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医療基礎知識

腰痛、肩こりなど「慢性痛」の定義と治療

「痛みさえなければ…」。
ご利用者から、そう訴えられたことが、皆さんも一度や二度はあるのではないでしょうか。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、多くの国民が慢性の痛みを抱え、それが生活の質(QOL)の低下につながっています。
疾患別の対策は各分野で進んでいる一方、見逃されがちだった、痛みという症状。痛みが個人の生活に支障を与えることはもちろん、社会経済にも大きな損失を及ぼしていることが判明しつつある今、慢性の痛みに対する取り組みに関心が集まっています。

資料提供:ムンディファーマ株式会社

“痛み”とはなにか

「痛み」について、国際疼痛学会では次のように定義しています。
「痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはこのような損傷を表す言葉を使って述べられる不快な感覚・情動体験である」
また、2009年12月から3回にわたって開催された、厚生労働省「慢性の痛みに関する検討会」は、慢性的な痛みのことを、次のように定義しています。

「一定期間(月単位)以上続く痛み、かつ痛みの存在が身体的、社会的に大きな影響を及ぼすもの」

いずれにしても、痛みは主観的な体験を表現するもの。そのため、客観的な評価が難しく、標準的な評価方法や診断方法が未確立で、国内では診療体制も十分に整っていないというのが現状です。

2,300万人が慢性の痛みを抱えている!

「平成19年国民生活基礎調査」によると、受療頻度が高い上位5疾病に「腰痛症」、「肩こり症」が含まれており、さらに頻度の高い自覚症状として、「腰痛」、「肩こり」、「手足の関節痛」、「頭痛」が上位を占めています。

性別にみた通院者率の上位5傷病と有訴者率の上位5症状のグラフ

また、ムンディファーマ株式会社が行った、痛みに関する大規模地調査「Pain in Japan 2010」によると、慢性疼痛を持つ患者は全成人の22.5%。つまり、日本人成人の4.4人に1人にあたる、約2315万人が慢性的な痛みを抱えていると推定されます。ここで、慢性疼痛の基準としたのは次のようなものです。

最初に痛みを感じてから現在までの期間3か月以上
慢性的な痛みを一番最近感じた時期1か月以内
慢性的な痛みの頻度週に2回以上
慢性的な痛みの度合い(10ポイント中)5以上
痛みによる損失は年間9兆円!

アメリカでは、1998年から99年にかけて全米で実態調査が行われ、程度の高い慢性痛に悩む患者が成人人口の9%超を占めていることが判明しました。
さらに、無効な治療やドクターショッピングによる医療費の浪費、痛みによる就労困難などから、社会経済の損失は年間約650億ドル(9兆円)にも上ると推計されました。

こうした結果を受けて、米国議会は2000年、「痛みの10年」宣言を採択。次のような対策を打ち出しました。

  • 慢性痛の実態調査、痛みの評価と治療基準の作成と実施
  • 医師の再教育、痛みを見直す国民週間の設定
  • 体温、血圧、心拍、呼吸数に続く5つ目のバイタルサインとして、すべての患者において痛みの評価を行う
痛みを起こす病気とは?

では、慢性の痛みはどのような病気が原因で起こるのでしょうか。「慢性の痛みに関する検討会」では、次の3つに区分しています。

  1. 患者数が多い既知の疾患に伴う慢性の痛み
    …変形性脊椎症・関節症、椎間板ヘルニア、頸肩腕症候群、関節リウマチなどに見られる痛みの一部
  2. 原因や病態が十分に解明されていない慢性の痛み
    …線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、脳卒中後疼痛、帯状疱疹後神経痛、手術後疼痛症候群 など
  3. 機能的要因が主な原因となって引き起こされる上記以外の慢性の痛み
    …慢性頭痛、過敏性腸症候群、婦人科的疾患、歯科口腔外科的疾患などに見られる痛みの一部

これら慢性の痛みの治療として、医療機関で行われているのは、主に次の4種類です。

  • 薬物療法
    非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイド(医療用麻薬)
  • 手術療法
  • 神経ブロック療法
  • 運動療法
痛みに対する治療に「満足している」は3割未満

薬物療法、手術療法、神経ブロック療法、運動療法などによって、痛みに対する治療が行われていますが、実際は、まだまだ十分とはいえないのが現状です。
前述の痛みに関する調査「Pain in Japan 2010」では、「慢性痛に対する対処の満足度」、「慢性痛治療における医師への満足度」についても調べていますが、いずれの調査でも、「非常に満足」、「やや満足」の割合は半数にも満たず、満足度が低いことがわかります。かつ、痛みを緩和するためにとっている対処、行動に関しては、「病院・医院以外で受けた治療」が最も満足度が高いという結果でした。

痛みをゼロにするのではなく、QOL向上をめざして

これまで紹介してきたような現状をふまえ、「慢性の痛みに関する検討会」は、今後、必要な対策として次のようなことを挙げています。

医療体制の構築
  • ガイドラインの作成などによる一般医や専門医の痛みに対する診療レベルの向上
  • チーム医療形成の必要性
  • 医療従事者の役割分担や連携
教育・普及・啓発
  • 医療者の育成
  • 患者の慢性の痛みの受容
  • 患者周囲の一般国民の啓発
情報提供、相談体制
  • 痛みに関する情報の科学的根拠に基づく整理と最新で正確な情報の発信
  • 社会全体として痛みに向き合う働きかけ
調査・研究
  • 慢性の痛みの頻度、種類、現行の対応、治療の有効性などの現状把握
  • 痛みの評価法やチーム医療を有用にする手法
  • 難治性の痛みの病態解明・診断方法の開発
  • 新規治療法の開発、治療ガイドラインの策定、教育資材の開発

痛みをゼロにすることは困難ですが、自身の痛みを受容することによって症状の軽快が得られることがしばしば経験されています。
患者の生活の質を高めることに支援のポイントを置き、痛みや苦しみを和らげるために、それぞれの立場で計画的かつ協力的に、痛み対策に取り組んでいくということ。そして、診療科や診療部門の枠組みを越えて、患者個々の背景に合わせた総合的な診療を行うことが今後、求められます。

(執筆:橋口佐紀子/医療ライター)

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