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現場レポート

元ケアマネ!社会保障審議会介護保険部会委員の結城康博氏に聞く(1)

厚労省の諮問機関である社会保障審議会は、2012年度の介護保険制度改正に向けた論議を開始しています。介護報酬・診療報酬のダブル改定として注目を集める次期改定を控え、元ケアマネジャーであり、現在、社会保障審議会委員の結城康博氏に現状の課題や将来への提言を聞きました。

―社会保障審議会メンバーの中で、ケアマネジャーから学識者に転身した経歴が目を引きます。

公務員の福祉職として最初の赴任が障害者福祉施設のデイサービスで5年間勤めました。在宅介護支援センターに異動し4年間ケアマネジャーをやり、20件前後のケアプランを担当しました。最後の1年間が地域包括支援センターです。その後、知人の誘いで母校の大学職に転身し、大学の系列の社会福祉法人で非常勤ケアマネジャーを兼務していたのですが多忙のため、2009年から現在の研究職に専念しています。ケアマネジャーとしては6年間のキャリアです。

―早速ですが、2000年の創設から10年経過した介護保険制度の振り返りからお聞かせください。

元ケアマネの視点から言うと、ケアマネジャーが抱える一番のジレンマは、自分の会社の利益と利用者ニーズにどれだけ応えるかの板ばさみだと思います。ケアマネジャーも事業所に付属している以上、利益を上げることが求められるし、独立したとしても生計を立てるには難しい。

ケアマネジャーを悩ませている背景には、「介護保険は競争原理なので介護サービスが高齢者に行き届くはず」という制度設計のミスがあり、そのしわ寄せがケアマネジャーに来ているのです。介護サービスが行き届かないのは、ケアマネ個人のマネジメント能力が低いせいだという人もいますが、制度設計の失敗による要素と、ケアマネ個人の資質によるものと二方面での検証が必要です。

制度発足から10年が経ち、高齢者に提供されるサービスの種類や量は増えましたが、慢性的な施設不足、低待遇による介護職員の人材難、拡大する保険料の地域格差、認知症対策など課題は山積みです。制度全体で見渡すと介護保険の枠組みの中だけで対応するには限界があります。

―では、介護保険制度だけでカバーすることが無理なら介護保険外として、どんなシステムが必要ですか?

公的な「措置制度」に一部戻しては

介護保険制度創設前は老人福祉法にもとづき、税金(公費)によって賄われていた「措置制度」だったのですが、もう一度、措置制度に一部戻してもいいと思います。「措置制度」は行政が高齢者の実態を判断した供給主体の中心であったため、競争原理が働かず、サービスの質も量も限られるとされ、のちに介護保険制度になりました。

しかし、現状ではサービスを利用したくても経済的に利用できない低所得者層や認知症などで判断能力がない人、独居高齢者などがいます。これらの社会保険の契約主義に乗らない高齢者をケアマネジャーが社会保険枠内で支援するということに、ケアマネジメントの限界があるのです。社会保険方式の網からこぼれ落ちてしまう方に救貧的なサービスを提供するには、公的な措置制度の方がうまくいくと思います。

ただし、このような予算獲得は難しいのが実態です。そのため、暫定的に地域支援事業などの枠を活用しながら、介護報酬によるデメリットを補う手法も考えられます。また、このような地域支援事業の弾力化は、「100歳高齢者における身元不明問題」などに対しても、見守り活動・事業を強化することが可能になるのではないでしょうか。

契約という「フィクション」で現場は動いている

ケアマネジャーなら少なからず経験があると思いますが、利用表・別表といろいろな書類に利用者のハンコをもらわなければならない。もちろん説明はしますが、書類を前に実際に利用者はその場でよく理解できずに押印している人もいるのではないでしょうか。ハンコをもらうケアマネジャーやサービス提供責任者にとっては「なんのための山のような書類か」と、ジレンマになっている。“契約”というフィクションで現場は動いているのです。こうした現場を理解したうえで、その乖離を埋める制度改革を今後すべきです。

―大学という、教える側の視点から介護職の資質・キャリアパスについてはどう考えますか。

ヘルパーや介護福祉士の“あがり職場”が、部分的にケアマネジャーになっているのが現状です。ヘルパーや介護福祉士の給与が安いため、ケアマネジャーをゴールに見据えて移行していくのですが、それがケアマネジャーの質、専門性の問題にもつながっていると思います。ヘルパーからケアマネジャーになるのが悪いわけではありませんが、給与のステップアップで移行せざるを得ないのは問題ですね。

求められる資質は「普通の感覚」

私はケアマネジャーの仕事は、ある部分ソーシャルワーク(相談業務)だと考えます。利用者が抱える問題の解決・調整を援助するには、時には家族相手に芝居を打ったりすることも必要な職です。そうしたコミュニケーションが苦手で、むしろ現場でのハンドワークが得意というヘルパーさんが、無理にケアマネ業務に就けば当然弊害も出るでしょう。ただし人間関係がカギとなる職種ですから、「社会性」を持っていることが何より大事です。ケアマネでもガチガチの専門職出身で利用者の意見を聞き入れないケースを目にしますが、対人援助職としてときには融通をきかせる能力も欠かせないスキルです。

これはいずれ社会保障審議会でも提案しようと思っているのですが、最近、議論を重ねている医療行為の解禁についても、介護福祉士はこういうことをできるが、ヘルパー2級はここまでと線引きをすべきです。人材不足の在宅では難しいかもしれませんが、最低、介護保険3施設ではヘルパー2級の有資格者による処置は必要だと思います。

平均年収400万円が目標

最終的には、ケアマネジャー、ヘルパー、介護福祉士どの職種であっても平均年収400万円を担保さえすれば、人手不足や専門性の問題はある程度、環境が整えられると思います。年収400万円をどう実現するかは基本的には“介護報酬”ということになりますが、それには老人福祉制度を活用したサービス提供や国民的コンセンサスを得た税金・保険料引き上げを検討することが必要です。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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