有識者コラム導入から活用のサポートまで、居宅のデジタル化を徹底支援する東京都の狙い 【後編】
厚生労働省では、介護現場におけるICT化を進めており、各自治体では地域医療介護総合確保基金を使用して、ICT導入を支援するさまざまな事業を行っています。そこで、東京都福祉局高齢者施策推進部介護保険課長の西川篤史さんと、実際の支援に携わる東京都福祉保健財団福祉情報部部長の渡部裕代さんに、インタビューを実施しました。後編となる今回は、東京都の居宅介護支援事業所におけるICT導入支援の実績や、今後の課題などについて伺います。
介護現場改革促進事業の1つであるデジタル機器導入促進支援事業では、記録業務・情報共有業務・請求業務までの作業を、一気通貫できる介護業務支援システムを導入する際に補助を行います。すでに業務支援ソフトを導入している場合でも、機器やソフトウェアを追加することで、一気通貫する介護業務支援システムが完成する場合は、追加の購入分も補助の対象となります。 居宅介護支援事業所で多いのは、タブレット端末やスマートフォンなど記録・情報共有業務に関する機器の申請です。 タブレット端末などを導入した事業所では、多くの職員が業務の効率化や作業負担の軽減を実感しているようです。例えば、従来は訪問先で手書きしたメモを事務所に戻って清書していたのが、タブレット端末があれば、訪問先で利用者や家族の話を聞きながら入力するだけで済みます。記録した情報を事業所内の職員間や外部のサービス提供事業所とも共有できる上、担当者が不在の場合も対応がスムーズで、引き継ぎや申し送りの手間やミスも省けるというメリットもあるようです。 さらに、出退勤情報を電子化することで直行直帰しやすくなったなど、働き方の改善にもつながっています。 「訪問先から戻っての記録入力に時間がかかる」「紙の管理が多いため改善したい」「情報共有がしっかりできていない」といった悩みを抱えているケアマネは多いと思います。そうした悩みの解決に、ICT化は大いに役立つと思います。(渡部裕代さん) 東京都では、2018年度から介護事業所に対するデジタル補助事業を行ってきました。2021年度からは、事業規模を拡大し、現在のデジタル機器導入促進支援事業を実施しています。こうした長年の取り組みもあって、デジタル機器や介護業務支援ソフトを導入する介護事業所や居宅介護支援事業所は、かなり増えてきたと感じています。積極的な事業所は、すでに何らかの形でICTを導入しており、一気通貫の環境を整えた事業所も増えつつあります。 今後は、まだICT化に踏み出せない事業所に対し、どのようにアプローチしていくかが課題です。介護業界には、端末を買う資金を捻出するのも一苦労するような小規模事業所が多く、ICT化の大きな“壁”となっています。東京都では3年に1度、「高齢者保健福祉計画」という、老人福祉計画と介護保険事業支援計画を一体化した基本計画を策定しています。現在は、来年度から始まる第9期高齢者保健福祉計画を策定中です。介護現場改革促進事業についても、ICT化のさらなる普及に向けて「次の一手」を議論している最中です。まだ一歩を踏み出せない事業者にもICT化のメリットを広く知ってもらい、導入を後押しするような施策を考えていきたいですね。(西川篤史さん) 先にお話ししたように、居宅介護支援事業所がICT化を進めると、そのメリットは記録業務の効率化や情報共有など、極めてわかりやすい形で表れてきます。 だからこそ、ICTを導入していない事業所は、どんな効果が期待できるのかについて、情報収集に取り組んで下さい。そして、シミュレーションしてみてください。自分たちの事業所は、ICT化に向けて何から手をつければいいのか。どのようにすれば無理なくICT導入と業務の効率化を実現できるのか。そのために活用できる制度や補助金はあるのか……。私たち東京都福祉保健財団では、介護現場のICT導入支援のためにさまざまな情報提供や相談に応じていますので、気軽にお問い合わせいただければ幸いです。(渡部裕代さん)業務だけでなく、働き方の改善にもつながるICT化
小規模の事業所にもオンライン化を普及することが課題
まずは情報収集から、ICT化に向け一歩を踏み出そう
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