

小濱道博の介護経営よもやま話
※この記事は 2020年12月25日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
実務激震の大改定!ケアマネへの影響は?
- 2020/12/25 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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社会保障審議会介護給付費分科会は12月23日、来年春の介護報酬改定の具体的な内容を盛り込んだ意見書(審議報告)をまとめた。今回の審議に当たって、強く語られたのが「財政中立」という言葉だ。
来年春の介護報酬改定は、0.7%の引き上げとなることが決定。これに先立つ分科会の審議においても、基本報酬の上位区分や加算の新設など、プラス改定を予感させる論点が多数出ていたが、例えば、基本報酬の上位区分を新設するにしても、当然、原資が必要となる。その原資を確保するため、既存の区分の単位を引き下げ、上位区分に上乗せする手法、それが「財政中立」だ。
多くの事業所・施設が算定する「サービス提供体制強化加算」にも上位区分が新設されるが、従来の「区分II」の要件である「勤続3年以上」が「勤続7年以上」に厳格化されることで、算定できなくなる事業所・施設が出てくる。
一方、グループホームなどでは、現在ユニットごとに1人以上となっているケアマネジャーの配置基準が、事業所ごとに1人以上に緩和されるが、これを見て、「人件費が削減できる」と喜ぶのは早計だ。
まず、ケアマネ1人が余ることになれば、その職員をどうするかという問題が発生する。さらに、基本報酬の単位数は原則、経費の積み上げで決まっているため、2ユニットの場合、ケアマネ1人分の人件費に相当する報酬が引き下げとなるだろう。
このように、上がる報酬があれば下がる報酬もあり、それによって財源は捻出される。木を見て浮かれることなく、「森を見る視点」を忘れてはならない。
業務継続計画、一人ケアマネへの対応が課題
多くの加算の算定要件の見直しに伴い、計画書などの様式も変わる上、運営基準の改正によって、全サービス事業者に感染症対策が義務付けられる。さらに、無資格の職員の認知症基礎研修の受講も必須となるなど、来年春の改定は、実務的には激震の大改定なのだ。
感染症対策では、感染症対策委員会の設置、指針の整備、研修・訓練(シミュレーション)の実施が、3年の経過措置期間を経て義務化される。また、感染症や災害の発生時に備え、業務継続に向けた計画の策定なども、2024年度から全サービス事業者に義務付けられる。これについては、一人ケアマネ事業所への対応が課題となるであろう。
業務継続に向けた計画の策定、すなわちBCP(事業継続計画)は、どこかのひな型をコピペして作れば良いというものではない。事業所の理念や地域特性、利用者の状況など、個々の事業所の特性に合わせて作る必要があり、専門のコンサルタントを入れると、多額の費用と時間を要する。だからこそ、3年間の経過措置が設けられているのだ。
国は今回、介護事業者にマネジメントの徹底を求めてきた。つまり、経営者としての覚悟と責任が問われているのだ。今後、経営者がどのような視点を持つのかが、より重要になっていくだろう。
新たな利用者への説明義務、効果は疑問
来年春の改定では、新たなケアプラン点検・検証の仕組みも創設される。国保連合会のシステムなどを活用し、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ訪問介護が利用サービスの大部分を占めるなどのケアプランを作成する居宅介護支援事業者を、事業所単位で抽出するというもので、来年10月から導入される。
利用者の意向や状態・状況に合った訪問介護の提供につながるケアプランを作成してもらうことが狙いだが、サービスの利用制限にならない仕組みにする必要がある。
なお、この仕組みは、サービス付き高齢者向け住宅などに併設された居宅介護支援事業所にも適用される。いわゆる“囲い込み”がチェックされ、作成されたケアプランが、利用者の自立支援につながっているかどうかなどが問われることとなる。
さらに、ケアマネジメントの公正中立性を確保する観点から、下記の2点について、ケアマネから利用者への説明を義務付けるとともに、居宅介護支援事業所側は、それらを「介護サービス情報公表制度」で公表することが必須となる。
- 前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合
- 前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与のサービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合
要は、その居宅介護支援事業所のケアプランが、どれだけ特定のサービスや事業所に偏っているかを外部に示すことが目的だ。
これに関しても、高齢者住宅に併設する介護事業所の“囲い込み”対策の意味合いが強いが、どれほどの効果があるのかは疑問だし、介護給付費分科会の委員からも、それを指摘する声が上がっていた。ケアマネジメントの中立性の確保にどう影響を与えるのかは、今後の検証を待ちたい。
包括の新加算、委託料増のスキーム見えず
地域包括支援センターが、予防ケアマネジメントを外部委託しやすい環境の整備を進めるため、委託先となる居宅介護支援事業所との情報連携などを評価する加算、「委託連携加算」(仮称)も新設される。
国が外部委託を促進するのは、地域共生社会の実現に向け、「重層的支援体制総合事業」が創設されたことが背景にある。
同事業は「断らない相談窓口」の構築を目指したものだが、この創設に伴い、地域包括支援センターが「8050問題」などの相談業務を引き受ける形となり、業務量も増える。つまり、包括の業務負担を減らすため、予防ケアマネジメントの外部委託を促進する方向性が示されたのだ。
外部委託を進める上で、居宅介護支援事業所への委託料の低さが課題として挙がったため、介護給付費分科会での検討の末、新たな加算が創設されることになったのだが、実はこの加算、居宅介護支援事業所は算定できない。予防ケアマネジメントの介護報酬は、あくまで包括が算定するものであり、居宅介護支援事業所は対象外だからだ。
加算を創設する目的が、委託料の引き上げにあるとすれば、加算相当分を委託料に上乗せできる仕組みにする必要があるが、現時点でそのスキームは見えない。今後の官報告示やQ&A(疑義解釈)の内容を注視してほしい。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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