白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.27
頭が痛い?!インフォーマルサービスの活用術(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。第27回はインフォーマルサービスの活用のポイントです。
どんなサービスがあるのか…悩んだら包括に相談を!
居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんの中には「自分がいる自治体や地域にどんなサービスがあるのか分からない」と悩んでいる方も少なくないようです。
この問題は、ごく簡単に解決できます。地域包括支援センター(包括)に相談し、適切なサービスを紹介してもらえばよいのです。例えば買い物が困難になったご利用者を担当しているのであれば、「宅配してくれるスーパーはどこか」「移動販売は自分の地域で利用できるのか」というふうに、具体的に尋ねてみてください。定期的な見守りが不可欠な独居の方を担当しているのであれば、「配達の際、利用者の様子を確認し、連絡してくれる配食業者などはないか」と聞いてみてはどうでしょうか。
今あるサービスを改善することで、インフォーマルを育てる
また、主任ケアマネジャーさんの中には、「地域のニーズにあった新たなサービスを創出することも役割と言われているけど、どうしたらいいかわからない」と途方に暮れている人がいるかもしれませんね。
この点も途方に暮れる必要はありません。先に述べた包括への相談や問い合わせを少し工夫すればよいのです。
配食サービスで考えてみましょう。包括から紹介された事業者が玄関に食事を置いていくだけのサービスしかしてくれない場合、十分な安否確認は期待できません。玄関までの移動が困難な利用者であれば、サービスを使うこともできないでしょう。
正直、困った事態ですね。でも、ここで「まあ、しょうがないよね」とあきらめてしまっては、もったいない。遠慮せず、「家の中まで食事を持って行って、配膳までしてくれる配食事業者さんがないですか。そんな事業者さんがいたら、在宅で生活できる人がぐっと増えるんですけど」と包括に聞いてみればいいのです。
現場からの要望であれば、包括も事業者に伝えてくれるでしょう。そして、事業者も包括からの連絡であれば、サービスの改善を前向きに検討するはずです。もちろん、一言伝えるだけですぐに事態が動くとは限りません。それでも、粘り強く状況を伝え続ければ、何かが変わってくるはずです。
これこそが、主任ケアマネジャーに求められる「地域のニーズにあった新たなサービスを創出」につながる行動なのです。必ずしも、新たなサービスをゼロから立ち上げる必要はありません。既存のサービスを改善することだって、サービスを創出し、育てる行動といえるのです。
介護保険だけでできることは限られている!
最後に、改めて強調したいことがあります。「利用者の生活を支える上で、介護保険ができることは、かなり限られている」という事実です。
サービスを提供している時間は、訪問系サービスなら1日のうちせいぜい、1時間程度。通所介護などを使っても、一日の半分にも達しません。それ以外の多くの時間を支えているのは、家族であり、親戚であり、地域の人なのです。そんな利用者を支える人たちを支援できれば、利用者の生活ももっと豊かになるはず。そうした意識も持って、インフォーマルサービスと向き合ってください。そして、包括や仲間のケアマネに相談してみてください。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
関連記事
会員限定コンテンツのご案内
CMO会員限定コンテンツの「CMOたより」は、ケアマネジャーのみなさまの業務に役立つ情報を配信しています。メッセージは定期的に届きますので、ぜひログインして最新メッセージをごらんください。
※会員限定コンテンツのため、会員登録が必要です。
- ダスキンからはこんな「たより」をお届けしています
- 福祉用具に関するお役立ち情報
- 福祉用具専門相談員が語る、ご利用者様とのエピソード
- ケアマネからの福祉用具に関する疑問・質問に回答