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「2割拡大」or「プラン有料化」―次期改正で“究極の選択”か?

2割負担の対象拡大を財務省が再提起

今年4月15日、財務省は、介護保険サービスの利用者負担の変更を求める意見を公表した。利用者負担を原則2割とするか、2割負担の対象者を拡大する必要があると主張している。

利用者負担の割合拡大は「ケアプラン有料化」と同様、何度となく財務省が実現を求めてきたことだ。ただ、「ケアプラン有料化」と異なる点は、少しずつだが財務省側の意図が制度改正に反映されている点だろう。

ならば、2024年度の介護保険改正において、2割負担の対象者は拡大されるだろうか―。ズバリ、その可能性は50%と予測する。

ただし、「2割負担の対象拡大」が実現すれば、「ケアプラン有料化」は先送りされるだろう。逆に「ケアプラン有料化」が実現してしまえば、「2割負担の対象拡大」は見送られるはずだ。

医療の負担の「線引き」が介護に適応されたら…

「2割負担の対象拡大」か「ケアプラン有料化」か―。今回は、この“究極の選択”のうち、財務省が求める「後期高齢者医療における患者負担割合の見直しを踏まえた、2割負担の対象拡大」について、少し掘り下げてみたい。

まず、導入されることが決まった医療保険制度の改正についておさらいする。先の国会で22年秋から、経過措置があるものの、一部の75歳以上の医療費窓口自己負担割合を1割から2割に引き上げる法案が成立した。

引き上げの対象は単身者で年間収入200万円以上、複数世帯では320万円以上。75歳以上の所得上位層約30%が、医療費の窓口負担が2割ないし3割となる。

この医療の「線引き」にあわせて介護の2割負担対象者が拡大されると、ちょっと大変なことになる。

介護の場合、「2割ないし3割負担」となる基準は、年収280万円以上となっている。該当するのは要支援・要介護認定者の約9%だ。=表=

表:介護保険自己負担2・3割層の割合
3割負担 4% 単身の場合年収340万以上
2割負担 5% 単身の場合年収280万円以上
1割負担 92% 上記以外

財政審「資料:社会保障等」2021年4月15日65頁から作成
※少数点の関係で100%にならず

だが、この基準が年収200万円以上となると、その対象者は、一気に増えるだろう。なにしろ、厚生労働省の2018年の国民生活基礎調査によれば、高齢者世帯の所得の「中央値」(※注1)は260万円なのだから。実際に負担割合が増える人がどのくらいいるかについては、より詳細な分析が必要だが、今の何倍もの人が2割分の支払いを求められるのは間違いのないところだろう。

懸念される利用控えの増加

負担割合が1割から2割になれば、利用者は倍の支払いを求められることになる。しかも新たに2割負担の対象となりそうな人は、今の対象者に比べて年収がかなり低い。

それだけに、仮に年収200万円以上という基準で負担割合が変更されれば、多くの人がサービスの利用控えに走るだろう。特に、医療も介護も負担が倍増する「年収が200万円程度で、在宅で生活している75歳以上の要介護者」は、厳しくサービスの利用を見直すはずだ。「どうやっても出せないものは出せない。介護は最低限のサービスだけでいい」といったような、極端なプラン変更を要求されるケアマネも増えるはずだ。

中長期的には「施設志向」の高まりと給付費の増大も

もしかすると財務省は、そうした状況を期待しているのではないか。つまり、利用控えによる介護給付費の抑制効果を期待しているのではないか。

だが、私は「2割もしくは3割負担の基準を200万円以上」とすることは、中長期的には、施設で介護を受ける人を増やし、介護給付費を増大させる危険性をはらんでいると考えている。

多くの要介護者は、住み慣れた家で、家族とともに暮らし続けたいから自宅にとどまり、居宅サービスを受けている。だが、経済的理由から在宅にとどまっている人も、決して少なくはない。「特別養護老人ホームやグループホームには空きがないし、有料老人ホームは高額すぎる。しばらくは在宅で生活しよう」という人が、一定数存在するのだ。

こうした人たちが2割負担になってしまえば、「そんなに高いお金を払うなら、少しがんばって有料老人ホームに入ろう!」と考えても不思議ではない。なにしろ施設では、一定の金額さえ支払えば、介護と見守りサービスは受けられる。食費・光熱費・家賃といったもろもろの生活費も、決まった額だけ納めればよく、日々のやりくりに頭を痛める必要もない。

つまり、経済的理由だけで施設を敬遠していた要介護高齢者にとって、利用者負担の増加は、施設入所を決断させる呼び水になりかねない。

“究極の選択”選ばれてしまうのは?

既に述べた通り、24年度の介護保険制度改正に向けた議論では、「ケアプラン有料化」か「2割負担の対象者拡大」かの、“究極の選択”がテーマとなる恐れがある。

当然ながら、私は両方とも反対の立場だ。介護や医療を管轄する厚労省も、いずれの導入にも慎重な姿勢を示すだろう。だが、財務省からポストコロナの厳しい財政状況を突き付けられたとき、厚労省は、その実施を断固拒否し続けることができるだろうか?特に介護報酬全体の引き上げの条件としていずれかの施策の導入を求められた場合、それを拒むことができるだろうか?

やはり、24年度の介護保険制度改正に向けた議論では、「ケアプラン有料化」か「2割負担の対象者拡大」かの“究極の選択”が議論される可能性は高いと思う。

ならば、この“究極の選択”を迫られた場合、どちらが実現してしまう可能性が高いのか―。おそらく、実現するのは「ケアプランの有料化」だろう。理由は簡単だ。「年収200万円以上で2割負担」のほうが、影響をうける人は多く、政治問題化しやすいからだ。

(注1) 複数の数値データを小さい順番に並べた時に、真ん中に位置する値

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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