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医療基礎知識

アルツハイマー型認知症治療の現状と展望(2)

2011年4月、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬としては日本で初めての経皮吸収型製剤である「イクセロンRパッチ」(一般名:リバスチグミン)の製造販売が承認されました。これにより、 日本でも年内には、世界で標準的に使用されている4剤のAD治療薬の使用が可能になります。
イクセロンパッチの登場により日本のAD治療の何が変わるのかを、前回に引き続き、認知症専門医である東京医科大学老年病科教授の羽生春夫先生にお聞きし、お届けします。 また、パッチ剤のメカニズムについても紹介します。

提供:ノバルティス ファーマ株式会社

日本で使用できる治療薬が1剤から4剤に

現在、世界でアルツハイマー型認知症の治療薬として承認されている主な薬に、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4剤があります【表2】。ドネペジルは軽度から高度までの適応のあるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で、メマンチンは中等度から高度に適応され、ほかのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との併用が可能です。リバスチグミンとガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害のほかにもう一つ別の作用機序を持ち合わせています。

世界の多くの国でこれら4剤が使用される中、日本では長い間ドネペジル1剤しか使用できませんでした。しかし、日本でも2011年1月に2剤、この4月にリバスチグミンの貼り薬「イクセロンRパッチ」(*)の製造販売が承認されました。使用できる治療薬が増えることは、治療の可能性を広げることになるので、患者さんや介護するご家族にとって朗報といえるのではないでしょうか。

認知機能とADLの悪化を抑制するイクセロンパッチ

新しい治療の選択肢となるイクセロンパッチは、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2種類のアセチルコリン分解酵素の働きを阻害する特性を持つ薬剤です。24週にわたりリバスチグミン(パッチ剤、カプセル剤)を用いた海外の臨床試験でもプラセボ群で認知機能が悪化しているのに対して、有意に改善したという結果が得られています【図6】

また、食事や排泄、入浴や着脱衣など、日常生活を送る際に必要な基本的動作であるADL(Activities of Daily Living)についても、プラセボ群に比べてリバスチグミン投与群で有意な悪化抑制が確認されています。【図7】

認知症治療薬として注目のパッチ剤

イクセロンパッチにはもうひとつ大きな特徴があります。その名の通り、パッチ(経皮吸収型製剤)という剤型である点です。 認知症の方が、毎日自分ひとりで正しく服薬を続けることは容易ではないため、介護者が服薬を介助する場合が少なくありません。特に経口薬の服薬介助は、認知症の方のその時の気分や症状によって大きく左右されるため、想像以上に手間と時間がかかる作業で、介護者にとって大きな負担となっています。イクセロンパッチは、皮膚に貼るだけの簡便な剤型であるため、介護者にとっての毎日の服薬介助の負担軽減が期待できます。

また、経口薬の場合は服薬が外から見えないため、飲み過ぎや飲み忘れのリスクが常にありますが、パッチは服薬状況が目で見てわかるため、服薬の遵守や継続にもつながります。治療薬を継続して正しく飲み続ける必要のある認知症の服薬コンプライアンスにおいても、パッチが果たす役割は大きなものといえるでしょう。

海外で、介護者を対象にしたパッチ剤に対するアンケート調査結果をみても、試験開始8週時において、約70%の介護者がパッチ剤はカプセル剤よりも好ましいと回答、24週時においてもその傾向は変わっていません【図8】

パッチ剤を選ぶ主な理由としては、「服薬スケジュールを遵守しやすい」「使いやすい」が挙げられており、介護者の生活の質(QOL:Quality of Life)を高める効果も期待できます。 ほかにも、皮膚を通して薬剤が徐々に吸収されていくため、胃腸や肝臓への負担軽減も期待されており、パッチという剤型を持つイクセロンパッチは、アルツハイマー型認知症治療において、今後ますます注目されていくものと思われます。
(*)小野薬品工業㈱での販売名は「リバスタッチRパッチ」です

パッチ剤とは?

外用剤に含まれる薬物が、皮膚を通して皮下に吸収されることを「経皮吸収」といいます。この経皮吸収によって薬物を吸収させ、血流にのせて全身に送り届けるのが「経皮吸収型製剤」で、この剤型のうちのひとつが「パッチ剤」です。 パッチ剤は一般的に「貼り薬」とも呼ばれますが、経皮吸収型製剤は、患部まで持続的に薬物を供給できる全身作用型の剤型として、湿布剤のような局所的に有効成分を作用させる貼り薬とは別に分類されます。 経皮吸収型のパッチ剤は、効果を得るのに必要かつ最適な成分量(薬物)を、皮膚から徐々に吸収させ、ターゲットとする組織まで到達させます(図1)。 飲み薬と異なり、貼るだけの簡便な剤型であること、薬剤の使用状況を目で見て確認できるなどのメリットもあり、利便性が高く、服薬コンプライアンスの維持・向上にもつながる剤型として注目されています。

パッチ剤の構造

パッチ剤には、「貯留(リザーバー)型」と「基質(マトリックス)型」の2つの種類があり、イクセロンパッチは基質型です。その基本構造は、支持体に、薬物層および粘着層からなる「ポリマー基質」を塗布した階層構造をとっています(図2)。粘着層はリリースライナーで保護されており、使用時にはこれを取り除き、皮膚に貼り付けます。薬物は粘着層を介して皮膚を通り、血管などに入り込みます。 ところが、皮膚の表面には「角質層」という外部刺激から身体を守るためのバリア機能が備わっており、この角質層を薬物が通過し、目的にあった部位(皮膚、皮下組織、血管)まで到達するためには、 製剤がバリア機能に対応できるよう設計される必要があります。そこでパッチ剤には、皮膚にしっかりと密着させたり、有効成分を安定的に放出させるなどの、複数の工夫が施されています。

様々な領域で活用されるパッチ剤

現在、パッチ剤は、狭心症治療に用いる硝酸イソソルビドやニトログリセリン、更年期障害治療のためのエストラジオール、関節痛や筋肉痛を緩和するジクロフェナクナトリウム、禁煙治療のためのニコチンなど、様々な疾患で活用が進んでいます。

羽生春夫
1981年東京医科大学卒業後、老年病学教室に入局。老年病学、神経内科学、脳卒中学を専門とする。日本老年医学会専門医・指導医、日本神経学会 専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医、日本内科学会認定医・ 指導医。

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