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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

それって医療行為?法的な見極め方、教えます・後編

ケアマネなら誰でも悩んだことがあるはずの、医療と介護の「グレーな境界」。今回は薬の取り扱いがテーマです。

ケース:地震でひっくり返った薬入れの再整理

Q:軽度認知症のご利用者Aさん。自分では薬の管理もままならず、近所に住むご家族が、その日に必要な薬を分類・整理し、薬入れに「朝用」「夜用」と分けて入れておくことで、どうにか適切な服薬を維持していました。

ところが先日、震度4の地震が発生。Aさん宅では薬入れが床に落ちてひっくり返り、整理されていた薬もぐちゃぐちゃになってしまいました。私(ケアマネジャー)が、そのことをご家族に電話で報告したところ、「明日まではそっちに行けない!今から口頭で説明するから、薬を整理して戻してくれませんか」と頼まれてしまいました。

この薬入れは、ふたはないが仕切りはあるタイプで、それぞれの仕切りごとに「○月○日朝分」「○月○日夜分」というふうに、小分けにして入れてありました。また、ご利用者は飲むべきものさえわかれば取り出すことはできるので、どの薬も個別の包装を残したまま、分類してありました。

ただ、個装されているとはいえ、バラバラになった薬を飲むべきタイミングごとにケアマネが再整理することが医行為に当たるのかが分かりません。なんだか、薬剤師さんがよくやっている「一包化」と同じような行為である気がして不安なのです。

この依頼を受けるのはアウトですか、セーフですか。

薬剤師法が定める「調剤」とは

A:これはセーフと考えます。前号は医療行為の該当性が問題となったため05年通知が根拠となりましたが、今回は服薬に関する話なので、2019年(平成31年)4月2日通知「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号 以下「本通知」)が手がかりとなります。

薬の取り扱いについては「薬剤師法」という法律がルールとなるのですが、同法第19条は、「医師、歯科医師又は獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときを除き、薬剤師以外の者が、販売又は授与の目的で調剤してはならない」と定めています。

ここでいう「調剤」とは、処方箋に基づいて医薬品を揃え、患者に交付する業務です。そして、調剤の一つの業務として、相談者が気にしている「一包化」(服用時期が同じ薬や1回に何種類かの錠剤を服用する場合などに、それらをまとめて1袋にすること)があります。

ただし、本件は調剤され、個別に包装された薬が、ばらばらになってしまった状態です。ですので「無資格者が一包化に取り組んでよいかどうか」という問題ではなく、「調剤を終え、個装されている複数の薬を、飲むタイミングにあわせて整理してよいかどうか」という問題であるといえます。

調剤された薬剤を薬入れに入れる=調剤ではない!

さて、本通知では、薬剤師が調剤に最終的な責任を有するということを前提に、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の基本的な考え方を整理しています。

その中に、次のような記載があります。

なお、以下の行為を薬局等における適切な管理体制の下に実施することは、調剤に該当しない行為として取り扱って差し支えないこと。

  • 納品された医薬品を調剤室内の棚に納める行為
  • 調剤済みの薬剤を患者のお薬カレンダーや院内の配薬カート等へ入れる行為、電子画像を用いてお薬カレンダーを確認する行為
  • 薬局において調剤に必要な医薬品の在庫がなく、卸売販売業者等から取り寄せた場合等に、先に服薬指導等を薬剤師が行った上で、患者の居宅等に調剤した薬剤を郵送等する行為

これによれば、本件の行為は既に調剤された薬剤を薬入れに入れる(正確には、一度入れたものを再び入れる)行為ですから、「調剤ではない」=無資格者が行ってもよい、ということになります。

再整理にあたり、忘れてはならないポイント―医療関係者からの服用のための指示に忠実に

ただし、忘れてはならないポイントもあります。「ご家族の指示が、正確に服用すべき薬の種類を再現しているかどうか」です。

ご家族は口頭で説明すると言いますが、何を元に説明するのかが重要です。医師の処方箋や薬剤師が作成した目録などを読み上げるのであれば問題ありませんが、自分の記憶や我流で薬を組み合わせるのであれば、「家族(無資格者)が調剤をした」ことと同じ状態となってしまいます。そして、ご家族の指示に従い、ケアマネが薬を再整理すると、「無資格者が無資格者の指示に従い、調剤をした」状態とみなされかねません。

したがって正しい対応としては、「処方箋など、医療専門家の作成した服用のための指示書を読み上げて頂くのであれば、その通り対応できますが、そのような根拠が無いのであれば、法律に触れるおそれがあるため、致しかねます」と応答することになるでしょう。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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