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ヘルパー不足を加速させる扶養の「罠」…ケアマネの賃上げも望み薄?!

「103万円の壁」がもたらす、思わぬ影響

いきなりだが私は、来年2月の介護職員の処遇改善策(9000円賃上げ)の実施により、ホームヘルパーをはじめとした介護人材不足が加速化しかねないと危惧している。扶養の「罠」にはまるのではないかと懸念しているのだ。

在宅の介護現場は非正規職員によって支えられているといってよい。しかも、短時間労働者が「施設」では23.6%対して、「在宅」では57.3%とかなりの割合となっている(表参照)。

正規職員なら、わずかであっても賃上げはもろ手を挙げて歓迎するだろう。だが、伴侶がいる非正規職員となると違う。「103万円の壁」を意識しながら勤務日数を再調整しなければならないという、めんどうくさい事態が待っているからだ。

周知のように「103万円の壁」とは、所得税が課されるかどうかのボーダラインである。また、この「103万円の壁」は配偶者の税制度にも大きく関連している。パートで働く介護職員の伴侶にとって、パートナーの年収が103万円を超えてしまうと配偶者控除を受けられなくなり、税金が高くなってしまうのだ。さらに社員のために「家族手当(扶養手当)」を支給している企業では、配偶者の年収が「103万円の壁」を超えているかどうかを支給の目安とするケースも多い。

介護職員の多くは、伴侶を持つパート層だから、常に「103万円の壁」を意識し、年間収入と勤務日数を計算しながら業務に従事している。「9000円賃上げ」によって時給や日給が引き上げられれば、逆に働く日数を減らそうとするはずだ。

その結果、来年2月以降、給与が引き上げられたことにより、逆に人手不足が深刻になりかねない。これこそが冒頭に指摘した扶養の「罠」だ。

実際、私は今回の「9000円賃上げ」について、何人かの介護事業経営者にインタビューしたのだが、「交付金を受け取ることになれば、非正規職員の時給も引き上げることになる。そうなるとパートの大半は、年間収入を103万円未満と決めているため、時給が上がった分は勤務日数を減らして調整することになるだろう」と予測していた。

ヘルパー確保がより困難に!

介護労働安定センターの「令和元年度介護労働実態調査」によれば、ケアマネの正規職員は85.2%、非正規職員は14.8%となっており圧倒的に正規職員の割合が高い。その上、居宅介護支援のケアマネは「9000円賃上げ」の対象でもないので、扶養の「罠」によってケアマネの人材不足が深刻化することは、まずないだろう。

しかし、来年2月以降、ホームヘルパーのやりくりがより難しくなるだろう。すでに述べた通り、ホームヘルパーの多くが稼働日数を減らすことが予測されるためだ。ケアマネは来年2月以降、扶養の「罠」によってヘルパー確保がより難しくなることを覚悟し、できる限りの手を打っておくべきだ。

「10月以降、加算で継続」では、24改定でもケアマネの賃上げは困難…

今回の「9000円賃上げ」は来年9月までの臨時の交付金だ。

現段階では「9000円賃上げ」を介護報酬に取り込むと見込まれている。具体的には来年10月に臨時の介護報酬改定を実施し、従来の加算に盛り込むのではないだろうか。その際、現行の「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」も、統合化もしくは見直しが検討されるかもしれない。

しかし、交付金から加算方式に移行されれば、さらにケアマネの賃金の引き上げは遠のくと考える。なぜなら、前倒しで臨時に介護報酬改定が実施されてしまうと、それに続く2024年度の介護報酬改定をめぐる環境はより厳しくなるからだ。その分、新たなケアマネへの財配分が難しくなるだろう。

非正規の介護職の給与は、「103万円」の壁の外に

前回の寄稿でも指摘したが、介護職員の賃上げを試みる政府の姿勢自体は評価したい。実際、正規職員にとってはわずかでも年収が上がることで「やりがい」を見出せるであろう。

しかし、既に述べた通り、わずかな賃上げはかえって介護人材不足を深刻化させてしまう懸念もある。また、政府が示す程度の賃上げでは、他業種まで含めた「労働市場」での人材確保競争に勝つことは難しい。

こうした状況を抜本的に解決するには、たとえば、非正規の介護職員の収入は特例措置として所得とみなさず、「103万円」の壁に影響しないシステムも検討すべきだと思う。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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