

小濱道博の介護経営よもやま話
予防プラン“直接受注”で包括の負担は減る?
- 2023/01/31 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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2024年度(令和6年度)の介護保険法改正において、居宅介護支援事業所が介護予防支援の指定対象に加わる見通しとなった。これは、居宅介護支援事業所が直接予防ケアプランを“受注”できるようになることを意味する。
実は、2021年度(令和3年度)の法改正においても、この点について議論されたが、「地域包括支援センターが一括して管理すべき」との意見が多数を占め、同年度の介護報酬改定時に委託連携加算(初回のみ300単位)が創設されるにとどまった経緯がある。
今回、制度の見直し案をまとめた社会保障審議会介護保険部会は、2021年度からスタートした重層的支援体制整備事業による「8050問題」の相談窓口など、地域包括支援センターが担う総合相談支援機能のさらなる推進を求め、地域包括支援センターの業務負担軽減策の一つして、介護予防支援の指定対象の拡大を提言した。
地域包括支援センターの職員にとって、予防ケアプランの作成は大きな負担となっており、利用者との契約後、地域の居宅介護支援事業所に外部委託するケースも少なくないためだ。
見直し案では、総合事業における予防ケアマネジメントAについても、利用者の状態に大きな変化がない場合に限り、モニタリング期間の延長などを可能とする方向性も示されている。
居宅介護支援の「LIFE活用」に注目を
地域包括支援センター以外のケアマネジメントに関する見直し案を見ると、情報通信技術(ICT)の活用をさらに加速させる方向性が目に留まる。
ケアマネジャーの法定研修については、オンライン化の促進など、研修を受講しやすい環境の整備を要望。また、ケアマネジャー資格の管理・手続きの簡素化を図るため、マイナンバーカードを活用する方針も示されている。
科学的介護情報システム(LIFE)も注目すべきワードの一つだ。居宅介護支援においても2024年度から、LIFEの活用が始まる見通しで、見直し案では「ケアマネジメントについてもケアプラン情報の利活用を通じて質の向上を図っていくことが重要である」としている。
そのLIFEであるが、いよいよ今年から、国の「フィードバック票」の提供が本格的に始まる。
「フィードバック票」とは、事業所・施設が提出した利用者などのデータに対する国の分析・評価結果に当たる。他の事業所・施設との比較・検討などを行うことで、国は継続的にケアの質を改善させる「PDCAサイクル」につなげることを目指しているのだが、これまで業界内では「全く使い物にならない」というのが定説となっていた。
厚生労働省は昨年12月13日、新たな「フィードバック票」のサンプルデータを公開。まもなく、グラフ化された加算別や利用者別のデータが提供される見通しだ。
LIFEは2024年に 新システムへ移行し、バージョンアップする予定で、この時期に訪問系サービスや居宅介護支援も対象に加わる見通しだ。見直し案では、フィードバックの内容の改善に加え、事業所・施設の入力負担を減らすため、項目の簡素化について検討する方向性も示されている。
ケアプラン作成時の人工知能(AI)の活用もポイントの一つだ。見直し案では、「ケアプランの作成におけるAIの活用についても、実用化に向けて引き続き研究を進めることが必要である」としており、今後、ここにもLIFEが絡んでくるとみられる。
ICT対応 懸念の声を吹き飛ばせ!
介護サービス事業所における管理者の常駐要件の見直し検討も、ICTを活用した働き方改革の一環だ。管理者が一日中事業所に居続ける必要はなく、場合によっては在宅ワークでの対応も可能とみられるが、訪問介護などでは、他の職種を兼務している管理者も多い。どこまで実現できるかどうかは未知数で、新設されたデジタル庁への忖度にも見えなくはない。
さらに見直し案では、介護事業者の文書負担軽減策として、行政への申請・届け出の電子化を推進するよう求めている。
国は現在、地域ごとに独自で作成されている様式の一本化を図るため、「標準様式」の普及に取り組んでいる。「標準様式」に切り替えた自治体から、「電子申請・届出システム」の利用へ移行してもらい、2025年度(令和7年度)までに、全ての自治体で利用できるようにすることを目指している。
今年4月以降は、ケアプランデータ連携システムが本格稼働する見通しで、国主導によるICT化が今後さらに加速することは間違いないだろう。今や、コンピューターが「苦手」「無理」などと言える時代ではなくなった。できなければ即、置いてきぼりとなるだろう。
居宅介護支援事業所の平均年齢は、全サービス中で最も高いとされる。高齢化がさらに進む中、ケアプランデータ連携システムを含め、ケアマネジャーがICT化に対応できるかどうかを懸念する声もある。こうした声を吹き飛ばすような奮起を、ぜひ期待したい。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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