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「黄金の3年間」と比例区の結果が、介護に最悪の改正をもたらす!

この秋から2024年度に予定されている介護保険法改正(24改正)にむけた議論が本格化する。今回は、先の参院選の結果が24改正にもたらす影響について考えたい。

「プラン有料化」も「2割負担の原則化」も…すべて24改正で実現する?

今回の選挙を、一言でまとめると与党大勝だった。この勝利によって与党は今後3年間、国政選挙を意識せずに済む「権利」を手にした。いわゆる「黄金の3年間」だ。

国政選挙を意識せずに済む、ということは、多少の批判が伴うような、大胆な決断を下しやすい環境が確保されたということでもある。この事実だけでも、介護保険制度において利用者負担を増大させたり、サービスの提供を制限させたりするような改正がなされる可能性が高まったと判断できる。

だが今回の選挙結果を詳細にみると、それだけでは済まないと思える。それこそ「ケアプラン有料化」も「単品プランの報酬削減」も、「要介護1、2の総合事業化」も「2割負担の原則化」も、すべて丸ごと、24改正で実現してしまうかもしれない。比例区、それも自民党の比例区の候補の結果を見ると、そう危惧せざるを得ないのだ。

比例区の結果が介護の施策の優先度を低くする

比例区では、特別養護老人ホームの経営者らが参加する全国老人福祉施設協議会の政治団体「全国介護福祉政治連盟」が、組織内候補として自民党の園田修光氏を擁立していた。園田氏については、日本介護支援専門員協会の政治団体「日本介護支援専門員連盟」など、他の介護関係団体も支援していたが、思ったほど票を伸ばせずに落選。同様に「日本介護支援専門員連盟」が併せて推薦していた自民党の小川克巳氏も落選した。

もちろん、介護業界が推した候補のすべてが落選したわけではない。選挙区で当選した議員や既存の衆議院議員、公明党議員らにも介護に関心のある方はいる。だが、選挙の前から介護をメーンテーマとしてきた園田氏や小川氏が落選した影響は大きい。

全国が舞台となる比例区は、それぞれの候補が政策・施策を掲げて得票を競い合う選挙でもある。そのため、与党の議員や霞が関の官僚は、比例区の結果を優先政策・施策を見極める上での「指標」と位置付けている。その比例区で介護を主政策としてきた議員が落選したのだから、介護関連の施策の優先度は確実に低下するだろう。さらには「他の施策を充実させるため、介護業界や介護サービスを使う人には、一定の負担を求める施策の導入もやむなし」という流れが与党内で生じても何の不思議もない。

介護に強い議員の落選が、同時改定にも影響

また、今回の参院選では、医療系の職能団体が推薦した主な候補は当選を果たした。ざっくりといえば、介護業界が推した主な候補は永田町を去り、医療業界が推薦した主な候補は、再び国政の場に立つことができたわけだ。

24年度に診療報酬と介護報酬が同時に改定されることを思えば、この状況も、介護業界にとって大きな痛手だ。

医療業界が推した議員の中には介護への配慮を忘れない方もいるし、医療・介護の連携こそが重要と訴える方もいるから、悲観しすぎる必要はないのかもしれない。それでも、介護をメーンテーマとしてきた議員の落選が、同時改定に影響するのは疑いようがない。身も蓋もない言い方をすれば、同時改定とは、国の医療関連部局と介護関連部局の間で、財源の分捕り合いが行われる時でもあるのだから。

それでも推進される処遇改善が、介護報酬をさらに圧迫

もっとも、たとえ「ケアプラン有料化」が実現されようと、「原則2割負担」が導入されようと、介護職員の処遇改善策だけは、さらに推し進められるだろう。この課題は、保育士同様に与野党問わず共通の施策課題として認識されているからだ。

だが、この処遇改善策の充実は介護報酬そのものには、むしろ悪影響をもたらすかもしれない。「処遇改善分の財源を確保するため、介護報酬本体をマイナス改定にする」という方法が用いられる可能性があるからだ。実際、15年度の介護報酬改定では、「加算を充実させ、本体報酬を削る」という手法が用いられた。ちなみに、この時の改定率は史上最悪のマイナス2.27%。これまで述べてきた状況などを勘案すれば、24年度は、もっと大きなマイナス改定を突き付けられるかもしれない。

野党に期待はできるのか?!

ここまで書くと、読者の中には、「野党の中には介護と真剣に向き合っている議員も少なくないから、そこまで悲観的な結果にはならないのではないか」と考える人がいるかもしれない。

確かに、野党には介護施策を重視する議員が少なくない。だが、既に述べた通り、今回の選挙は与党の圧勝だった。さらに衆議院でも与党が過半数を占めている事実を思えば、野党議員の頑張りで全体の流れが変わる可能性は低いと言わざるを得ない。もちろん、国会の法案審議過程では激しい論戦が繰り広げられるだろう。だが、結果的に与党ペースで方向性が決まっていくことは、ほぼ疑いようがない。

次の選挙も意識しなくてもいいという、「悪い」タイミングも影響

また、「3年後とはいえ、再び選挙もある。その後のことを思えば、そこまで極端な施策は導入されないのでは?」と先読みする方もいらっしゃるだろう。

あまり極端な施策の導入は、のちのちの選挙に響く恐れがあるのも事実だ。だが、仮に24年4月から「ケアプラン有料化」「単品プランの報酬削減」「要介護1、2の総合事業化」「2割負担の原則化」が一気に導入され、介護に関わる人の間で不満が爆発したとしても、である。次の国政選挙が行われるのは、(途中、衆議院の解散などの特別な事情がなければ)25年7月頃。法改正と報酬改定の1年余り後のことなのだ。

1年余りの間、介護保険法改正と介護報酬改定による悪影響が社会全体の関心事であり続けるだろうか?-普通に考えれば、ほぼあり得ない。

つまり、24年度の介護保険法改正と介護報酬改定は、次の選挙への影響など、まったくおもんぱかる必要がない状況で議論され、実施されるわけだ。このタイミングの「悪さ」だけでも、24改正の前途は多難と思えてしまう。

まとめると、今回の選挙結果を受けて、これから3年間、介護業界にはかつてないほど強い逆風が吹き続けるだろう。この逆風を少しでも和らげる術は、制度を守るために介護関係者がより団結し、永田町や霞が関に働きかけていくしかない。改めて、介護業界の大同団結を期待したい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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