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小濱道博の介護経営よもやま話小濱道博の介護経営よもやま話

小濱道博の介護経営よもやま話

居宅にも関連、負担軽減策のポイント解説

制度改正や介護報酬改定のたびに書類の種類が増え、事務負担が年々増している感が強い。事務負担の増加は、介護事業者のみならず、行政機関にとっても頭が痛い問題だ。その現状を見直すため、厚生労働省は昨年夏、社会保障審議会介護保険部会の下に「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」を設置し、改善に取り組んでいる。

昨年12月、専門委は中間取りまとめを公表した。その内容は、総じて行政手続きの簡素化に関する項目が多い印象を受ける。日頃の業務における計画や記録などの削減については今後に期待するとして、今回は、居宅介護支援にも関連すると思われる部分をピックアップしてご紹介したい。

1.押印

押印については、本連載の第3回でも取り上げた、京都府八幡市における印鑑の不正使用の問題が記憶に新しい。日本は印鑑文化が根強く残っており、何かにつけて押印を求められるのはそのためだ。

しかし、タブレット端末上でサービス提供記録を作成したり、パソコン上で書類を保管したりするなど、電子データ化が進む現代において、印鑑文化は、国が進める業務のICT化の弊害にもなっている。

中間取りまとめでは、指定申請と報酬請求に関する文書の押印について、以下の内容を広く周知するとしている。

  1. 申請者が提出する介護報酬等の請求関連申請については、押印を求める。具体的には、原則として、指定(更新)申請書、誓約書、介護給付費算定に係る体制等に関する届出書の3点のみを対象として、押印は正本1部に限る。
  2. 付表や添付書類への押印は原則不要とする。
  3. 押印した文書をPDF化し、電子メール等により送付することも可とする。

なお、オンラインでの電子署名など、その他の本人確認手続きの可能性については、今後のICTなどの活用と併せて検討する必要があるとしている。

これは、現時点における押印に関する国の基準と考えて良いだろう。ただ、広く周知するとされているだけで、すぐに全国の自治体で実施されるとは言い難い。実務を行うに当たっては、所轄の役所に確認する必要がある。

2.原本証明

新規許認可や指定更新などの申請手続きを行う際、自治体から管理者や従業者の資格証などの原本証明を求められる場合がある。しかし、厚労省がアンケート調査を行ったところ、報酬請求に関する文書について、7割超の自治体では原本証明を求めていないことが確認された。

このため中間取りまとめでは、「原本証明がなくとも事務に支障はないと考えられる」と結論付け、原則として添付書類への原本証明は求めないこととし、今後、その旨を周知するとしている。ただ、依然として原本証明を求める自治体も存在することから、こちらについても、所轄の役所に確認しながら手続きを行う必要があるだろう。

3.書類の提出方法の簡素化

新規許認可や指定更新、変更届などの申請書類は、事業所の担当者が役所に出向いて提出することが求められる。

手続きの内容によっては、事前協議などで直接役所の担当者とやり取りする場面も出てくる。特に新規許認可の際は、事業所の実態や信用を確認することも重要な判断基準となるため、面談の機会を設ける必要もあるだろう。

一方、変更手続きなどの場合は、書類の持参や面談が必要とは言えないケースも多い。この点について、中間取りまとめでは、以下の取り扱いについて周知を図るとしている。

  1. 新規の指定申請では、事前説明や面談の機会などを含め、一度は対面の機会を設けることを基本とする。しかし、複数の事業所を運営している事業者の追加事業の許認可申請の場合は、さらなる対面を必須としないことなどで対応する。その際、事前説明や面談を経ているにもかかわらず、再度持参を求めたり、誤記や添付漏れといった書類の補正で役所を再訪問させたり、事業所側の手間が発生しないよう留意する。
  2. 更新申請は原則、郵送・電子メール等による提出とする。ただし、指定有効期間中に実地指導で多くの問題が指摘されたり、事故やクレームが多かったりするなど、あらかじめ定められた条件に該当する場合は、例外的に対面による提出を求める。
  3. 変更届についても、原則、郵送・電子メール等による提出とする。
  4. ただし、いずれの場合も、持参を希望する事業者については、持参できることとする。

居宅介護支援については、2018年4月以降、申請書類を提出する窓口が都道府県から市町村に移ったが、主要都市以外の市町村の多くは、まだ郵送や電子メールなどでの提出に至っていないのが現状だと思う。事務手続きの際は、やはり役所の窓口と確認しながら進める必要がある。

4.今後1~2年以内の取り組み

実地指導のペーパーレス化について、専門委側は、自治体の取り組みが不十分との認識を強く持っていることが、中間取りまとめから読み取れる。

紙で保管する文書の削減がICT化の大きなメリットだが、実地指導の際、紙の書類の提示を求める自治体も多い。これでは、多額の設備投資を行ってまでICT化に踏み切った意味が無くなる。この点も、ICT化が進まない要因の一つとなっている。

このため厚労省は、事業所が電子データで書類を管理している場合、パソコンの画面上で必要書類を確認するなど、ICT化を進める事業者に配慮した実地指導の方法を検討するよう、自治体側に依頼するとしている。

5.取り組みを徹底させるための方策

専門委の審議では、小規模事業者を中心に、ICTへの対応が困難な事業所がある点に留意すべきとの意見もあった。事業所内でICT化を進めるためには、多額の設備投資だけでなく、導入した機器の操作方法の指導や周知も必要だ。しかし、小規模事業者の場合、そのための人件費をかけることができず、専任の職員を配置することなどが難しい。

ICT化による手続きの簡素化や標準化を進めるためには、小規模事業者への支援策を併せて行うことが不可欠だ。今後は、ICT化を実現するための補助金などの支援に期待したい。

6.負担軽減策はICT化促進とセット

ここまでお読みいただいておわかりの通り、中間取りまとめには、紙の書類の簡素化や手続きの簡略化に関する記載は少ない。事務負担軽減策は、ICT化の促進とセットになっているのだ。介護業界におけるICT化の流れは、もはや避けられないと言っていいだろう。

国は、データベースの活用で情報の共有化を図っていくことが、医療・介護分野の未来像だと考えている。AI(人工知能)によるケアプラン作成支援を柱とした科学的介護もその一環だ。そして今後、介護保険制度の改革と併せて、実務上の運用システムがさらに大きく変わる可能性が高い。国、自治体、医療機関、介護事業者、保険者、国民を一体的につなぐ、新たなシステムが構築されようとしている。

その実現のためには、自治体ごとにバラバラに構築されている、“ローカルルール”満載の事務手続きを整理・整とんし、スムーズに流れるよう再構築する必要があり、今まさに、そのための作業が進められていると考えられる。今回の事務負担軽減策を考える際は、そうした視点を忘れないでいただきたい。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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