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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

利用者宅への様子見を求められたら…

前回、「ケアマネの主な業務は他のサービス事業所等との連絡調整であり、自ら動いて利用者の問題を解決するものではない」と書きました。ただ、そうは言っても目の前で困っている人を助けない訳にもいきません。例えば次のような事例では、どう考え行動すべきでしょうか。三択から一つ、ご自分の考えに近いものを選んでください。

想定ケース:心配性の家族からの電話

ご利用者のAさん(80歳、要介護度2)を担当するケアマネジャー。Aさんと同居する娘のBさんは心配性ですぐ電話をかけてきます。ある日いつものように電話を受けると「今朝から母が熱っぽくて心配です。様子を見に来てください」というBさん。確認すると「平熱は36度だが今は36度8分ある」とのこと。

ところが、その日はモニタリングや会議の予定が重なっており、とても立ち寄ることはできません。そこで「今日は予定で一杯なので、行けないんです」と答えたところ、Bさんの態度が豹変。「ケアマネのくせに利用者のことが気にならないんですか、薄情者!前のケアマネはすぐ飛んできてくれましたよ。もし母が手遅れになったら責任取ってくれるんですか」と激昂されました。

この場合、どう対応すべきでしょうか?

選択肢1.ご家族の思いは無視できないので、何とか予定をやりくりして言われたとおり訪問する。
選択肢2.「自分では判断できないので、事業所の管理者にお尋ねください」と、役割を他人に振る。
選択肢3.ケアマネとしての業務範囲ではないため、お断りする。

妥当な判断は「業務範囲でないので訪問は断る」

いかがでしょうか。絶対の正解というものは存在しませんが、本稿では以下の理由から「3」を妥当な選択とさせて頂きます。

「1」は、スケジュールを変更することで他のご利用者や関係者に迷惑をかけてしまいます。仮に予定が空いていたとしても、このような要望がエスカレートし続ければ、いつかこのケアマネの業務は破綻してしまうでしょう。特にご利用者やご家族のために尽くしたいという思いが強く熱心な方ほど、この選択をしがちですので、注意が必要です。

「2」は、問題をたらい回しするだけで解決にならず、Bさんの不満を余計に増幅させてしまいます。状況を詳しく把握していない管理者も困ってしまいますね。

以上の理由を考えると、厳しい状況ではありますが、業務外であることを理由に訪問を断るが最も現実的で妥当な判断といえます。

問題となるのは、「どのような判断基準で行かないと決めるのか」と「ご利用者への伝え方」です。順番に見ていきましょう。

対策その1-「緊急事態」の基準と対応の手順をあらかじめ共有する

例えば、ご利用者の熱が38度を超えるような高熱である上、たまたま、すぐに立ち寄ることができるという状況であれば、例外的に訪問に応じるということも考えられます。

あくまでケアマネの業務は連絡調整であり、医療職のように急患の元へ駆けつける義務まではありませんが、命にかかわる緊急事態であることがはっきりしていれば、何もしないという訳にはいかないでしょう。

では、ご利用者の命や体が危険な場合、いわゆる緊急事態とはどのように範囲を区切るべきでしょうか。

この点について、法令上明確な指針はなく、ケースバイケースの判断が求められます。そのため、何が緊急事態なのか(「一般に新型コロナウイルス等が疑われる指標となる37度5分を超えたときは緊急事態とする」など)を、ご利用者や家族とあらかじめ話し合っておく必要があるでしょう。

特に、本件のようにご家族が心配性である場合は、緊急事態と判断する基準に加え、「まずはケアマネではなく主治医や訪問看護ステーションに連絡する」といった手順まで決めておくことが必要かもしれません。

全てを事前に予期し決めておくことは難しいですが、できる範囲で先手を打っていくことがポイントです。

対策その2-「コンプライアンス」という言葉を意識的に使い、理由を説明

当たり前のことですが「私の仕事ではないので、行けません」とストレートに言ってしまっては、信頼関係が崩れてしまいます。

例えば次のような言い回しが考えられます。

「B様がお母様を心配なさるお気持ちはよく分かりますし、私もすぐおうがかいしたいところではあります。ただ、ケアマネの業務は居宅サービス計画の作成・他事業者らとの連絡調整が中心で、日常的な見守りやモニタリング以外の訪問は想定されていないのです。前任のケアマネさんがどこまで対応していたかはわかりかねるのですが、もしかするとコンプライアンスの観点からは望ましい対応ではなかったのかもしれません」

「もしお熱があがるようでしたら訪問看護や往診の先生につなげることはできます。もっとも、今はまだ36度台のお熱ということですので、もうしばらく様子を見てみるということでもよろしいかと思います。もちろん、息切れが激しいとか、ぐったりしているとか、他にも気になることがあるようでしたら、救急車を呼ぶこともできますが、いかが致しましょうか」

ポイントは、「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉を意識的に使い、常に法令に従うスタンスを示すことと、最終的には相手方に選択を委ねる(医療機関に連絡しても構わない、と告げること)ことです。

対策その3- 「受容と共鳴」を忘れずに

逆に、決してやってはならないのは「私だって都合があるし忙しいんです!その程度の熱なら大丈夫ですよ」などと感情的に言い放ってしまうこと。ほかの人から見れば「その程度のこと」でも、心配性のBさんにとっては「大変なこと」なのですから、相手の感情を無用に刺激してはいけません。また、電話を切った後で、もし本当に容態が悪化したら、さらに厄介です。「ケアマネに大丈夫と言われた」という理由で搬送などに繋げなかった場合、医療的判断をしたとして責任を問われる恐れもあるからです。

相手の思いをまず受け止め、共感してみせることを「受容と共鳴」といいますが、トラブルに対処するときは先手を打ち、受容と共鳴で信頼関係を築き、最後に法令遵守で正しいあり方を伝え理解を求めるという流れが効果的です。

外岡潤
1980年札幌生れ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など

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