

小濱道博の介護経営よもやま話
法定研修カリキュラム見直しの意味とは?
- 2023/04/28 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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2024年度(令和6年度)から、ケアマネジャーの新たな法定研修のカリキュラムが始まり、より根拠のある支援の組み立てが求められるようになる。「根拠」の基盤として位置づけられているのが、適切なケアマネジメント手法とLIFE(科学的介護情報システム)だ。
LIFEについては、同年度の介護報酬改定において、居宅介護支援に加算が創設されることがほぼ確実な情勢となっている。
これが実現すれば、居宅のケアマネジャーには今後、LIFEへのケアプランデータの提出に加え、サービス担当者会議において、担当事業所ごとのフィードバック票について共有・検討し、必要に応じてケアプランに改善点を反映させる「PDCAサイクル」を回すことが期待される。
現在、LIFEの活用は施設・事業所単位で行われているが、サービス担当者会議での活用が進めば、より広い視野での検討が可能となる上、会議に参加するメンバーのスキルアップにもつながるだろう。
LIFEの将来性は非常に高く、今後、「根拠のある支援」のエビデンスの一つとして位置づけられることは間違いない。LIFEを活用していない担当事業所は取り残される可能性もあり、近い将来、業界の再編成につながることも予想される。
「生活の継続を支える」が随所に
今回のカリキュラムの見直しでは、「生活の継続を支える」という言葉が随所に見られ、心疾患や誤嚥性肺炎など、疾患別のケアマネジメントの科目も新設された。
主任介護支援専門員研修のカリキュラムでは、現行の「ターミナルケア」の科目名が「終末期ケア(EOL(エンドオブライフ)ケア)を含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメント及び疾患別ケアマネジメントの理解」に変わり、適切なケアマネジメント手法に関する知識・技術を習得するための内容が盛り込まれた。これは、主任介護支援専門員更新研修においても同様だ。
在宅医療や在宅介護サービスは、地域包括ケアシステムの構築をさらに進めるための中心的な存在として位置づけられている。医療と介護のさらなる連携が求められる中、以前から指摘されているように、ケアマネジャーの医療的な知識の不足が課題の一つとなっている。
今回のカリキュラムの見直しは、今後の在宅での看取りやケアの実現に向け、ケアマネジャーに生活の継続を支援する役割を強く求めていることの表れといえる。
職業倫理の視点も強化
介護保険制度の本来の目的は、介護者が自分の時間を持ち、リフレッシュするためのレスパイトとして機能することであり、この点が、治療が主目的の医療保険制度とは大きく異なる。昨今は、仕事と介護の両立やヤングケアラーが社会問題となっており、新たなカリキュラムでも、こうした動向が反映されている。
職業倫理についての視点が強化されたことも、今回の見直しのポイントの一つだ。特に科学的介護においては、エビデンスが重視される傾向にあるが、介護保険制度はアウトカム(成果)だけを求めているわけではない。
介護従事者は、利用者の自立と尊厳の保持、そして家族が抱える問題にも対応しなければならない。AI(人工知能)やICT(情報通信技術)の活用だけでは不十分であり、人間であるケアマネジャーの判断が欠かせないのだ。ケアマネジャーの原点を見失ってはいけないということであろう。
新たなスキル・知識の修得も
法定研修修了後の継続研修(法定外研修、OJTなど)においては、新たなスキルや知識の修得が求められる。
このため、主に実務研修では、継続研修の基盤となる幅広い知識を習得できるよう、必要な理念や考え方について理解し、それを自分の言葉で具体的に説明できることが、修得目標の一つとされた。これを実現するには、表面的な理解では不十分であり、必要以上の学びと解釈が必要であろう。
ケアマネジャーのなり手が減少する中、平均年齢の高い居宅介護支援事業所においても、LIFEやICTの活用、医療知識といった新たなスキルや知識の修得が求められており、新たなカリキュラムにも、その視点が反映されている。
現場レベルでどこまで対応できるのか、不安の声もあるようだが、ケアマネジャーを目指す人を増やしていくためにも、ケアマネジャー自身のスキルアップはもちろんのこと、職種としての魅力度を上げていく必要がある。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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