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国の「適切なケアマネジメント手法」、見落とせない限界も

5年かけて完成した「手引き書」

このたび厚生労働省は、「適切なケアマネジメント手法」と銘打った手引き書を公表し、その活用が呼びかけた(介護保険最新情報vol.992)。

昨年度の老健事業として、日本総合研究所による委託調査事業として作成されたものだが、調査事業は2016年度から開始されているため、ほぼ5年がかりの成果物となる。

この事業の目的は、次の通りだ。

「介護支援専門員の先達たちが培ってきた知見の中で共通化できる知見に着目し、それを体系化することにしました。これが本冊子で取り上げる『適切なケアマネジメント手法』です」(日本総合研究所『適切なケアマネジメント手法」の手引き』令和3年3月)。

ちょっと大げさにいうなら、この手引き書によって一定の情報を得た介護支援専門員なら、誰もが共通の「仮説」を打ち出すことができるようになり、「適切なケアマネジメント」も実施できる、という代物らしい。

ちなみに手引き書では、「ケアマネジメントの標準化」とは違うということも強調されている。

「基本ケア」と「疾患別ケア」の2段構成

手引き書は「基本ケア」と「疾患別ケア」といった2段階構成となっている(図)。手順としては、「基本ケア」を踏まえた上で、本人の状態に応じて「疾患別ケア」を活用することが推奨されている。

このうち「基本ケア」とは、「本人の生活の継続を支援する基盤となる支援内容で、高齢者の機能と生理を踏まえたケア」と位置付けられた。

一方、「疾患別ケア(脳血管疾患、大腿骨頸部骨折、心疾患、認知症、誤嚥性肺炎の予防)」は、「疾患に特有な検討の視点あるいは可能性が想定される支援内容を整理しています」(日本総合研究所『適切なケアマネジメント手法」の手引き』令和3年3月)。

「手引き書」を活用する具体的なメリットは?

この2つの手法を「アセスメント」「ケアプラン原案作成」などに取り組むことで、リスクを見極め、先回りしてケアを調整することができるという。そして、結果として、本人や家族等のQOLの維持・向上が図れるという。

さらに、手引き書の手法を活用することで、(1)支援内容やアセスメント項目の"抜け漏れ"を防ぐ(2)他の職種との協働や役割分担が進めやすくなる(3)ケアプランの見直しをしやすくなる―といったメリットも期待されるのだとか。

なお、医療的ケアに該当しない場合には、「基本ケア」のみを活用することになる。

手引き書については、わかりやすく紹介した「動画」も公表されている。

【関連記事】
【介護保険最新情報vol.992】動画でも紹介!適切なケアマネジメント手法の活用法

「標準化」とは、位置づけられていないが…

既に述べた通り、手引き書は「標準化」をめざすものではなく、個別性を重視しながらケアマネジメント手法を普遍化していくものらしい。

だが、私は、この手法を活用していくと、一定程度の「標準化」が実現してしまうと考えている。

「標準化」することが悪いというわけではない。この手引き書にしても、一定のスキルを修得する「教材」としては有益だ。

だが、この手引き書で身につけることができるのは、あくまで1つのツールを使いこなすためのスキルだ。ケアマネジメントの骨格となる技法を身につけるには限界がある。以下、その点を少し深掘りしたい。

「手引き書」の限界…「フェルト・ニーズ」との統合

手引き書は、全体を通じて「医学モデル」に近いアプローチが用いられている。この手法自体は重要だし、それによって得られる「ノーマティブ・ニーズ」(専門職が把握するニーズ)も大切な情報だ。

だが、これだけでは足りない。介護サービスの「アセスメント」「プランニング」「モニタリング」においては、「ノーマティブ・ニーズ」と利用者による「フェルト・ニーズ」(感覚的ニーズ)との統合こそが重要である。

もちろん、今回の手引き書は「基本ケア」を前提としているなど、医学モデルだけに特化した支援法を採用しているわけではない。しかし、それでも「フェルト・ニーズ」と専門家の視点からとらえた「ノーマティブ・ニーズ」との統合を考える点については、限界を感じる。

それでも、こうした手引き書が厚労省から公表されると、多くのケアマネが手引き書の段取りだけで、支援を実施してしまうことが懸念される。

繰り返しになるが、手引き書を活用すれば、医学的視点から「ノーマティブ・ニーズ」を把握したり、それに基づいてサービス提供のあり方を検討したりするノウハウを修得することはできるが、それだけでは十分ではない。「フェルト・ニーズ」も鑑みながら、ケアマネジメント過程を踏まえていくことを忘れてはならないのだ。

効能と限界をしっかり認識し、積極的に活用を!

抽象的に聞こえるかもしれないが、利用者や家族の「価値観」は百人百様だ。そしてケアマネは、それぞれの「価値観を重視したケアマネジメント」を行わなければならない。だから介護では医療のような画一的な支援体系が構築しにくい。

当然のことだが、「価値観を重視したケアマネジメント」=「御用聞きケアマネジメント」というわけではない。利用者や家族などの状況や生きてきた背景を考え、より適切なプランを提案することこそが「価値観の重視したケアマネジメント」だ。利用者の都合と欲求だけしか省みない「御用聞きケアマネジメント」とは、まったく違う。

「価値観を重視したケアマネジメント」で、本人の「フェルト・ニーズ」をしっかり把握すること。それこそがケアマネジメントの第一歩だ。そこに、専門家が分析した「ノーマティブ・ニーズ」を統合することができれば、より理想的なケアマネジメントを実現できる。

そして、「ノーマティブ・ニーズ」を把握する上で、今回の手引き書は大きな力を発揮する。

この効能と、繰り返し述べた限界をしっかり把握した上で、「適切なケアマネジメント手法」を大いに活用してほしいと思う。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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