

結城教授の深掘り!介護保険
※この記事は 2020年6月11日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
「ポストコロナ」時代、ケアマネに求められることは
- 2020/06/11 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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全国的に緊急事態宣言が解除され、少しずつではあるが日常生活が戻り始めている。しかし、在宅の介護現場には、簡単には解決できない大きな課題が横たわっている。
それは、新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こした介護サービスの利用控えと、それに伴う要介護者・要支援者の心身の機能低下だ。さらに、元気な高齢者であっても「通いの場」や「サロン」「趣味の集い」「介護予防教室」などの利用ができず、自宅にいる時間が長くなっている。その結果、介護が必要な状況に陥り、要支援や要介護の認定を受ける高齢者が増えることも懸念される。
「サービス控えが心身に影響」6割…ケアマネがやるべきことは?
私は、今年5月4 日から5 月17 日にかけて、インターネットを活用して在宅の現場で働く介護従事者にアンケート調査を行い、503名から回答を得た。それによれば、約6割の回答者が担当する高齢者のなかに、機能低下の兆候がある人がいると答えた。=グラフ=
自由記述では「交流不足から刺激が減り、認知症状が悪化している」や「デイサービスを1 ヵ月お休みしている利用者が多く、筋力が低下した人もいる」「長期化すると、利用者の機能低下や家族の介護負担増が懸念される」「サービスの利用を控えていた方の心身機能の低下が心配です」といった声が多く寄せられた。
こうした状況を解消するには、ケアマネをはじめとした介護の専門職が、サービス控えに伴う心身の機能低下の弊害を丁寧に説明し、積極的に利用を促すことが必要だ。ケースによっては、改めてアセスメントし、心身の機能低下の度合いを確認する必要もあるだろう。中には区分変更申請をしなければならない人だっているかもしれない。少なくとも「緊急事態宣言が解除されたのだから、そのうち利用するようになる」と、成り行きに任せているだけではいけない。
新たな介護サービスの確保が困難に
ところで、高齢者にサービスの再利用を促すにしても、新たに介護が必要になった人を担当するにしても、現場のケアマネが覚悟しておかなければならないことがある。
しばらくの間、新たな介護サービスを確保するには、相当な苦労を強いられるということだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、デイサービスや訪問介護、ショートステイでは、新規の利用者の受け入れを制限している事業所が少なくない。例えばデイサービスでは、「平時では1日30人利用できるが、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからは1日15人までとし、ソーシャル・ディスタンスを保つ」など、定員を減らして営業を継続している例が目立つ。また訪問介護では、人手不足がさらに深刻化しており、新規利用者の受け入れがより難しくなっている。
中には経営悪化によって閉鎖を検討している介護事業所もある。実際、既述の調査報告では、新型コロナ問題が収束したら、介護サービス量は減少すると考えている人が約3割いた。=表1=
自由記述でも「介護事業所が閉鎖してしまうと、充分な支援が確保出来るのか不安」「経営難でデイサービスなどが閉鎖しないか心配」「訪問介護を新しくサービスに入れたいが、人手不足とコロナの影響で導入できない」「休止はしていないが事業者側からサービスを減らしてほしいとの要望がある」といった声も寄せられており、この状況はしばらく続くであろう。=表2=
今こそ、ケアマネの技量と真価が問われている
新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、在宅のケアマネはサービスの確保や調整に苦労していた。それを思えば、さらにサービスの確保が難しくなるのは、過酷過ぎる現実といえるだろう。
だが、それでも、これから徐々に社会活動は復活し始めるだろうし、活動を再開する介護事業所も増えていくはずだ。各ケアマネは、そのチャンスを逃さず、事業所との情報交換を再開するなどして、社会資源の確保に努めるべきだ。さらに言えば、介護事業所を巻き込んだ勉強会を催すなど、新たなネットワークづくりにも取り組んでほしい。
今こそ、技量と真価が社会から問われている―。ケアマネは、その意識をもって「ポストコロナ」時代のケアマネジメントに臨んでほしい。

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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