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小濱道博の介護経営よもやま話小濱道博の介護経営よもやま話

小濱道博の介護経営よもやま話

ケアマネの処遇改善は実現するのか?

「ケアマネジャーへの処遇改善」という言葉で、一気に目が覚めた方も多いのではないだろうか。居宅介護支援は、処遇改善加算等で蚊帳の外に置かれた感が強かったので、なおのことであろう。今、社会保障審議会介護保険部会において、2021年の介護保険法改正の審議が終盤を迎えている。来年6月ごろまでには、国会で改正法案が可決、成立する見通しだ。

現時点で、具体的な改正の方向性が見えているのが、居宅介護支援である。介護保険部会での論点の一つとして、居宅介護支援費への自己負担の導入が挙がっていることは前回も述べたが、その後、10月9日の審議において、新たに3つの論点が浮上した。

(1)ケアマネへの処遇改善の実現

唐突に浮上した論点が、ケアマネへの処遇改善である。

今年10月から「介護職員等特定処遇改善加算」が導入されたが、居宅介護支援は、介護職員の配置がないことを理由に対象から外れた。

これに対して同年8月、日本介護支援専門員協会が、厚生労働省にケアマネの処遇改善を求めるとの報道があった。その理由として、「介護職員処遇改善加算」などの相次ぐ賃上げによって、介護福祉士の賃金がケアマネを上回る事態が起こっていること、そして、昨年度のケアマネ試験の受験者数が、前年度から6割減ったことへの危機感があるという。

古参ケアマネが引退、管理者要件が決定打

今、地域のケアマネが不足している。その要因の一つとして、介護保険制度の創成期に資格を取得したベテランケアマネが、およそ20年の歳月を経て、世代交代の時期を迎えつつあることが挙げられる。実際、古参のケアマネが引退し、後任の募集をしたものの、応募がほとんどないという地域が、東京都内でも出始めている。

引退を決意させたのが、後述する主任ケアマネの管理者要件だ。主任ケアマネは、資格を取得するにしても維持するにしても、長時間の研修の受講が義務付けられている。ところが、その時間を確保することが難しく、有資格者からも、「更新研修の受講を諦める」との声を聞くことが多い。特に小規模の居宅介護支援事業所にとってはハードルが高いと言える。

居宅介護支援の報酬体系を見ても、「特定事業所加算」を算定しない限り、収支は赤字になる。厚労省の「平成29年度介護事業経営実態調査」を見ると、居宅介護支援の収支差率はマイナス1.4%と、全サービスの中で唯一赤字となっている。この状況が長期間にわたって改善されない事実こそが、意図的に赤字の報酬体系にしている証とも言える。

居宅介護支援事業所の運営と維持には、ただでさえ多大な労力が求められる。そこに収益性の低さという厳しい現実がのしかかり、事業としての魅力がなくなっているのだ。これでは、ケアマネのなり手が減少し、ベテランが引退に追い込まれるのも無理もない。国が進める医療・介護連携には、医療の知識が不可欠だが、看護師など医療系の基礎資格を持つケアマネも減少しているという。

こうした中、厚労省は10月9日の介護保険部会において、「ケアマネジャーについて、処遇改善を図ることで質の高いケアマネジャーを安定的に確保する」との新たな論点を示した。

この情報を耳にして、処遇改善に期待するケアマネも多いと思う。しかしながら、ケアマネに新たな処遇改善加算が設けられ、賃金が一律にアップすると考えるのは早計である。

処遇改善、1人ケアマネ事業所はどうなる?

この論点を読み解くと、何らかの算定要件が設けられても不思議ではない。「質の高いケアマネジャー」を基準とするのならば、専門研修課程の修了、主任ケアマネ資格、地域ケア会議の参加状況、医療との連携状況、特定事業所集中減算の有無などが、算定要件に盛り込まれることが想定される。

事業所の大規模化を推進する国の方向性を考えると、1人ケアマネ事業所に対して、単純に処遇改善を行うとは考えにくい。そうであるならば、基本報酬の引き上げで事足りるからだ。場合によっては、法人内における「介護職員等特定処遇改善加算」の算定が要件となる可能性もある。

新たな処遇改善加算が創設される場合は、来年の介護報酬改定の審議まで結論は持ち越され、年内にまとまる介護保険部会の審議報告では、ケアマネの処遇改善の必要性が盛り込まれるにとどまるだろう。ただ、必要性が高いと判断された場合は、「介護職員等特定処遇改善加算」と同様、年明け早々に審議が始まり、来年10月から導入―というシナリオも捨てきれない。

多くのケアマネは、期待と不安を抱きながら、審議の行方を見守ることになるだろう。

(2)管理者要件、経過措置延長の可否

昨年度の制度改正に伴い、居宅介護支援事業所の管理者は人員基準上、主任ケアマネとなった。その経過措置は2021年3月末までだが、これを3年間延長することが、新たな論点として浮上している。

この経過措置をめぐっては、日本介護支援専門員協会も、厚労省に延長を要望している。その主な理由として、主任ケアマネの取得に必要なケアマネの専従期間(5年間)がある。

仮に、昨年度の制度改正直前にケアマネの資格を取得し、居宅介護支援事業所を開設した場合、専従期間の要件すら満たすことはできない。この点は、制度改正時から指摘されており、経過措置の期間延長は避けられないと考える。

なぜ、管理者を主任ケアマネに限定したのか―。最大の狙いは、ケアマネジメントの質の向上だ。これまでも、実務研修受講試験や研修制度の見直しなどで質の向上が図られてきたが、ケアマネによるアセスメントや医療と介護の連携、介護を行う家族に対する支援、ケアマネジメントの公正中立の確保が不十分である等の指摘が出ている。

そして、これらの問題の改善策として導入されたのが、管理者要件の見直しだった。主任ケアマネには、スーパーバイズ(監督や指導)によって、他のケアマネを導くことが求められるためだ。厚労省の2018年度の調査によると、管理者が主任ケアマネである居宅介護支援事業所は全体の51.2%と、既に半数を超えている。

「特定事業所加算」を算定していない小規模事業所にも、スーパーバイズが必要との声も上がっているが、先述の通り、国は事業所の大規模化を進めている。2016年5月現在、同加算を算定する事業所は25.9%と、全体の4分の1を超えている。小規模事業所は今後、事業の継続性と安定性を図るためにも、早期に大規模化を進め、同加算の算定を目指すべきであろう。

(3)包括からの予防プラン受注の見直し

地域包括支援センターの役割が多様化する中、同センターの職員が、予防ケアプランの作成に時間を割くことが難しい状況も生まれている。予防ケアプランは、同センターから居宅介護支援事業所に外部委託できるが、その報酬自体が低いこともあり、積極的に受託する事業所は少ない。このため、事業所が予防ケアプランの作成を直接受託できる仕組みや、報酬体系の見直しなどが検討される見通しだ。

ただ、直接の受託については反対意見も多く、実現は難しい面があるようだ。報酬体系の見直しに関しては、来年の介護報酬改定の審議を経て、最終的な結論が出るだろう。

上記3つはあくまで論点であり、何一つ決まってはいない。ただ、居宅介護支援に関しては、今回も大きな改正が行われる公算が大きいと言える。

年内には、政府が新たに設置した「全世代型社会保障検討会議」も中間報告を行うほか、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」(財政審)も意見書をまとめる。こうした内容も、介護保険法の改正に影響を与える可能性は十分ある。財政審では、要介護1〜2の軽度者について、通所介護も地域支援事業に移行すべきとの意見が復活している点にも注目したい。

本コラムをお読みいただいた上で、情報のアンテナを張っておくことが、制度改正の方向性を予測する上でも重要である。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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