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ケアマネジメント新時代の幕開けケアマネジメント新時代の幕開け

ケアマネジメント新時代の幕開け

定期巡回と複合型の創設 在宅生活の継続に光を見た

今回は、2012年(平成24年)の制度改正と介護報酬改定について見ていきましょう。

私はこの改正・改定に関しては、介護保険部会も介護給付費分科会も、ほとんど毎回傍聴しました。

それは、2012年が診療報酬との同時改定だったこと、将来に向けた国づくり・仕組みづくりの議論が多くなされていたこと、そして何よりも大きな理由は、戦後の発展を支えてきた団塊の世代が、2015年には65歳を迎えるという大きな転換期を間近に控え、その対応のための基盤づくり、準備の大事な時期だったからです。

2012年の制度改正と介護報酬改定は、第5期(2012年~14年)の介護保険事業(支援)計画に向けたものですが、団塊の世代が75歳を迎える2025年(第9期)までを見据えたものでした。同年までに地域包括ケアシステムを構築し、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごせる地域づくりを進めることが、国の中長期の目標になっていたからです。

下の図は、当時の厚生労働省の資料に私が少し追筆して作成したスライドです。

【スライド1 厚労省の資料を元に岡島作成】

厚労省は第5期計画について、「高齢者が地域で安心して暮らせる地域包括ケアシステムを構築するために必要となる、①認知症支援策の充実、②医療との連携、③高齢者の居住に係る施策との連携、④生活支援サービスの充実と言った重点的に取り組むべき事項を、実情に応じて選択して位置づけるなど、段階的に計画の記載内容を充実強化させていく取り組みをスタート」と位置付けていました。

そして第6期以降については、「2025年に向け、第5期で開始した地域包括ケア実現のための方向性を承継しつつ、在宅医療介護連携等の取組を本格化。2025年までの中長期的なサービス・給付・保険料の水準も推計して記載し、中長期的な視野に立った施策の展開を図る」とする方向性を示していました。このことからも、厚労省は第5期の段階で、10年後の地域包括ケアシステムの構築を見据えていたことがわかります。

都道府県も市区町村も、そして介護サービス事業を運営する法人も、国が掲げる基本理念に沿ってそれぞれの事業計画を作成します。毎日の業務が忙しいと、中長期の目的や目標の確認を忘れがちですが、核となっている基本部分を確認しながら事業を進めることが重要です。

地域に根付いた新サービスが動き出した

2011年(平成23年)の第177回通常国会に提出された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」は同年6月15日の参院本会議で可決、成立し、同月22日に改正法が公布されました。

改正法では、高齢者が地域で自立した生活を営めるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みを進めるための基盤を強化することが強く打ち出されています。

改正法の要旨は、▽医療と介護の連携の強化等▽介護人材の確保とサービスの質の向上▽高齢者の住まいの整備等▽認知症対策の推進▽保険者による主体的な取組の推進▽保険料の上昇の緩和―の6つです。

下記の図をご覧ください。

【スライド2 厚労省の資料より】

法改正を受けて創設されたのが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)や複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護、以下、看多機)などの地域密着型サービスであり、認知症施策の推進、介護職員等によるたんの吸引、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)といった地域に根付いた新たなサービスが動き出しました。

地域包括ケアシステムの構築に向け、国がこれまでに練ってきた施策が、いよいよ地域で実現に向かうことになったのです。田中滋先生(現埼玉県立大理事長)がよく話してくださった今後の高齢者の生活像「おおむね在宅、時々入院」が、これらのサービスで実現できるのではと、当時強く思いました。

定期巡回、一度活用してわかる大切さ

定期巡回が従来のサービスと異なっていたのは、利用者さんからの連絡は常駐のオペレーターが担当すること、電話の着信と同時にその方の情報がモニター上に浮かび、すぐに内容を理解できる人が対応してくれること、そしてスタッフ間でその内容を速やかに共有できることでした。情報をリアルタイムに把握することで、より適切な専門職が対応でき、必要な場合は随時訪問につなげることもできるのです。

【スライド3 厚労省の資料より】

ケアマネジャー、介護職、そして看護師が連携して対応する、この画期的なサービスは、複合型サービスの創設と併せて、重度の方の在宅サービスの継続に光を見た気がしました。

私は当時、厚労省の老人保健健康増進等事業(以下、老健事業)「定期巡回におけるケアマネジメント」の委員を務めており、調査やヒアリングでさまざまな事業所に足を運び、在宅生活の継続に向け、数多くの工夫がなされていることを自分の目で見ました。その中で特に感心したのは、電話連絡のために専門職のオペレーション制(シフト制)を採用していたことでした。

定期巡回が大きく発展しないのは、ケアマネジャーの理解が進まないからとも言われていますが、一度でも活用してみると、利用者さんにとって大切で、便利なサービスであることがわかると思います。

介護保険サービスは原則、事前に作成された計画(ケアプラン)に沿って動くので、特に利用者さんが困った時の対応で、他のサービスとの大きな違いが出ると感じました。当時現場の方からは、利用者さんからの夜間の電話がかなり減ったという話も伺いました。自分のことをよく知っている人がいつでも話を聞いてくれて、必要があればすぐに対応してくれることがわかり始めると、それが安心感につながるのでしょう。

他方、ケアプラン作成の考え方が従来のサービスとは異なることや、月単位の包括払いのため、給付管理業務が少し煩雑になり、ケアマネジャーに面倒と思われがちだということも現場で痛感しました。私自身は、包括払いの方がシンプルにできる部分も多々あり、慣れの問題ではないかと思っています。

複合型サービスの創設 看多機の誕生

複合型サービスとして創設された看多機は、在宅生活を支える「通い」「泊り」「訪問介護」「訪問看護」を一体的に提供するもので、サービスを一元管理するため、人員基準にはケアマネジャーも組み込まれています。療養が必要な高齢者が在宅生活を継続する上で、本当に大切なサービスができたと思っています。

担当のケアマネジャーを変更する必要もあってか、当初、利用者さんにこのサービスをお勧めしても、なかなか利用につながらないこともありました。ケアマネジャーも、利用者さんの担当から外れることを残念に思う気持ちもあったでしょう。その後、サービスへの理解が進み、現在では、こうしたケースは減ったと思います。

国のイメージ図を目指したサ高住第1号

最後に、サ高住について少し触れたいと思います。下の図は、サ高住のイメージを説明した当時の厚労省のスライドです。

【スライド4 厚労省の資料より】

東京・浅草の浅草寺の隣にある弊社のサ高住第1号は、実は、このイメージ図を目指して造られたものです。

サ高住のビル内には、訪問介護を併設したほか、コンシェルジュ(受付・相談担当)も配置しました。さらに、ビル内に別の入り口を設け、内科と整形外科のクリニック、調剤薬局、居宅介護支援、訪問看護(訪問リハ)、デイサービスと、幅広いサービスがそろいました。多くの法人との連携によって、国が目指す構想が実現し、大きく動いていくのを実体験できたことは、未来へ向けた大きな喜びとなりました。

居宅介護支援と訪問介護では開設当初から、サ高住の居住者だけでなく、地域全体を対象とすることを目標として掲げました。1年後、居宅介護支援事業所は2軒隣のビルに移転。当時2人だったケアマネジャーは今では7人に増え、担当件数は地域住民の方が多くなっています。

居宅介護支援の宿題も見えてきた

私は2012年の制度改正の頃、厚労省の老健事業「ケアマネジメント向上会議(公開地域ケア会議)」や「ケアマネジメントの質的評価のあり方に関する調査研究委員会」の委員もさせていただきました。ケアマネジメントの質について多くの先生方からご意見を頂くとともに、全国から集まった多数のケアプランを見る機会を得ました。

この時の経験は、私にとってケアマネジメントを振り返る良い機会になりました。学びや気づきも多く、年齢を重ねながらも常に学習することがいかに大切かを学びました。

今後の制度改正・介護報酬改定に向けた居宅介護支援の宿題も見えてきました。

(1)介護支援専門員の今後のあり方及び地域での役割を考える

  • 「介護支援専門員の資質の向上と今後のあり方」の検討
  • ケアプラン様式の見直しや参考プランの提示
  • 地域ケア会議による多職種協働の推進
  • 養成・研修・資格のあり方に関する検討(厚労省は2012年3月、「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」を設置)

(2)アセスメント力を高める

  • 自立支援、個別性、予後予測(現在は「生活の将来予測」と表現)、生活の阻害要因、ニーズの根拠、ケアプランの評価

(3)地域における介護と医療の更なる連携強化

これらの多くは、10年あまりが経った今もなお、ケアマネジャーに問われている課題です。

この度、厚労省が「適切なケアマネジメント手法」で、ケアマネジメントの標準的な手法や考え方を示してくださったことは、大変ありがたいことだと思っています。ケアマネジメントの基本概念や考え方に併せて、実践のための手法を、全国のケアマネジャーが共通認識として習得することは、ケアマネジャーの専門性にとってとても重要なことだと考えています。

岡島潤子
慶応義塾大学文学部卒業(社会学専攻)。1999年に介護支援専門員の資格を取得後、同年9月に株式会社やさしい手に入職。新宿区で居宅介護支援事業所の立ち上げなどに携わった後、2005年7月に同社初の居宅介護支援事業部を創設。現在は同社経営企画部の顧問として、総勢383人のケアマネジャーをスーパーバイズしている。厚労省をはじめとする国の委員会の委員のほか、日本ケアマネジメント学会の代議員や一般社団法人「東京ケアマネジャー実践塾」の理事長など、ケアマネの関連団体で多数の要職を務めている。主任介護支援専門員、社会福祉士。

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