私が母にしてあげられることは、
食事を楽しませてあげること。
娘なので、母が好きな物を
知っているのが強みです。
※「クリミール」のパッケージは取材当時のものです
安心できることが介護の支え
介護が始まった当初の食事は、おにぎりを出したり、近所のスーパーで買ったプリンやゼリーなどを食べてもらっていた。しかし、ケアマネジャーから「(公子さんの状態では)誤嚥のリスクがあるので、おにぎりはやめた方がいい」とアドバイスされ、医師からもカロリー計算して食事を出すよう指導を受けた。
「おかゆを出したり、甘いものが好きなのでソーダ水や乳酸菌飲料を飲んでもらったりとか、いろいろ試しましたが、正直、カロリー計算についてはよくわからなかったですね」
そんな時、英子さんの娘さんが介護食のお試し品を持ってきてくれた。乳酸菌入り総合栄養飲料のパックやアミノ酸入りゼリーなどで、少量でもきちんとカロリーが摂取できる商品だった。それが介護食との出合いだったという。
「半年ごとの血液検査で、おおむね良好だけどタンパク質だけちょっと足りないという結果でした。タンパク質というとお肉だと思うんですけど、お肉は細かくしても、どうしてもコロコロした感じが残ってしまい、誤嚥が心配だったんです。だから、クリニコさんの『エンジョイプロテイン』はとても助かりました」
英子さんは、その他にもゼリータイプや飲料タイプなど、数種類の介護食を利用している。発熱などで食欲が落ちた時には、飲料タイプのものが重宝するそうだ。
美味しく食べてもらえるようにと、メニューには英子さんの愛情あふれる工夫がある
※「クリミール」のパッケージは取材当時のものです
「少量だから味が濃くてもいいかなと思って、コーヒー味のものにはコーヒーを足して飲んでもらうこともあります。美味しく食べてもらえるように、私なりにいろんな工夫をしています。最近はストローで吸う力も弱くなってきたので、ケアマネジャーにすすめられた『タベラック』(ストロータイプボトル)を使っています」
言葉が無くても、意思表示がある。だからこそ、美味しい、うれしいという思いを共有したい。そんな思いから、英子さんは口から食べてもらうことにこだわり、試行錯誤を続けている。
「私が母にしてあげられることは、食事を楽しませてあげること。娘なので、母が好きな物を知っていることが強みですね。好きなビールの銘柄も知っているから、お正月はビールにとろみをつけて飲ませてあげるんですよ。顔を真っ赤にして嬉しそうな顔をしてくれます」
介護食を取り入れて一番良かったのは、安心感があることだと英子さんは言う。
「バランスよく栄養が摂れるし、カロリー計算もできちゃうし、こんなに便利だとは思いませんでした。たくさん食べられなくても、これがあれば不安は無いです。安心できるからこそ、心身共に元気で介護ができるんだと思います」
介護生活の当初は、いつまで続くのかと切ない気持ちになることもあった。しかしある日、引退した警察犬や盲導犬をケアする施設のドキュメント番組を見て、考えが変わったのだという。
「人のために一生懸命働いた犬を、『お疲れさま』と看取る場面があったんですが、それに近いのかな? 母もこれまで一生懸命、私たち家族のためにいろいろしてくれたので、『お疲れさま』『ありがとう』という気持ちです。今は、『目指せ100歳!』が目標で、毎日とても前向きに過ごしています。これも、介護食を取り入れて、安心して介護できるようになったおかげですね」
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