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他人事ではない、コロナ訴訟!ケアマネが心掛けるべき自衛術は

新型コロナウイルス感染症のため82歳で亡くなった女性の遺族が、訪問介護事業所の運営会社に計4400万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴した報道を見て、多くのケアマネジャーが驚愕したのではないか。結果的には、遺族側と運営会社とで10月12日に和解したのだが、こうした「コロナ訴訟」は、利用者の自宅に出向く機会があるケアマネにとっても、他人事でない。

記憶に新しいドーナツの「誤嚥事故」

過去の介護事故訴訟では、「不法行為責任(ある人が他人の権利ないし利益を違法に侵害する行為)」と「契約上の安全配慮義務違反(利用者の安全に配慮する義務)」が、主な争点だった。そして、介護事業所に責任があるかどうかの判断では、「予見可能性」と「結果回避可能性」がポイントとなった。

つまり、介護事業所側が事故に対して予見可能であり、その事故が回避できる可能性があると損害賠償が生じていたのだ。

具体的な事故としては、「転倒」「誤嚥」などの事案が多く見られる。最近では長野県内の施設で、おやつのドーナツによる「誤嚥」事故で、准看護師の責任問題が裁判所で争われたことが記憶に新しい。

居宅介護支援で最も多いのは「経済損害賠償」

介護労働安定センターの調査報告によれば(介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業報告書2015 年11 月19 日~ 2016 年6 月22 日)、居宅介護支援サービスによる事故報告分析で、もっとも多いのが「ケアプラン間違いによる経済損害賠償」(29件)であり、その外に「人身傷害・骨折」(2件)がある。

経済損傷賠償としては、「ケアプランの時間や単位の間違い」「ケア認定期間の間違い」「介護レベル判定のギャップ」「福祉用具・福祉機器の申請トラブル」「ケアプランの申請忘れ」などが挙げられている。

人身傷害の内容は「利用者の歩行アセスメントを実施する際、利用者の体重を支えるためにケアマネ自身が腰を痛めたり、利用者の居宅訪問時に足を滑らせて転んだりした」だった。

感染症の介護事故が訴訟になったら…

いずれにせよ、感染症の介護事故に関する訴訟事例は希と言ってもいい。仮に、感染症関連の介護事故で訴訟となれば、既述の「契約上の安全配慮義務違反」が争点になると予想されるが、先例が少ない中、どのような対応が求められるか悩む人も多いだろう。

対応としては、既述の「予見可能性」と「結果回避可能性」について、しっかりと日常常務をこなしていれば、裁判となっても敗訴する可能性は少ないと考える。

具体的には、感染の恐れのある介護従事者は訪問させないことを事業所として徹底すべきだ。日々の検温はもちろん、スタッフに対し、一定程度、交友関係の自粛を求めることも対策となりうる。

さらに大切なことは、そうした対策を常に記録に残しておくことだ。それがあれば、いざ裁判となっても「安全義務違反」に問われず、不可抗力であったことが認められる可能性が高まる。

体調が不安な時は、“訪問しない勇気”を

逆に、発熱しているにも関わらず、代わりの人手がいないため訪問させてしまうと、注意不足とみなされる可能性が出てくる。感染症の場合、誰にうつされたかは証明できないが、その疑いをもたれること自体が問題なのだ。

ここで悩ましいのが、ヘルパーやケアマネは代わりがなかなか見つからない点だろう。特に独居高齢者や老夫婦世帯などは、日々の支援がなければすぐに困窮してしまう。そのため、「多少の体調不良でもケアに出向きたい」と考える関係者もいるはずだ。

平時であれば、その姿勢で問題ないかもしれない。だが今は平時ではない。

自分の体調に少しでも不安があったり、万一の感染に不安を覚える状況であったりするのであれば、利用者のためにも“訪問しない勇気”を持つべきだ。それによって利用者や家族などから苦情やクレームが出るかもしれない。だが、無理な訪問が感染拡大の原因となりかねない今、その選択もやむを得ないと考える。

これらのことを曖昧にしてしまうと、訴訟問題となった際には問題が指摘されることもある。

最後に。これまで述べたことに加え、感染対策を徹底した上で業務に取り組んでいれば、万が一のことが起こり、訴訟に至ったとしても敗訴となることはない。非常時の今だからこそ、「毎日の体調管理」と「手洗い・うがいの励行」「マスクの着用」といった基本を順守し、日々の業務に取り組んでほしい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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