オンライン時代のコミュニケーション、ケアマネが知るべきこと、やるべきこと
オンライン会議で「深い情報」を得るための工夫
- 2022/01/26 09:00 配信
- オンライン時代のコミュニケーション、ケアマネが知るべきこと、やるべきこと
- 丸山法子
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便利で合理的なオンライン会議が抱える課題
昨年暮れから始まったオミクロン株の感染は第6波となって、またたくまに全国を覆いつくしました。改めてオンライン会議の必要性を痛感されている方も少なくないのではないでしょうか。このシリーズでは、オンライン会議で活用したいコミュニケーションのヒントをお伝えしています。ぜひ今一度確認をし、お役立てください。
オンライン会議は、便利かつ合理的であるという点で大きなメリットがあります。ただ、テキパキとこちらが伝えたいことを伝え、時間がきたので終了ボタンを押すということだけでは、少し不安です。参加した人の中に、「会議で課題や取り組みの疑問点が見えかけていたのに、質問を考えている間に会議が終わってしまった」という人が出てしまうかもしれません。
残念なことに、会議中に見えかけていた課題や疑問点というのは、会議が終わってしまうと、記憶から失われがちなもの。そして、課題や疑問を忘れてしまうということは、改善のチャンスを失うことにほかなりません。せっかく会議を開いているというのに、改善につながる「深い情報」を見逃してしまうのは、とてももったいないことです。
「モヤモヤした課題」を把握するには…
こうした事態を防ぐためには、参加者の中にあるモヤモヤとした気がかりや潜在的な課題を引き出すためのアプローチが求められます。
ケアマネジャーがオンラインの会議中にできる具体的な工夫としては、「あなたが伝えたいことはこういうことですね」「つまり、こういったことを意図しているのですね」など、相手の発言を要約して伝え返す方法があります。お互いの理解を深め、信頼関係を築く上で効果的なテクニックですが、同時に参加者が感じている、モヤモヤとした気がかりや潜在的な課題を言語化し、把握する上でも有効です。
オンラインで潜在的な課題を引き出す、さまざまな「問い」
また、参加者の気がかりや潜在的な課題を引き出すために、ぜひ活用したいのが「問い」です。典型的な「問い」について、目的別に確認していきましょう。
1.あらゆるシーンを想定する「問い」
「例えばこういう場合はどうでしょうか?」「もし、こんなことが起きたらどう考えますか?」「○○さんのご意見との違いについて、どのように考えればよいでしょうか?」など、想定されるあらゆるシーンや、食い違う意見を整理するための質問です。こうした「考えさせる問い」には、一瞬、間をおく必要があったり、誰が答えるべきなのかと躊躇したりするものです。とくにオンラインでは「空気を読む」ことが難しいため、あらかじめ名指しをしたり、前置きをしたりするなどの配慮があるといいでしょう。「○○さんにお尋ねしますが、わかる範囲でお答えください」といった具合に。
2.ヌケモレを確認する「問い」
話し合いの全体がわかりやすく、具体化されていて、抜け落ちや、漏れもダブりもない内容にすることで、コミュニケーションがスムーズとなり、今後の支援内容がいきてきます。「これについてはどうですか?」「今まではこうでしたが、今後はこれでよいですか?」など、話し合いで意識していなかったような情報を確認することで、気がかりな点を表面化させることができます。
3.うやむやになりそうなことを念押しする「問い」
あらゆる展開が想定される支援の場面では、スタッフそれぞれに柔軟性や即応力が必要です。しかし、方向性や判断基準が定まっていないと、せっかくある対応力がいかされず、利用者のためになりません。あくまでも支援目標への道筋として、不確かさを確認し念押しするのは、ケアマネにしかできない問いです。「その考え方だと、具体的にどういうサービスに変更できそうですか?」「絶対避けてほしい点があれば聞かせてください」「どの段階で、誰に確認すればよいでしょうか?」「こういう場合でここまでなら任せてもらっていいということですね」などの問いで確認しましょう。
4.そのたびに確認をする「問い」
ひとつの協議が終わり次へ移る段階で、ほんとうにこれでいいのかどうかを確認します。「○○ということになりましたが、なにか質問はありませんか」などの確認です。ただ、「なにか質問はありませんか」では、漠然としすぎていて考えている間に時間が過ぎてしまい、結局そのままになってしまうもの。スピード感のあるオンライン会議ならなおさらです。答えやすい問いかけをすることで、相手の課題や気がかりを確認することができます。具体的には「他に確認したいことがあれば教えてください」「もう一度確認したいことがあれば聞かせてください」といった問いが考えられます。
「問い」を使う上で不可欠な理解と信頼関係
難しそうに見えるかもしれませんが、「問い」の活用は、オンラインに限らず日常的にも活用できます。
例えば、「もし、たまごが売り切れていたらどうしたらいい?」「カレーは辛口中辛甘口があるとしたらどれにする?」(あらゆるシーンを想定する質問)、「所長の誕生日のお祝いには、プレゼントするほかにどんなことがある?」「常勤、時短、派遣、ほかには?」(ヌケモレを確認する問い)、「コロナが明けたら海外旅行に行けるのね!でも、あけるってどういう状態のこと?」「がんばったらおこづかいをくれるっていうけど、お父さん、がんばったらってどうやってわかるの?」(うやむやを念押しする問い)などなど。
便利な「問い」ですが、注意すべき点もあります。それは、時にきつい物言いと受け止められてしまう恐れがあること。特にお互いの理解や信頼関係が十分ではない状況での「問い」は、会議や参加者への不信や、オンラインそのもののストレスにつながりがち。注意が必要です。
オンラインでもオフラインでも、コミュニケーションは双方向が基本。お互いわかりあうために、問いかけの言葉をもう一工夫して、課題の持ち越しのない有意義なオンライン会議にしていきましょう。

- 丸山法子
- 一般社団法人リエゾン地域福祉研究所 代表理事。人材育成、パーソナル・コーチングセッションなどの管理者研修、対人援助技術の勉強会、コミュニティづくりや地域福祉に関するセミナーなど年間100本以上の研修・セミナーを手掛ける。社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、生涯学習開発財団認定マスターコーチ
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