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小濱道博の介護経営よもやま話小濱道博の介護経営よもやま話

小濱道博の介護経営よもやま話

印鑑の無断使用は他人事ではない

居宅で印鑑を無断使用、2610万円返還へー京都・八幡市」―。11月1日のケアマネジメント・オンラインの記事は、介護業界に大きな衝撃を与えた。行政処分の対象が社会福祉協議会だったこともあるが、「印鑑を無断使用」の部分が非常にショッキングだ。

大きな声で言えなくても、判断力の欠如など、利用者から印鑑をもらえない状況の中、ケアプランの同意などで、仕方なく手持ちの三文判を使用したり、その誘惑に駆られたりしたことのある方は、意外と多いのではないだろうか。

増える遠方家族への説明・同意

近年は核家族化が進み、少子化も相まって、家族と同居する利用者は減少傾向にある。利用者本人が、認知症などで判断能力を欠く場合、長男など親族から同意を得ることが求められる。親族が近くにいれば良いが、転勤や結婚などで遠方にいるケースも多くなっている。ケアプランの説明・同意のためだけに地元に来てもらうことはできない相談だ。

家族が遠方で暮らしている場合は、仕事が終わって自宅に戻る時間帯などを見計らって、電話で説明するなどの対応を行う。電話で説明、同意を得た上で、その日を同意日に設定して書類を郵送。押印・サインをしてもらった後、書類を返送していただく。

このやり方は従来、介護施設の入居者で一般的だったが、近年は在宅サービスでも見かけることが多くなっている。それだけ孤独な利用者が増えているのだ。この辺りもしっかりとアセスメントした上でケアプランに盛り込み、サービス担当者会議で情報を共有し、地域としてのケアを考えなければならない。

話を元に戻そう。書類への押印を電話で依頼すると、通常は「すぐに送り返します」との答えが返ってくる。サービス利用当初は緊張感もあるので、すぐに対応してくれるが、それが何年も続くと、慣れが生じてくる。

「すぐに送り返す」と言いながら、何カ月経っても書類が届かない。意を決して催促の電話をする時、相手の虫の居所が悪いと、“逆ギレ”されることもある。そうこうしているうちに、次のケアプランの作成時期を迎え、同じ事を繰り返している間に、家族との関係がギクシャクする―。そんな経験をお持ちではないだろうか。

印鑑もらえない…どうする?

そんな時、実地指導の通知が届くと大変だ。一部のケアプランに同意のサイン・押印がない。このままでは、介護報酬の返還指導となり、最悪の場合、行政処分を受けるかもしれない―。

こうした切迫した状況下で、あなたは三文判使用の誘惑に打ち勝つことができるだろうか。人間は弱い生き物だ。些細なことで一度モラルを踏み外すと、一気に坂を転げ落ちることになる。「あれもこれも良いだろう」と自分勝手なルールを作り、印鑑を無断使用するケースが増えていく。そしていつの間にか、事業所全体に広がり、“暗黙のルール”となっていくのだ。

外部の事業所から転職した職員は当初、そのことに疑問を抱いたはずだが、人間は環境に染まるのが早い。そのうち、それが当たり前となり、今回のような事件に発展する。

最初は些細なことだとしても、一気に坂道を転げ落ちるリスクは至るところにある。利用者から金品を盗む。暴力を振るう。虐待、暴言、罵倒…。そこまでいかなくても、仕事で手抜きすることもあるだろう。こうした事態を防ぐには、コンプライアンスを理解した責任者が、強い管理体制を築くしかない。例外を認めず、「駄目なものは駄目!」ときっぱりと言い切ることが必要だ。それができない組織は崩壊する。

正しい対処法とは何か?

実は、厚生省令38号第13条には、「当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない」とあるだけで、印鑑・サインが必要だとは書かれていない。にもかかわらず、“印鑑文化”を持つ日本ではこれまで、暗黙の了解的な同意の証として、行政側が確認を求めてきた。これは、利用者保護の意味もあっただろう。

こうした中、厚労省は今年5月、実地指導のチェックリストとなる「標準確認項目」を発出し、「署名・捺印」の必要性を明示した。これは“ローカルルール”ではなく、一般ルールであることに注意すべきだ。

利用者や家族に代わって押印・サインできる第三者は、法的には成年後見人だけ。たとえ、家族の了解を得て印鑑を預かっているとしても、保管と押印は全くの別問題だ。成年後見人のいる利用者がごく少数である現状を考えると、利用者の状況次第では、必ずしも押印・サインを要しないと解釈できなくもない。

介護行政は記録主義である。たとえ実施していても、記録で確認できないことは、一切認められない。裏を返せば、先程の遠方の家族のケースであっても、電話での説明・同意の記録、書類を郵送した記録、催促の電話を入れた記録さえ残っていれば、行政から注意を受けることはあっても、介護報酬の返還までは求められないと考えることもできる。

独居で身寄りがなく、成年後見人の指定もない利用者の場合は、役所に状況を説明した上で、事前に対応策を検討しておくべきだ。最もやってはいけないのは、事業所内の人間だけで話し合い、根拠なく、安易に判断すること。法的にグレーな部分があれば、事前に役所と協議しておこう。

社協への指導は強化される?

奇しくも、今回のニュースと同じ時期に北海道名寄市でも、社会福祉協議会による不正請求が報道された。不正請求額は約2600万円に上るが、名寄市は不正発覚後も、介護報酬の返還を求めていなかったという。

こうした報道が相次いだことで今後、社会福祉協議会に対する世間の見る目は厳しくなるだろう。「人の振り見て我が振り直せ」ではないが、今回の事件を契機に、一般の居宅介護支援事業所も、職場内の規範を見直してほしい。悪しき慣行をなくす良い機会になるだろう。この機を逃すと、次は、自分たちが処分を受ける可能性が高いと考えるべきだ。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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