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医療基礎知識

認知症の新しい治療ガイドラインと介護者に求められるかかわり方

アルツハイマー型認知症の人にみられる、生活障害。
今までは普通にできていなことができなくなると、本人はもちろん、一緒に住む家族、介護者のとまどいは大きいでしょう。
今までできていたことが「できなくなる」とはどういうことなのか、家族、介護者はどのように介入すればいいのか、そして、とまどう家族にどのようにアドバイスをすればいいのか――。
2011年に見直された診断基準、新たに策定された治療ガイドラインのポイントもふまえて、アルツハイマー型認知症の介護者に求められるナビゲーションについて考えます。

取材協力:ノバルティス ファーマ株式会社

「忘れる」の実態は?

アルツハイマー型認知症の症状として、まず思い描くのが、「記憶障害」ではないでしょうか。

 「さっき言ったことを忘れる」
 「車を停めた場所を忘れる」
 「料理を忘れる」
 「ネクタイの結び方を忘れる」
 「電気を消し忘れる」

いずれも、よく耳にする訴えです。 でも、よくよく実態をみると、必ずしも「記憶障害」に関係した「忘れる」とは限りません。たとえば、「言ったことを忘れ」て、同じことを繰り返すのは、不安が強いからかもしれません。また、「車の停めた場所を忘れる」のは、空間の位置関係がわからない(=視空間認知障害)のかもしれません。同様に、「料理を忘れる」は、メニューが思いつかない、あるいは段取りを立てられないのが原因かもしれません。
このように、「忘れる」の実態は何なのか、なぜ、そうなっているのか、よく考える必要があります。

「料理を作らない」に対して、どう対処すべき?

認知症の高齢者を介護する家族も、「何ができないのか」をなるべく正確に把握し、かかわらなければなりません。
たとえば、次のようなケースで、同居している娘さんの介護方法は適切でしょうか?

  • アルツハイマー型認知症の女性、55歳
  • 1年前から鍵のしまい忘れが目立つ
  • 半年前にパートをやめ、化粧もせずに1日部屋で過ごす
  • はじめは料理を作っていたが、品数が少しずつ減り、次第に作らなくなった
  • 娘と二人暮らし
  • 娘は残業をせず退社し、買い物をして夕食を作るという生活

娘さんはよくやっているように見えますが、残念ながら、「よい介護」とは言えません。

「料理をつくる」には、「メニューを考える→材料を揃える→調理器具を使いこなす→火の扱い・味付け」といった工程があり、料理を作らないからといって、そのすべてができないとは限りません。にもかかわらず、家族がすべてを代わりにやってしまえば、“できる部分”までやらなくなってしまうからです。

では、「料理を作らなくなった」人には、どのように介入すればいいのでしょうか?
まず、「何ができないのか」を細かく評価する必要があります。その上で、次のような介入が考えられます。

  • 何をつくっていいのか、わからない
    ⇒ 朝食の時に、夕食のメニューを一緒に考える
  • 材料などの準備ができない
    ⇒ 一緒に(代わりに)買い物に行く、材料のメモを作成する
  • 調理器具を使えない、手順がわからない
    ⇒ そばについて、指示や誘導、部分的に援助する
  • 火の扱いが危険
    ⇒ 電磁調理器具などに変更。あるいは代わりに行う

人の能力は、使わなければさびついてしまいます。そのため、かかわりすぎもNG。介入しすぎると、廃用症候群になってしまいます。かといって、できないことをさせると、精神症状が悪化しがち。
何ができて、何ができないのかを細かく評価し、“等身大”のかかわりを行うことが大切です。

「寝てくれない」に対して、どう対処すべき?

もう一つ、例を挙げましょう。
「寝てください」と伝えても、「わかりました」とニコニコ笑顔で返事をするのに、一向に眠ってくれない…。そんなときには、どうすればいいのでしょうか?
もちろん、すぐに睡眠薬を…ではありません。

「寝る」という行為にも、「寝巻きに着替える→寝室に行く→ベッドに腰掛ける→横になって枕に頭をつける」といった段階があります。
アルツハイマー型認知症の人は、複数のことを同時に行うことが苦手という特徴があります。「まず、○○をしましょう」「次に○○をしましょう」と、一つひとつ誘導してあげることが大切です。

新診断基準! 記憶障害がなくても、認知症

さて、冒頭で、「忘れる」という症状が必ずしも記憶障害に関連しているとは限らないということを説明しました。実は、認知症の診断においても、記憶障害がみられなくても、認知症と診断されるようになっています。

2011年、アルツハイマー型認知症の診断基準が27年ぶりに改定されました。これまでは、1984年に発表された診断基準が使われていました。この診断基準では、「記憶およびその他の認知機能領域で進行性の低下がある」と、記憶障害を必須としていました。

ところが、2011年に米国立老化研究所(NIA)とアルツハイマー病協会(AA)が発表した新たな診断基準では、記憶障害は必須ではなくなったのです。新診断基準の概要は次の通りです。

  1. 仕事や日常生活に支障をきたす
  2. 以前と比べ、実行機能が低下
  3. せん妄や主要な精神障害では説明されない
  4. 認知機能の低下が、病歴と客観的な認知機能検査で確認される
  5. 下記のうち、2領域以上の認知機能あるいは行動異常が存在
    • 新しい情報の記銘・記憶障害
    • 論理的思考、実行機能、判断力の低下
    • 視空間認知機能低下
    • 失語
    • 人格・行動・態度の変化
介護者のストレスケアは「エビデンスB」

また、2010年には、「認知症疾患治療ガイドライン2010」(監修:日本神経学会)が策定されました。これは、2002年に公開された「痴呆疾患治療ガイドライン2002」を改訂したものです。

このガイドラインでは、認知症の治療として、医学的アプローチ(=薬物療法)を開始する前に、「適切なケアやリハビリテーションの介入を考慮しなければならない」としています。適切なケアとは、生活障害を改善するために、認知症の人がその人らしく暮らせるように支援すること。リハビリテーションとは、認知機能や生活能力、生活の質の向上をめざすものです。

ただし、「どの程度のエビデンスがあるか」を示すエビデンスレベルをみると、最もエビデンスが高い「A」に当たるのは、「認知機能障害に対する有効な薬物」のみ。
ガイドラインを抜粋したものを見てみましょう。

【アルツハイマー型認知症】
(1)認知機能障害に対する有効な薬物
 ドネペジル:A  リバスチグミン:A  ガランタミン:A  メマンチン:A

(2)非薬物療法
 Reality Orientation(現実見当識訓練):C1  回想法:C1  認知刺激療法:C1
 運動療法:C1  音楽療法:C1  光療法:C1  脳脊髄液シャント術:D

(3)ケアのポイント
 介護者教育:B  介護者のストレスマネージメント:B
 Person-Centered Care(パーソンセンタード・ケア):C1
 バリデーションセラピー:C1

薬物療法に次いでエビデンスレベルが高いのが、「介護者教育」「介護者のストレスマネージメント」です。エビデンスレベルは「B」と、薬物療法に比べれば低いものの、大切な部分です。
アルツハイマー型認知症の人は家族に対する感謝の気持ちを持ちながらも、なかなかそれを表現することはありません。そのため、介護している家族は「報酬がない」と言われることがあります。
認知症の人と家族にかかわる医療職、介護職は、「誰がつくっているの?」「美味しい?」「薬はどうやって管理しているの?」といった質問を本人にしながら、感謝の気持ちを引っ張り出すなど、認知症の人と家族の気持ちが相互に通い合えるよう、橋渡しをすることも大事な役割。家族、介護者が安心し、心に余裕がうまれれば、認知症の方にもより優しく接することができるようになります。

取材・文 橋口佐紀子(医療ライター)

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