ケアマネを支える先進自治体 VOL.7
【杉並区】いざという時、ケアマネを支える連携体制を構築(前編)
収束が見えないコロナ禍。特に規模の小さな居宅介護支援事業所のケアマネジャーの中には、「もし感染したり、濃厚接触者になったりしたら、どうしようと…」と不安を抱きながら業務に取り組む人も少なくないでしょう。そんな不安を解消すべく、行政とケアマネの職能団体、医師会が三位一体となった連携体制「杉並モデル」を発足させたのが、東京都杉並区です。
写真右から:
杉並区ケアマネ協議会 会長・相田里香さん
杉並区介護保険課 係長・藤原淳さん
『支える側を支える仕組み』こそが必要
藤原:今年2月24日から、「緊急時における休業・療養期間中の特別連携」(特別連携)を導入しました。ケアマネジャーが何らかの理由で急に働けなくなった時、別の事業所のケアマネが利用者へのサービス提供や給付管理などをフォローする仕組みです。
ケアマネは、この仕組みを利用する前に、利用者からの同意を得なければなりません。具体的には、自分自身が急に働けなくなったとき、“ピンチヒッター”となってくれるケアマネがいることと、そのケアマネに利用者の個人情報を伝え、ケアマネジメントをお願する可能性があることについて、同意を得なければならないのです。
特別連携中の利用者へのサービス提供は、応援を依頼したケアマネのケアプランに基づいて行われます。業務を肩代わりすることになったケアマネは、依頼元の事業所か、利用者宅でケアプランを確認します。
あくまで緊急時の対応ですので、他のケアマネが肩代わりする期間は最大2カ月。長引くようなことがあれば、肩代わりをしたケアマネが利用者を完全に引き継ぐことになります。
ある日、ケアマネが突然、働けなくなったら…
藤原:この取り組みのきっかけとなったのは、相田会長をはじめとした、現場のケアマネの「支える側を支える仕組みこそが必要」という問題意識でした。
相田:近年、高齢者をはじめとした社会的な弱者を災害などから守ろうとする機運が高まっており、支援の仕組みも整い始めています。でも、その現場にいる私たちは、それだけでは足りないと思っていました。
高齢者が守られても、高齢者を支えている人が動けなくなったら、どうなるのか―。特に、ケアマネが倒れてしまうと、担当していた利用者へのケアマネジメントはもちろん、そのケアマネが給付管理を行っていた介護事業者への報酬も滞ります。ギリギリのやりくりをしている介護事業者にとって、その滞りは、死活問題ですよ。場合によっては、廃止に追い込まれる事業者だって出てくるかも。そうなれば、地域のサービス提供に問題が生じます。
つまり、ケアマネが急に倒れてしまうことは、担当する利用者の生活はむろんのこと、地域の福祉・社会資源にまで大きなダメージをもたらしかねない事態といえるのです。
だからこそ、「支える側を支える仕組み」が必要と思ったのです。
特に小規模居宅事業所でこそ、問題は深刻
藤原:杉並区では140カ所あまりの居宅介護支援事業所がありますが、1人か2人のケアマネが運営している事業所が52%を占めます。相田会長が指摘する問題は、特にこうした小規模事業所では深刻な問題でした。実際、1人ケアマネが急に仕事を辞めざるを得なくなった後、デイサービスや訪問介護の給付管理が滞ったこともありました。
相田:私の周りにも、心を壊したり、体を壊したりして、事業の継続が難しくなっている方もいましたし、今もいます。そもそも、ケアマネの多くは、ダブルケアに直面する年齢でもあります。その結果、急な退職をせざるを得ないという方を、数多く見てまいりました。私自身、悩み苦しんだこともあります。
藤原:そうした現場の実情もあり、ケアマネ協議会や医師会と協力しながら、1年ほどかけて「緊急時における休業・療養期間中の特別連携」の仕組みを作りました。
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