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※この記事は 2021年3月11日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

ケアマネ業務も大きく変る!~「LIFE」始動を考える~

新データベース「LIFE」とは

「科学的介護の本格始動」。2021年度の介護報酬改定の目玉施策の1つだ。その根幹をなすシステムは「LIFE」(Long-term careInformation system)と呼ばれる。

「LIFE」は全国の介護事業者から提出された利用者の状態などのデータに基づいて構成されるシステムで、利用者の状態を表すデータ「CHASE」と通所・訪問リハビリサービスに関するデータ「VISIT」を統合したものだ。

もちろん、データを集めるだけでない。全国から集まったデータを各事業所にフィードバックし、それに基づいた介護サービスを提供してもらうことで、PDCAサイクルに基づいた取り組みを推し進め、要介護度やADLの維持・改善を目指す。

加算で後押しされる「LIFE」の活用

「LIFE」の活用は、加算によって後押しされる。対象サービスは介護施設(特定施設入居者生活介護含む)と通所介護(地域密着含む)、通所リハビリ、訪問リハビリ、小規模多機能、看護小規模多機能だ。もちろん、要支援者も対象だ。また、具体的な介護サービス項目は、主に「認知症ケア」「口腔ケア」「ADL値やリハビリ改善度)」「栄養管理」となっている。

該当する事業者は、利用者情報を入力してデータを厚労省に送らなければならない。だが、それだけでは不十分だ。入力後、フィードバックされたデータを基に介護手法の改善・見直しを図っていかなければならない。このPDCAサイクルをおろそかにすると、実地指導等で指摘され、介護給付費の返戻の可能性が生じる。

加算はなくても無縁ではいられない居宅介護支援

一方、訪問介護や福祉用具といった介護事業者は、科学的介護に関する加算の対象にはなっていない。居宅介護支援も同様だ。

しかし、ケアマネの業務内容は、「LIFE」導入で大きく変っていくはずだ。

科学的介護の本格始動により、通所介護や通所リハ、訪問リハなどでは、データに基づいたサービス提供が求められるようになる。当然、これらの介護サービス提供にあたっては、ケアマネもデータを基にケアプランを考慮していかなければならなくなる。

ただ、「LIFE」からのフィードバックのデータを把握しているのは、通所介護や通所リハといった介護事業者だ。

そのため、科学的介護に基づく介護サービスが普遍化していくと、これまでケアマネ主導で進められてきたサービス担当者会議が、フィードバック情報を得ている事業者が主導するようになることが想定される。

さらに「LIFE」への入力やフィードバックに伴い、新たな業務も生じるだろう。特に既述のフィードバックが的確になされているか否かの確認は重要だ。通所介護計画や通所リハビリ計画などでは、これまで以上に厳しい確認が求められるはずだ。

当然ながら、利用者への説明も重要になる。例えば、自己負担が増えることを納得せず、加算の算定そのものに理解を示さない利用者も出てきた場合、どうするのか―。こうしたケースも想定し、該当する事業所と連携しながら対応することも必要になるだろう。

ケアマネが知っておくべき科学的介護の限界

最後に科学的介護の限界についても指摘しておきたい。

介護は生活を支えるサービスだ。そして、生活を支えるための具体的な方法は、生活する人の数だけ存在する。

この点、目的が病気の治療に絞られている医療とは大きく異なる。医療は、その効果を数値で評価することも簡単だし、取り組みの内容を普遍化・一般化するもの容易だ。だが、目的を絞りにくい(というより絞れない)介護は、取り組みの効果を数値化することが、そもそも難しい。

だから、介護では医療と同じような位置づけでデータを扱うことはできないのだ。

科学的介護の促進には異論を唱える人はいないだろう。サービス担当者会議などで、数字に基づいた議論を促進するのも大切なことだと思う。だが、特にケアマネはデータの限界を強く意識し、科学的介護と向き合ってほしい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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