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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

親の介護を全てケアマネに押し付けてくる家族(前編)

ケアマネジャーの業務範囲については本シリーズの第二回(利用者宅への様子見を求められたら)で解説しましたが、そんなことは委細構わず、ケアマネにあらゆることを押し付けてくるケースもあるようです。そのような場合の対処法を解説します。

想定ケース:なんでも押し付ける家族…「市役所に伝える!」と脅しも

ご利用者:70歳代女性、独居。要介護2 骨粗しょう症で歩行困難だが、排泄、食事は自立。入浴は介助が必要。外出はシルバーカー。
ご家族(キーパーソン):ご利用者の娘。新幹線で1時間ほどの離れた町で夫と二人暮らし。フルタイムで仕事をしている。
サービス利用状況:シルバーカーのレンタル、訪問介護(週3回)、訪問入浴(週2回)

業務範囲外の対応を脅すように求めてくる利用者のキーパーソン(娘様)に悩まされています。例えば、ご利用者に微熱が続いた時、「様子を見に来てほしい」と伝えると「そんなことは、ケアマネの仕事でしょう」と一方的に言われました。

そのような見守りは業務範囲外であり、対応しかねると伝えると「利用者の体調が悪くてそれを分かっているというのに、放置するというわけね!あなたが私の母の課題を把握しながら対応しない点、市役所に伝えさせてもらうことになるけど、よろしいですか」と、脅しをかけてきます。

間違ったことはしていないので問題ないはずですが、どんな嘘を役所に吹き込まれるかわからないと思うと空恐ろしくもあり、(自分が動けば解決するのだから)と言い聞かせ、最終的には従ってしまいます。

また、ご利用者自身も心配性で、ちょっとした出来事でも過剰に反応し、昼夜を問わず電話をかけてきます。この前は23時過ぎに「近所のネコの鳴き声が気味悪い。怖くてうるさくて眠れない。何とかしてほしい」と電話がありました。20分ほど話をしてなだめ、なんとか通話を終えましたが、その翌早朝には、使っている杖について細かな質問がありました。

猫の鳴き声対策はケアマネや介護職の業務ではないこと、杖に関しては、福祉用具専門相談員に連絡すればいいことを伝えてはいますが、聞き入れてもらえません。

娘様にご利用者を説得するよう求めても、「私は仕事があるし、遠距離介護なんだから、すぐに対応できないことぐらい分かるでしょう。近くにいるケアマネを頼るのは自然なことだし、プロなんだからそのくらいなんとかして」と、にべもなく拒絶されました。

高圧的で一を言えば十倍に返してくるような対応が難しいご家族。このままでは便利屋か奴隷のようになってしまいます。どう対応したらよいでしょうか。

対策その1:まずは自分の心身を守ることを優先して

厄介なご家族につかまってしまったケースですが、ケアマネといえど生身の人間ですから、過度な精神的ストレスにさらされ続けていては、いずれ限界を迎えてしまうでしょう。

そうなる前に、まずは自分の心身を守ることを優先してください。

具体的には、上司に困っていることを相談し、担当を変更することを検討しましょう。場合によっては事業所からの契約解除(第3回第4回「「この利用者とはもうやっていけない!」契約を解除できるか?」参照)も視野に入れ、事業所として話し合いをしていくと良いでしょう。

対策その2:熱くなるのは絶対にNG

続いて、自分が担当し続けざるを得ない場合について、対応を考えます。

本件については、どれほど丁寧に分かりやすく説明しても反論され、はねつけられてしまうわけですから、まともに向き合ってもらちが開かないということもあるでしょう。

そのような状況において、一番してはいけないことは「熱くなって感情的になる」ことです。

例えば、相手の挑発的なもの言いにカッとなり、「ふざけないでください!」などと言い放ったり、「私はケアマネであり、家族ではありません!」と言い電話を切ってしまったりすると、相手の思う壺です。いかなるときも冷静に、穏やかさを失わず対応することを心がけましょう。ちなみに、もしそれができそうにないということであれば、それ自体、精神が限界を迎えているサインです。無理せず担当から外れ、家族から距離を置いてください。

対策3:法令に照らし、3ステップで淡々と対応を

ただし、穏やかにといっても何も言い返さず従うだけでは、それこそ奴隷になってしまいます。他のご利用者に割く時間も減ってしまい、業務全体が滞ってしまうでしょう。

このようなケースの法的な対処法は実はシンプルであり、法令=ルールに照らし淡々と対応すれば良いのです。以下の3つのステップを実践していきましょう。

(1)ルールを確認しorルールを作り
(2)ルール通り動き
(3)記録する

まず、(1)のルールについては、第一回(ケアマネの本来の業務範囲を確認する)で解説したように、ケアマネの本来の業務範囲は「他事業所等との連絡調整」(介護保険法第7条第5項)であり、相談者が要望する見回りは業務に含まれません。猫の鳴き声対策や福祉用具についても同様であり、基本的にはケアマネの業務に関連すると思われる範囲で対応すれば十分です。

もっとも本件では、家族がケアマネが見回りをしないことについて「母の課題を把握しながら対応しない」と、責め立てています。この点については、万が一にも役所にそのような疑いの目を向けられたとしてもしっかり説明できるよう、対策を講じる必要があります。

長くなりましたので、その対処法については後編で解説します。お楽しみに。

外岡潤
1980年札幌生れ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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