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激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座

受託するの?包括主体の介護予防ケアプラン

2021年度の介護保険制度改正と介護報酬改定(21改定)は、介護保険制度の方向性を大きく変えるターニングポイントだったといえます。その方向性は、2024年度の介護保険制度改正・介護報酬改定(24改定)で、よりはっきりとした形で表れてくるでしょう。24改定を乗り切るためにも、居宅介護支援事業所は、今から制度改正の先を読み、できる限りの手を打たなければなりません。「生き残り講座」では、そのための具体策を独立型の居宅介護支援事業所を複数経営する株式会社マロー・サウンズ・カンパニーの田中紘太代表取締役が解説します。

21改定で「委託連携加算」が誕生したが…

21年改定では新たに「委託連携加算」が創設され、地域包括支援センター(包括)が要支援者、事業対象者の介護予防プランを居宅介護支援事業所に委託した際、300単位が算定できるようになりました。

いうまでもなく、包括の負担軽減を狙った施策ですが、その効果は、ほとんど期待できないでしょう。

「要支援」の単位は「要介護」の半分未満

改めて、居宅介護支援事業所の基本報酬と特定事業所加算の単位は次の通りです。

基本報酬と特定事業所加算
居宅介護支援費I(要介護1、2) 1076単位/月
居宅介護支援費I(要介護3、4、5) 1398単位/月
特定事業所加算I 505単位
特定事業所加算II 407単位
特定事業所加算III 309単位
特定事業所加算A 100単位

特定事業所加算を取得していれば、1人当たりの単価として少なくとも1176単位が算定できるわけです。一方、介護予防支援費の1人当たりの単価は438単位。要介護者1人あたりの半分未満です。

介護報酬は、業務に対する「手間賃」という位置づけですから、単位数に倍以上の開きがあるのなら、要支援と要介護にかかるケアマネジメント業務の時間にも倍以上の開きがあるということになるはずです。

だが、実際はそんなに大きな違いはありません。以下は厚生労働省の調査事業の結果です。

要介護度別の利用者1人1月の労働投入時間(分)
要支援1 合計110.5分
要支援2 合計111.0分
要介護1 合計139.5分
要介護2 合計140.1分
要介護3 合計148.5分
要介護4 合計156.5分
要介護5 合計156.1分

【出典】老人保健健康増進等事業(令和元年度)「居宅介護支援及び介護予防支援における平成30年度介護報酬改定の影響に関する業務実態の調査研究事業」((株)三菱総合研究所)

確かに要介護の方が手間はかかっていますが、それでも1月分の手間でみると30〜45分長い程度です。

ちょっと手間はかかるけど、報酬は、要介護の方が要支援よりも倍以上高い

これが居宅介護支援事業所にとっての実情なのです。

現場の状況は、改定前とほとんど変わっていない

21改定によって介護予防支援費については、基本報酬(438単位)に「委託連携加算」(300単位)が加わりました。ただ、300単位のうち、どのくらいの単位が居宅介護支援事業所に委託料として回されるかは、包括の裁量に任されています。

仮に「委託連携加算」の単位すべてが委託料として居宅介護支援に回された場合(まず、そんなことはあり得ませんが…)で、「初回加算」(300単位)も期待できるケースであれば、初月の単位数は1038単位となります。

だがこれは、初月だけの話。2か月目以降は基本報酬の438単位のみとなります。

つまり「ちょっと手間はかかるけど、報酬は、要介護の方が要支援よりも倍以上も高い」という状況は、「委託連携加算」があったところでほとんど変わらないのです。これでは、介護予防ケアプランを受託したがる居宅介護支援事業所が増えるはずがありません。

そもそも、居宅介護支援事業所が要支援者を担当すると、利用者宅以外に発注元である包括にも何度も出向かなければなりません。そういう意味では、要介護者のケアマネジメントよりも業務負担が大きいとすら感じています。

「利用者が要介護から要支援になった!」喜ばしいことだが…

元々要介護だった利用者が改善して要支援となり、委託を受け継続して担当する場合であっても状況は同じです。負担という意味では、よりしんどい作業を強いられるといえるかもしれません。

ケアプランに記入されている内容は、ほぼ同じであるにも関わらず、要介護の様式から要支援の様式に書き直す必要があるためです。実際、それだけでも1~2時間の業務負担が発生します。

本来、要介護度が改善することはめでたいことです。ケアマネ個人としても、元気になった利用者を見ることは大きなやりがいにつながるでしょう。私だって、利用者の状態が改善すれば、うれしいに決まっています。

だが、利用者が要介護から要支援に変わるということを経営の視点から見れば、こうなります。

「報酬は半分未満になる上、書類は書き直さなければならず、契約も取り直さなければならない」

居宅介護支援の経営者にとって、要支援に変更になった利用者を担当し続けることは、「うれしい、喜ばしい!」だけでは済まない事なのです。

要介護すら受けられない居宅の人手不足…ありえない介護予防の受託促進

介護支援専門員実務者研修試験の受験者数も合格者数もピーク時より確実に減少しています。岸田政権が掲げた介護の賃上げからも、居宅介護支援事業所のケアマネは外されました。

こうした状況から、ケアマネ不足は確実に深刻化しています。実際、利用者の依頼があっても担い手がいないため、居宅介護支援事業所が対応できない地域も出てきています。要介護の利用者であっても、ですよ。

そんな状況で、包括からの要支援の受託を積極的に受けようという事業所が増えているとは、とても思えません。

包括は要支援者の基本報酬以外に、市町村からの運営委託費があり、常に一定の売り上げは担保されていますから、単価が低い要支援を数多く担当しても、経営は成り立つでしょう。だが、居宅介護支援事業所には市町村から運営委託費は支給されません。

包括の方からすればあまり気持ちの良い話ではないかもしれませんが、これが、居宅介護支援事業所の現実です。

田中紘太
株式会社マロー・サウンズ・カンパニー代表取締役、主任介護支援専門員。併設サービスを持たない居宅介護支援事業所「ダイバーシティ」を5事業所運営。在籍するケアマネジャーは35人。また、ケアマネ研修動画サイト「DiversiTV」も運営している。

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