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小濱道博の介護経営よもやま話 小濱道博の介護経営よもやま話

VOL.15居宅介護支援の「赤字拡大」を読み解く

2020/11/20 配信

厚生労働省は先月30日、「令和2年度介護事業経営実態調査」の結果を公表した。全サービス平均の収支差率は2.4%で、前回の平成29年度調査から0.9ポイントのマイナスとなった。コロナ禍で心配されていた有効回答件数は1万4376件と、前回よりも686件減ったものの、前年度の「介護事業経営概況調査」の1.96倍となり、調査の信頼性は高まったと言える。

問題は、2018年度の介護報酬改定率が0.54%と、臨時改定を除くと6年ぶりのプラス改定であったにもかかわらず、今回の収支差率がマイナスだったことだ。給与費の割合が総じてプラスとなり、人件費の高騰が、収支差率悪化を招いた大きな要因であることが分かる。

財務省は今月2日の財政制度等審議会財政制度分科会で、この調査結果に関する見解を発表。介護施設・事業所の経営状況は一般の中小企業と同程度の水準であり、特別損失である「事業所から本部への繰入」を除いた収支差率で見ると、介護施設・事業所の収益率は上昇するとして、「少なくとも介護報酬のプラス改定(国民負担増)をすべき事情は見出せない」とけん制した。

黒字化のカギ握る特定事業所加算

ここからは、居宅介護支援事業所の結果を見ていこう。今回の収支差率はマイナス1.6%と、前回から0.2ポイント減少した。

「1施設・事業所当たり収支額、収支等の科目、実利用者数階級別」で見ると、実利用者数200人以上の収支差率が1.8%と最も高い。150人以下はすべてマイナスで、小規模事業所ほどマイナスの幅が大きくなるのは従来通りである。

調査結果を見て明らかなのは、100人以上から収支が“トントンペース”となり、人数が増えるに従って収支差率も上昇するということだ。実利用者数100人以上とは、ケアマネジャー3人以上の体制であることを意味し、それは特定事業所加算を算定する規模に当たる。すなわち、特定事業所加算を算定しない限り、居宅介護支援事業所は赤字から脱却できないことを意味する。そして厚労省は、それを作為的に行っていると考えるべきだ。

昨年4月サービス提供分のデータを見ると、特定事業所加算I〜IVを算定している事業所は、全体の29.57%を占める。また、「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」によると、特定事業所加算Iを算定しない理由としては、「利用者のうち中重度者(要介護3~5) の占める割合が4割以上ではない」が43.1%、「主任介護支援専門員を1人以上配置できない」が42.8%などとなっている。

確かに、特定事業所加算Iは算定のハードルは高いとしても、特定事業所加算IIまでの算定を目指すべきだ。

運営基準改正の同意不備で増える返還

ここで、話は少し脇道にそれる。介護報酬改定の論点として、これまで何度も、ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保が挙げられてきた。

18年度の改定では、その公正中立性を確保するため、ケアマネジャーが利用者と契約する際、▽ケアプランに位置付ける事業所について、複数の紹介を求めることが可能であること▽その事業所をケアプランに位置付けた理由を尋ねることができること―を利用者やその家族に十分説明し、同意を得ることが運営基準上で義務付けられた。この2点について書面で説明していないと、契約月から書面で同意を得た月の前月までの間、運営基準減算が適用される。

実は、ここ最近の実地指導において、この同意の不備で介護報酬の返還指導となった事例を各地で耳にする。運営基準減算になると、初月は介護報酬が半分に減らされ、これが2カ月以上継続すると算定そのものができなくなる。18年4月からつい最近まで同意を得ていなかったとのことで、700万円以上の返還に至った事例もある。

運営基準では、書面だけでなく、口頭での説明も懇切丁寧に行った上で、必ず利用者から同意の署名などを得なければならないとされているが、それは18年4月以前の利用者についても同じことだ。いま一度、同意の署名の有無などを点検してみてほしい。

「改定率は間違いなくプラスになる」

話を元に戻そう。来年春の介護報酬改定について、介護業界からは、コロナ禍の影響も大きいことから、大幅なプラス改定を期待する声が強くなっている。

政府は、ワクチンが許認可される見通しとなっている来年夏頃に、新型コロナ感染が収束するシナリオを描いているとされるが、介護報酬改定の影響はそれ以降も続く。このため、新型コロナの対策は特例措置で対応し、改定率そのものは現実路線で行くと考えるのが自然だ。

財務省も、新型コロナが国民生活にもたらしている影響を考えると、さらなる国民負担増を生じさせる環境にはないとして、プラス改定をけん制している。

ただ、財務省の厳しい指摘は例年通りであり、それ自体は珍しいことではない。今回注目すべき点は、従来からの介護給付費削減一辺倒の姿勢が後退していることにある。これは介護施設・事業所の収支差率が、彼らが主張する中小企業と同レベルに落ち着いたことも大きいだろう。裏を返すと、今回の改定率は間違いなくプラスになる。財務省は「上げすぎるな」と言っているのだ。

注目の改定率は、厚労大臣と財務大臣の折衝の末、来月中旬にも決まる見通しだ。介護報酬改定をめぐる審議もいよいよ最終コーナーを回り、ゴール直前である。

小濱道博(こはま・みちひろ)

小濱道博(こはま・みちひろ)
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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