ケアマネを支える先進自治体 VOL.4
【練馬区】事業所の垣根を超えたケアマネ同士のOJTを実現(後編)
介護業界の中でも、居宅介護支援は、規模が小さな事業所が多いことで知られます。それだけに、多くのケアマネジャーが、仕事をしながらスキルアップすることの難しさに悩んでいます。そんな現場の悩みを解消するため、独自のOJTの仕組みを導入しているのが、東京都練馬区です。同区では、地域のケアマネジャーと連携し、事業所の垣根を超えてOJTを実施しています。
左:練馬区 高齢施策担当部高齢者支援課 課長・屋澤明夫さん
右:地域包括支援係 加藤智美子さん(同行型研修導入当時の担当主査)
研修を支える「練馬区主任介護支援専門員協議会」
「地域同行型研修」の導入の準備を始めたのは、2015年度のことです。この年、厚生労働省は、同行型の研修の実施をうながす事務連絡を各自治体に出しました。そして、区内のケアマネジャーさんや居宅介護支援の管理者さんにアンケートをしたところ、その実施に、大きな期待を寄せている方が、かなりの数に上ったのです。
ただし、区の力だけで、こうした研修を続けていくのは難しい。どうしても、地域の主任ケアマネジャーや居宅介護支援事業所の協力が不可欠です。そこで我々は、事業を始めるにあたり、区内の主任ケアマネジャーのネットワークを組織することから始めました。
組織したネットワークの名前は「練馬区主任介護支援専門員協議会」と言います。
この協議会が発足したのは、17年です。今では区内の主任ケアマネジャーの9割程度が参加してくれています。「地域同行型研修」のほか、区と協力してアンケートを実施したり、日本ケアマネジメント学会や東京都介護支援専門員研究協議会など、職能団体に練馬区の主任介護支援専門員の取り組みを発信したりするなどの活動をしています。
ちなみに「地域同行型研修」は、日本ケアマネジメント学会の研修を練馬区版に変更したものです。開始して5年が経過しましたが、初任の方にも主任の方にも、評判は上々です。
「地域同行型研修」で見た忘れられない瞬間
そういえば、ある年の同行後の振り返り研修で、「ケアマネジャーとして、なかなか成長できない。なんだか、おしりに卵の殻を付けたまま、いつとれるのかと悩む、ひよこのよう…」と、悩みを吐露した初任のケアマネジャーの方がいました。その時、アドバイザー役だった主任の方は「卵の殻なら私のおしりにもついたまま。その殻をつけたまま、一緒にそだっていこう」と励ましてくれました。
初任の方も主任の方も、研修を通してともに成長していく。そして、いろいろなこと話し合える関係を築いていく―。この事業の狙いを体現できたような瞬間として、強く印象に残っています。
コロナ禍に合わせ、研修のスタイルも変更
そんな「地域同行型研修」ですが、新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、実施を控えています。
ただし、この研修は同行することが目的ではありません。支援力の向上が目的です。同行ができないなら、別の方法でその向上を目指せばよいわけです。
具体的には、通常の研修に加えて、主任ケアマネジャー同士がそれぞれのケアプランを見て、アドバイスしあうという研修を実施中です。主任とはいっても、やっぱり不安を抱えながら仕事をしているわけですから、こういう研修は、とても評判がいいですよ。
今、家族の形が多様化し、それに伴う問題も様々な形で顕在化しています。いわゆる「8050問題」など、制度にまたがっているような問題も増えています。
今後、ケアマネジャーには、そうした問題にも積極的に対応してほしいですね。私たちも、そんなケアマネジャーを支えるため、連携担当のセクションを設けて対応していますが、「地域同行型研修」も含めた各種の研修も、さらに内容を充実させ、バージョンアップさせていかなければならないでしょう。
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