激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座
さらなる締付必至の集合住宅向けのサービス…ケアマネはどう向き会う
- 2022/02/24 09:00 配信
- 激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座
- 田中紘太
-
2021年度の介護保険制度改正と介護報酬改定(21改定)は、介護保険制度の方向性を大きく変えるターニングポイントだったといえます。その方向性は、2024年度の介護保険制度改正・介護報酬改定(24改定)で、よりはっきりとした形で表れてくるでしょう。24改定を乗り切るためにも、居宅介護支援事業所は、今から制度改正の先を読み、できる限りの手を打たなければなりません。「生き残り講座」では、そのための具体策を独立型の居宅介護支援事業所を複数経営する株式会社マロー・サウンズ・カンパニーの田中紘太代表取締役が解説します。
自治体がサ高住でのサービス提供の指導に乗り出した!
21改定では、自治体がケアプランを通じてサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでのサービス提供を指導する仕組みが導入されました。
サ高住でのサービスについては、厚生労働省の検討会や国土交通省の担当課から「入居者の自己負担を伴わずにビジネスモデルが成立することから、介護保険や医療保険の不正請求の誘因となっているのではないか」「必要以上に在宅サービスの提供がなされているのではないか」などとの指摘が出ていました。
ケアプランを通じたサービス提供の指導の導入は、こうした状況を踏まえたものです。
指導対象となる事業所は次の要件を満たした事業所です。
1:区分支給限度基準額の利用割合が7割以上
2:その利用サービスの6割以上が訪問介護サービス
プラン見直しを求められたら…類似の他のプランまで再検討も
市町村は、届け出の対象となった事業所に、要介護度別に最も訪問介護の利用割合が高いケアプランなどを1件以上指定し、提出を求めます。
市町村から要請を受けた居宅介護支援事業所は、指定されたケアプランについて妥当性を検討し、訪問介護が必要な理由などを記載した上で提出しなければなりません。提出するのは、指定されたケアプランの「第1表」「第2表」「第3表」。アセスメントシートを届け出なければならない場合もあるのです。
なお、既に生活援助の訪問回数の多いことで検証対象となっているケアプランは届け出の対象外となります。検証を行った市町村とは別の自治体に住む人のケアプランも同様です。
提出されたケアプランについては、主に地域ケア会議での検証が想定されています。そして、 検証によって見直しが必要とされた場合、居宅介護支援事業所は、そのケアプランについて再検討するだけでなく、同様・類似の内容で作成したケアプランの内容についても再検討する必要に迫られます。当然、再検討に伴い、ケアプランを変更する場合は利用者の同意が不可欠。変更を強制することはできません。
なお訪問介護以外のサービスも各市町村の独自の基準に基づき、上記とほぼ同様の手順でケアプランチェックが行われます。
重すぎる業務負担、そのリスクと向き合うには…
現場の状況を鑑みれば、このケアプランチェックの意義自体は理解できます。
ただ、チェックの対象になってしまった事業所にとっては、恐ろしく重い業務負担が、突然、降りかかってくることになるわけです。正直な話、経営する側としてはたまったものではありません。
そのリスクを避けるため、サービス付き高齢者向け住宅の利用者はできる限り担当しないという事業所もあるようです。
とはいえ、地域の事情などからそうした対応ができない事業所もあるでしょう。ならば、新たなケアプランチェックというリスクとどのように向き合っていけばよいのかー。
残念ながら、このリスクをうまくすり抜ける裏道はありません。国や自治体の担当者の肩を持つような物言いで申し訳ないのですが、サ高住の入居者に対するケアプラン作成時は、今まで以上に事業者からの「注文」にシビアに向き合うしかないと思います。言いなりのケアプランを作成することなく、ケアマネ自身が適正にアセスメント・課題分析を行い、不必要な介護・医療系サービスは徹底的に避けましょう。
そしてサービスを位置付ける際には、なぜ、位置付けたのかをしっかり根拠を持って説明できるようにしておきましょう。根拠を持った説明の準備ができていれば、いざというときでも、比較的スムーズに対応できるはずです。
国の審議会などの議論の動向を思えば、ケアプランチェックについては、対象が拡大したり、項目が増えたりすることはあっても、今あるものがなくなることは、ちょっと考えられません。それだけに24改定の後に向け、今あるケアプランチェックへの対応は難なくこなせるくらいの力をつけておけると理想的です。

- 田中紘太
- 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー代表取締役、主任介護支援専門員。併設サービスを持たない居宅介護支援事業所「ダイバーシティ」を5事業所運営。在籍するケアマネジャーは35人。また、ケアマネ研修動画サイト「DiversiTV」も運営している。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。