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新人ケアマネも必読!実地指導入門新人ケアマネも必読!実地指導入門

新人ケアマネも必読!実地指導入門

処分事例で実地指導のトレンドをつかむ

2018年4月、居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から市町村に移りました。また2019年5月には、厚生労働省が実地指導の新たな運用指針を発出し、居宅介護支援においても、「標準確認項目」と「標準確認文書」が示されました。従来の事前チェックリストをこの確認項目に置き換える自治体も多くなってきており、新指針に沿った実地指導に移行しつつあることが確認できます。

居宅介護支援においては、2018年春の介護報酬改定でも、運営基準の変更を含めた大変革があったことは記憶に新しいと思います。居宅介護支援をめぐる環境が様変わりする中、行政側はそれにどう対応しているのか―。

今回は、ここ数年の行政処分の事例を見ていきます。ここから、実地指導における行政の視点や動向を垣間見ることができます。行政処分に至るまでの間に、当事者の甘い考えが根幹にあるのはいつの時代も共通です。不正請求は詐欺行為であり、それに加担する者も同罪であるという認識が必要です。

事例1 愛知県(2018年3月15日) 指定の全部効力停止(6カ月)

<処分理由>

(1)人格尊重義務違反(介護保険法第84条第1項第4号)

利用者へのアセスメントの内容が不十分なケースが33人中17人であったほか、課題分析をしていないにもかかわらず、ほとんどの利用者に自法人の通所介護等のサービスを限度額いっぱいまで導入する画一的なケアプランを作成していた。

これは、「指定居宅介護支援事業者は、要介護者の人格を尊重するとともに、この法律又はこの法律に基づく命令を遵守し、要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならない」とする介護保険法第81条第6項に規定される義務に違反している。

(2)不正請求(介護保険法第84条第1項第6号)

2017年7~10月、月1回のモニタリングの結果を記録せず、支援経過も記録していなかったケースが利用者33人中24人、延べ72件あり、運営基準減算に該当していたが、居宅介護支援費を減算することなく請求していた。

【ポイント】

在宅サービスの事業所を併設する居宅介護支援事業所では、併設の事業所が提供する介護サービスを中心としたケアプランを作成する事例は数多く存在します。ただ、ケアプラン作成のプロセスにおいては、アセスメントの結果に基づいた目標を設定し、その目標を達成するための介護サービスを位置付ける必要があります。

今回の事例は、そうしたプロセスを無視し、区分支給限度基準額いっぱいまで、併設の事業所のサービスを利用させることだけを目的としたケアプランが作成されました。こうした場合は、居宅介護支援事業所への処分だけでなく、ケアマネジャー資格の取り消しにつながるケースも多くあります。

毎月のモニタリング訪問で利用者の状況が大きく変わることが少なければ、モニタリング記録の内容が前回と同じになることが増えます。そのような中で日常業務に追われると、どうしても記録の作成が後回しになりがちですが、そうした気の緩みが大事に発展するのです。

事例2 大阪府(2019年3月28日) 指定取り消し

<処分理由>

2016年9月4日から翌年9月3日までの約1年間、運営基準の減算対象になることを知りながら、ケアプランを作成しないなどの行為を続け、介護給付費を不正に請求、61万8512円を受給した。過去の実地指導で指摘を受けていたが、是正されなかったため、自治体側が2017年9月に監査に入った結果、不正請求が発覚した。

【ポイント】

過去の実地指導で指摘を受けていたにもかかわらず、その後も同じ行為を続けていたことは、弁解の余地も無く、業界から排除される処分を受けるのも当然の事例です。

ケアマネジャーの資格を持っているのですから、やるべきことは十分に理解しているはずです。それを行わないのは業務の放棄に他ならず、ケアマネジャーとしてのサービスを提供していない状況で介護報酬だけを受け取ったことは、「詐欺行為」と言っても過言ではありません。

なお、この事例では、併設する訪問介護事業所も指定取り消しとなっています。

事例3 神戸市(2018年12月26日) 指定取り消し

<処分理由>

居宅介護支援事業所の管理者であった法人の代表が、サービス提供記録がないサービスを加えた虚偽のサービス提供票を作成し、訪問介護事業所の不正請求を主導した。

【ポイント】

先述した通り、実際にサービスを提供せずに介護報酬を受け取ることは、詐欺に等しい行為です。いかなる理由であっても許されず、たとえ少額であろうと、それは犯罪であるという強い自覚が必要です。この事例では、ケアマネジャーである法人の代表者が、併設する事業所の不正請求を主導したのですから、さらに悪質性が高いと言えます。

事例4 東京都八王子市(2018年3月22日) 指定取り消し

<処分理由>

(1)不正不当行為(介護保険法第84条第1項第11号)

管理者は、担当する利用者が利用している個別事業所の不正行為を知りつつ、給付管理を行わずに介護報酬の請求のほう助を行っていた。

(2)不正請求(介護保険法第84条第1項第6号)

実態と異なるケアプランを作成し、介護報酬を延べ16回請求した。また、利用者のケアプランを適切に作成(変更)していないにもかかわらず、3カ月にわたり、運営基準減算を行わずに介護報酬を請求した。

(3)虚偽答弁(介護保険法第84条第1項第8号)

市が監査に入った際、次の虚偽答弁を行った。▽管理者自ら不正請求の隠ぺい工作を指示するなど、併設する訪問介護、通所介護事業所の不正請求の事実を知っていたにもかかわらず、不正請求は知らないと証言した▽併設する訪問介護、通所介護事業所の従業員に対して、管理者側が書類の改ざんを命じたことを否定した。

【ポイント】

この事例も、併設する在宅サービス事業所が不正請求に加担していました。ケアマネジャーとしての職業倫理が欠如しており、詐欺行為に等しいと言えるでしょう。うその証言をしたり、書類を偽装したりした場合でも、悪質であると認定されれば、それだけで指定取り消しとなります。

不正請求への加担は、利用者からの信頼だけでなく、ケアマネジャーという職種全体の信頼をも損ねる重大な犯罪行為です。利用者や自治体が詐欺行為として訴えた場合、刑法で処罰される可能性もあります。そうなれば、前科者となり、自らの一生を棒に振ることになります。たとえ上司の指示であっても、「不正には一切加担しない」という毅然とした態度を取ることが大切です。

特別事例 神奈川県横須賀市(2019年2月18日) 指定取り消しの撤回

横須賀市は2019年2月18日、2018年3月27日に下した指定取り消し処分を撤回した。処分を受けた医療法人清光会(神奈川県逗子市)が同年6月22日、行政不服審査法に基づく不服申し立てを行った結果、横須賀市長が処分を取り消した。この決定を受けて市は、指定取り消し処分に伴って清光会が支払った約1892万円を返還することになった。

撤回された主な理由は、2016年2月の段階で事業所の虚偽の指定申請を認識しておきながら、処分を下すまでに2年1カ月の歳月を要したことが、裁量権の逸脱・濫用に当たり、違法な処分であると判断されたため。

処分までに時間がかかった理由について、市側は「行政処分の程度の決定に当たり、従業者等から聴取した答弁の突合や整合性の精査など、複数回にわたる監査を行い、全容の調査に時間を要したため」とし、「本裁決を踏まえ、今後、行政処分の可能性がある案件については、速やかに対応を行うよう努めてまいります」としている。

【ポイント】

これは、指定取り消しという一度確定した行政処分を、行政自らが撤回した珍しい事例です。行政が不正を認識してから処分を下すまでに2年間かかったことが、裁量権の逸脱・濫用に当たり、違法処分であるとされたためです。

ただ、行政処分となった事実そのものが否認されたわけではありません。処分確定までの期間を問題とした行政処分の撤回は、今後の行政の判断に影響を与えそうです。この結果を踏まえ、不正発覚から処分までの期間が大きく短縮されることも考えられます。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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