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ケアマネジメント新時代の幕開けケアマネジメント新時代の幕開け

ケアマネジメント新時代の幕開け

「コムスン問題」で揺れた2008年の法改正

前回前々回は、2006年(平成18年)の大改革を振り返りました。

介護保険法の施行後初めてとなる前年(2005年)の法改正では、現在の介護保険制度の柱ともいえる「地域包括ケア」という用語が初めて登場しました。高齢者のニーズや状態の変化に応じて、さまざまな支援が切れ目なく提供される体制を整備する方針が示されました。

今回は、2008年の法改正と2009年の介護報酬改定を振り返ります。

2008年の介護保険法改正は、大手介護サービス事業者「コムスン」の不正事件(いわゆる「コムスン問題」)の発覚を受けた問題の再発防止と法令遵守が柱だったと思います。

そして翌年の報酬改定は、居宅介護支援が焦点の1つだったのかなと考えます。

前年春に行われた介護事業経営実態調査で、居宅介護支援の収支差率はマイナス17%と、大赤字の結果となりました。これを受け、居宅介護支援の報酬改定は、40件以上の場合の逓減制の見直しや特定事業所加算要件の緩和など、ケアマネジャーにエールが送られています。

行政の管理・監督権限が強化

まずは、2008年に成立した介護保険法の改正法から見ていきましょう。

2008年の法改正では、2006年から2007年にかけて発覚したコムスン問題を背景に、介護サービス事業者に対し、法令遵守等の業務管理体制の整備が義務付けられました。

それまでは、国・ 都道府県・市区町村に介護サービス事業者への立入検査の権限はなく、不正行為への組織的な関与を確認することができなかったのですが、2008年の法改正に伴い、立入検査権、是正勧告・命令権が創設され、介護サービス事業者への管理・監督権限が強化されました。

コムスン問題を受けた不正事案の再発防止及び介護事業運営の適正化を図るため、政府は2008年3月5日、「介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案」 を国会(第169回国会)に提出。同年5月21日の参院本会議において全会一致で可決、成立し、同月28日に公布されました。改正法の施行は翌年5月1日でした。下記の図表をご覧ください

図表1 介護保険部会(2007年12月20日)の資料より抜粋
図表1 介護保険部会(2007年12月20日)の資料より抜粋
厚労省のホームページより
図表2 厚労省のホームページより

不正発覚、ケアマネにも大きな衝撃

ケアマネジャーの現場も、コムスン問題で大きな衝撃が走りました。事件当初は詳細がわからず、私たちも戸惑いや不安でいっぱいでした。

しばらく経って、不正の詳細がわかりました。厚生労働省は、介護保険最新情報Vol.13「株式会社コムスンの不正行為への対応等に係る記者発表について(計17枚)」を発出したほか、2007年12月20日の介護保険部会では、資料3として「株式会社コムスンの不正事案に関するこれまでの対応について」を出しました。

コムスンは同年6月13日、全ての介護サービス事業からの撤退を正式に表明。同年12月1日までに、居住系サービス(グループホーム183事業所、有料老人ホーム26カ所)と在宅系サービス(訪問介護事業所等、全1067事業所)の事業移行と介護保険法に基づく指定等が完了します。在宅系サービスの事業所の地域は47都道府県にも及びました。

事業所の地域が多岐にわたっていることと、事業所数の多さに驚きましたが、何よりもすごいと思ったのは、厚労省の要請を受け、事業者や都道府県・市区町村が短期間でこの巨大なグループの事業所等の移行から指定までを連携・協働して成し遂げたことだと思います。

当時、法令順守等の研修が各地で開催されました。本来は経営陣や管理者向けのはずでしたが、多くのケアマネジャーも参加しました。「連座制」(※)のこともあり、「知っておかなければ大変だ」との思いでした。

※連座制とは…1事業所の指定取り消しが、その事業者の同一サービス類型内の他事業所の新規指定・更新の拒否につながる仕組み
【参考】 WAM NET(ワムネット):介護保険最新情報Vol.73「介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律等の施行について」、「介護サービス事業者に係る業務管理体制の監督について」等の送付について

現場のケアマネジャーは当時、「お互いにミスをしないようにしよう」と語り合いましたが、不正事件の内容やコムスンについては、あまり語らないできたような気がしています(戒めとして、常に頭の中にはあるのですが)。

その最も大きな理由は、この巨大なグループが受け持っていた利用者さんの数があまりに多く、文句を言うよりも先に、利用者さん達に困り事が起きたり、生活に支障を来したりしないか、とにかく身を案じていたからだと思います。自分たちの業務内容について、改めてしっかりと確認するとともに、困っている利用者さんが1人も出ないよう、国の対応を静かに見守り、祈るばかりだったのです。

この事件によって、介護に対する社会の信頼は大きく損なわれました。「これ以上、信頼を失いたくない」とも思っていましたし、今後、法令をしっかりと順守した上で、改めて社会から評価していただくための再スタートとも受け止めていました。ですから、国の指示の下、都道府県や市区町村、事業者が協働して素早く対応できたことに、私は大拍手を送りました。

処遇改善対策、改定率は3%のプラス

ここからは、2009年の報酬改定について見ていきましょう。

介護人材の確保が困難な状況を打破するため、改正法が成立した第169回国会では、「介護従事者等の人材確保のための介護従事者の処遇改善に関する法律」も成立しました。

これを受け、政府・与党は2008年10月30日、「介護従事者の処遇改善のための緊急特別対策」として、翌年の介護報酬の改定率を3.0%(在宅分1.7%、 施設分1.3%)とすることを決めました。

2009年度の介護報酬改定は、以下の基本的な視点に基づいて行われました。

(1)介護従事者の人材確保・処遇改善
(2)医療との連携や認知症ケアの充実
(3)効率的なサービスの提供や新たなサービスの検証

(1)では、▽各サービスの機能や特性に応じ、夜勤業務など負担の大きな業務に対して的確に人員を確保する場合に対する評価▽介護従事者の能力に応じた給与を確保するための対策として、介護従事者の専門性等のキャリアに着目した評価▽介護従事者の賃金の地域差への対応として、介護報酬制度における地域差の勘案方法(地域区分ごとの単位設定)―などの見直しが行われました。

(2)では、「医療と介護の機能分化・連携の推進」と「認知症高齢者等の増加を踏まえた認知症ケアの推進」が打ち出され、入院時や退院・退所時のケアマネジャーとの連携を促進する加算などが新設されました(後述)。

介護が必要になっても住み慣れた地域で自立した生活を続けることができるよう、医療から介護保険でのリハビリへ移行する際、医療と介護の継ぎ目のないサービスを効果的に利用できるようにするための見直しが行われたほか、▽認知症行動・心理症状への緊急対応や若年性認知症の受け入れへの評価▽認知症高齢者等へのリハビリの対象拡大―なども行われました。

(3)では、介護サービス事業の運営の効率化を図るため、▽訪問介護事業所のサービス提供責任者の常勤要件▽夜間対応型訪問介護事業所のオペレーター資格要件▽小規模多機能型居宅介護の夜勤体制要件▽介護老人保健施設の支援相談員の常勤要件―などが見直されました。

また、介護保険制度の持続性の確保及び適切な利用者負担の観点から、居宅系施設に入所している要介護者への居宅療養管理指導や介護保険施設における外泊時費用を適正化なども行われました。

逓減制が40件以上のみ適用に見直し

最後に、居宅介護支援のポイントを見ていきましょう。

2009年の改定では、40件以上の場合の逓減制が見直されました。改定前は、全ての件数に逓減制が適用されていましが、改定後の2009年4月以降は、超過部分のみ適用されるようになりました。

また、特定事業所加算は2区分となり、要件が緩和されました。さらに、医療機関との情報共有を評価する加算として、現在の「入院時情報連携加算」に当たる「医療連携加算」と「退院・退所加算」も創設されました。

このほか、認知症や独居の高齢者に対するケアマネジメントを評価する「認知症加算」「独居高齢者加算」、小規模多機能居宅介護事業所との連携を推進する「小規模多機能型居宅介護事業所連携加算」も創設されました。

コムスン問題を忘れてはいけない

今回は、やはり法令遵守のことが主になりました。

実は、この連載に当たり、コムスン問題について触れて良いものかと迷いました。もし記すのならば、どのように書くのが良いのか。難しくて、キーボードを打つ手が止まってしまいます。

でも、2008年の法改正を改めて振り返ってみて、やはり、皆さんに背景をお伝えすることが必要だと思い、国の取り組みを客観的にお伝えすることにしました。そして現場の様子は、私が見たり聞いたり感じたままに記すことにしました。

コムスン問題はだいぶ風化し、「コムスン」の名前も知らないケアマネジャーも多くなってきています。当時を知っている人は、大きな声で語らないだけで、決して忘れていないし、また忘れてはいけないことだと思っていると思います。

ある事業所が信頼を失う行為をすると、それは介護業界全体に影響し、利用者や社会の信頼を失うのだと実感しました。失った信頼を取り戻すには、それまでの何倍もの努力が必要でした。業界全体で多くを学びました。

利用者さんを守るため、そして介護保険制度を守るために、国を中心とした行政関係者、そして介護事業者や現場の介護従事者、さらには介護保険部会や介護給付費分科会の委員に至るまで、皆が力を合わせ、気持ち新たに再スタートを切ったのだと思っています。

岡島潤子
慶応義塾大学文学部卒業(社会学専攻)。1999年に介護支援専門員の資格を取得後、同年9月に株式会社やさしい手に入職。新宿区で居宅介護支援事業所の立ち上げなどに携わった後、2005年7月に同社初の居宅介護支援事業部を創設。現在は同社経営企画部の顧問として、総勢383人のケアマネジャーをスーパーバイズしている。厚労省をはじめとする国の委員会の委員のほか、日本ケアマネジメント学会の代議員や一般社団法人「東京ケアマネジャー実践塾」の理事長など、ケアマネの関連団体で多数の要職を務めている。主任介護支援専門員、社会福祉士。

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