激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座
居宅でのLIFE活用、24改定ではどこまで進む?
- 2022/03/23 09:00 配信
- 激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座
- 田中紘太
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2021年度の介護保険制度改正と介護報酬改定(21改定)は、介護保険制度の方向性を大きく変えるターニングポイントだったといえます。その方向性は、2024年度の介護保険制度改正・介護報酬改定(24改定)で、よりはっきりとした形で表れてくるでしょう。24改定を乗り切るためにも、居宅介護支援事業所は、今から制度改正の先を読み、できる限りの手を打たなければなりません。「生き残り講座」では、そのための具体策を独立型の居宅介護支援事業所を複数経営する株式会社マロー・サウンズ・カンパニーの田中紘太代表取締役が解説します。
「ケアマネには関係ない」と思われがちだが…
昨年4月の介護報酬改定の目玉施策の一つが「科学的介護情報システム( Long term care Information system For Evidence、LIFE)」の創設です。
「LIFE」は、利用者の状態やケアの内容などのデータを国に提出すると、分析・評価結果としてフィードバック票が提供されるシステムです。フィードバック票を活用することで、継続的にケアの質を改善させる「PDCAサイクル」を回すことが期待されています。
このシステムの活用を促すため、昨年4月の介護報酬改定では、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービス、小規模多機能型居宅介護など、さまざまなサービスに「科学的介護推進体制加算」という名の加算が設けられました。
一方、居宅介護支援や訪問看護、訪問介護などは「科学的介護推進体制加算」の対象となっていません。そのため、ケアマネジャーの中には「LIFEは自分にはあまり関係ない」と考えている人も多いようです。
既に国は居宅にも「LIFE」活用を求めている
しかし、「LIFE」はケアマネにも大いに関係があります。昨年4月の介護報酬改定にあわせて居宅介護支援事業所の運営基準が一部改正されているからです。以下はその省令と通知の該当部分です。
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(省令)
(基本方針)
第一条の二
6 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援を提供するに当たっては、法第118条2第1項に規定する介護保険等関連情報その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うよう努めなければならない。
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(通知)
3 運営に関する基準 (1)介護保険等関連情報の活用とPDCAサイクルの推進について
基準第1条の2第6項は、指定居宅介護支援を行うに当たっては、介護保険法第118条の2第1項に規定する介護保険等関連情報等を活用し、事業所単位でPDCAサイクルを構築・推進することにより、提供するサービスの質の向上に努めなければならないこととしたものである。
省令にも通知にも「介護保険法第118条の2第1項に規定する介護保険等関連情報等」という言葉が盛り込まれていますが、これこそが「LIFE」を指しています。
つまり、国は既に「LIFEを事業所単位で活用し、居宅介護支援の質の向上に努めなければならない」と規定しているわけです。
24改定に向け、居宅での「LIFE」活用を研究する厚労省
ただし、この事実を把握しているケアマネからも「そもそも、LIFEのデータ入力は加算を算定する事業所がやることだし、ケアマネが何かすることはないのでは?」という、後ろ向きな声も聞こえてきます。
そう言いたくなる気持ちはよくわかります。いくら頑張ったところで加算が算定できるわけではありませんしね。ただ、最近の厚生労働省の動きを見ていると、いつまでも「LIFE」に背を向け続けているわけにもいかないなあ、と思えるのです。
なにしろ厚労省は、24改定に向けて居宅介護支援事業所で「LIFE」を活用するための調査研究事業を、既に始めているのですから。
ちなみにこの調査、「とりあえず調べてみているだけでしょ?」と、甘く見るわけにはいきません。調査研究を実施する理由として「次期介護報酬改定に向け、具体的な活用方法及びそれに向けた課題等について検討する」と明記されているからです。
そこで今回は、厚労省が思い描く「LIFEを活用したケアマネジメント」について、予測してみたいと思います。
まず予測されるのは、居宅介護支援事業所が担当するすべての利用者の情報を「LIFE」に反映させる必要はないということです。おそらく、「科学的介護推進体制加算」を算定している事業所のサービスを使う利用者だけが対象となるでしょう。
大予測その1-「LIFE」に反映させる情報は‥‥
続いてどんな情報を「LIFE」に反映させるかを考えます。
結論からいうと、「利用者フィードバック票」と「事業所フィードバック票」の2種類が予測されます。
「利用者フィードバックデータ票」は、ADL(Barthel Index)、行動心理症状(DBD13)、口腔(義歯の汚れ等)、栄養(BMI、その他)が主な項目となります。
「事業所フィードバック票」も項目は同じですが、全国の事業所の平均的な取り組みと、自分たちの事業所の取り組みを数字で比較できる点が特徴です。いわば自分たちの取り組みの「偏差値」を知ることができるわけです。
これらのデータの具体的な活用方法としては、ADLの変化に基づいたケアプランの見直しやサービス担当者会議での情報共有、必要に応じた医療機関との連携強化などが考えられます。
ただし、ケアマネのアセスメントシートの内容や課題整理標準23項目で使用されている評価スケールと「LIFE」の評価スケール(Barthel IndexやDBD13など)には違いがあります。そのため、24改定に向け「LIFE」に寄せたアセスメントシートや課題分析標準項目の追加などが行われていくことが考えられます。
その結果、24改定以降はアセスメントやケアプラン原案作成、サービス担当者会議、モニタリングなど、全てのケアマネジメントサイクルで「LIFE」を活用して当たり前という状況となるでしょう。
こうした状況が予測されますので、ケアマネも24改定を待たず、「LIFE」についての勉強を進めておくのが賢明でしょう。
大予測その2-関連の加算は創設される?
ただ、「LIFE活用を促すインセンティブ=加算の創設」については、あまり期待できなさそうです。
理由は、居宅介護支援にまで新たな加算を創設できるほどの財源が確保できるとは思えないからです。
今年10月から「介護職員等ベースアップ等支援加算」(ベア加算)が創設されます。この「ベア加算」が24改定でなくなることは、まずないでしょう。その上、コロナ禍での緊急財政出動が続いたため、24改定に向けた議論は、かつてないほど厳しい支出引き締めの機運の中で行われるでしょう。下手をすると全体ではマイナス改定となる恐れもあります。せいぜい、現状維持が関の山でしょう。
つまり、介護報酬全体の財源は、拡大が期待できないどころか削られかねないのに、「べア加算」は維持していかなければならないのです。そんな中で、居宅介護支援にまで新たな加算が創設されるとは、残念ながら思えません。

- 田中紘太
- 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー代表取締役、主任介護支援専門員。併設サービスを持たない居宅介護支援事業所「ダイバーシティ」を5事業所運営。在籍するケアマネジャーは35人。また、ケアマネ研修動画サイト「DiversiTV」も運営している。
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