障のない時間帯や曜日を指定してもらう「ケアマネタイム」も設け、それぞれの医療機関で公表してもらいました。時間だけでなく、ケアマネさんが各病院のどの部署に連絡すればよいかも提示してもらっています。

【石巻市】震災からの再構築、ケアマネと医師を軸とした医療介護連携(後編)

また、2018年10月には地域包括支援センター内に、在宅医療・介護連携を推進するための関係者向けの相談窓口を設置しました。ここでは、関係機関への在宅医療・介護の情報提供や退院時の地域の医療・介護関係者の連携調整などを担っています。特にケアマネについては、医師や医療関係者に提供すべき情報なのか、あるいはアドバイスを求めるべき内容なのか、判断に迷った時にも相談してもらっています。

併せて医療と介護関係者の顔の見える関係づくりの取組みも行いました。具体的には2017年度以降、年に数回、医療と介護の多職種を対象とした交流研修会を実施しています。研修では、講義を聞くだけでなく、テーマを決めて、多職種が一緒になって行うグループワークも行っています。

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地域住民向けの「出前講座」も

大須:ケアマネや医師などの関係者だけでなく、地域住民の意識づけも重要です。多くの人は、支援が必要なころになってから自分自身と真剣に向き合い始めるのですが、残念ながら、それでは少し遅いように思います。日頃から在宅医療・介護について見聞きし関心を持つことや、介護保険のサービスを使わないよう予防していくことも大切です。

住民の意識づけのための取り組みとして、市の担当者らによる「出前講座」を実施しています。主に町内会や老人クラブなどを対象としたもので、これまでに「地域包括ケアシステムに関する講座」や「終活に関する啓発講座」などを実施してきました。

長:こうした取り組みが、石巻が復興する上でも、大きな力になったのは間違いないところでしょう。でも、これですべてが解決したわけではありません。

例えば、総合診療専門医や家庭医療専門医といった、より地域を意識した仕組みを導入し、普及させることができるかという課題があります。在宅医療に取り組む医師が高齢化している現実と思うと、石巻の今後にとって、これは案外、重い課題となるかもしれません。

また、在宅だけでなく、特養やサービス付き高齢者向け住宅など、施設での看取りにも対応できる医療・介護の連携の充実も課題といえるでしょう。

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一人ひとりが知恵を絞り、考え続けることこそが大切

江藤:そうですね。さらに言えば「支援の仕組みがあるから、これでもう大丈夫」というわけではないと思うのです。支援の仕組みを生かせるよう、一人ひとりのケアマネが知恵を絞り、考え続けなければならないでしょう。

医師が高齢化しているように、ケアマネも高齢化しています。当然のことですが、引退するケアマネもいれば、新たに居宅介護支援の現場に立つ“新人”もいるわけですが、ベテランのケアマネがいなくなったとたん、医師や他法人との連携がギクシャクしはじめるようではいけないと思うのです。

そうしたことがないよう、私たちは、常にケアマネの仲間と話し合いつつ、時に行政に提案したり、相談したりする意識を持ち続けることこそが大切なのです。そのために、市が整えてくれた支援の仕組みを、もっと積極的に活用していきたいと思っています。

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ケアマネと包括、災害時には明確な役割分担を

長:災害発生後での対応の課題としては、ケアマネと地域包括支援センターの役割分担が挙げられます。具体的には、要介護者への支援などはケアマネにまかせ、地域包括は、より軽度の方への対応に力を注ぐといった体制構築を整えておくことが必要でしょう。

さらに、ケアマネや医師といった専門職だけが把握している課題を、行政全体に伝え、復興計画を立てられる仕組みの確立も不可欠でしょう。もっとも、この課題は災害後の復興に限らず、今の日本の最重要の課題と言えるかもしれませんが。

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