“テレワークケアマネ”の創り方
テレワークに欠かせないICTツールとは?
- 2023/12/15 09:00 配信
- “テレワークケアマネ”の創り方
- 次田芳尚
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弊社は、テレワークを前提として立ち上がりました。
行政の指定を受けている居宅介護支援事業所なので、相談室や鍵付きの書庫はありますが、一般的な会社や事業所にある電話やファクス、タイムカードなどはありません。ファクスを送受信できる複合機はありますが、電話回線にはつながっていません。
電話は「電話アプリ」を使っています。またファクスは、インターネット専用のファクスを自社の仕組みで運用しています。タイムカードの機械はありませんが、給与計算と人事・労務管理ができるクラウドサービスのアプリで、出勤・退勤時間を“打刻”できるようにしています。
「固定すべきものを固定しない」という選択
ここからは電話、ファクス、タイムカードをどのように活用しているのか、具体的な方法をお話します。
「電話アプリ」について
弊社のケアマネジャーには、個人携帯に会社で用意したアプリをインストールしてもらっています。こうすることで、会社の代表番号と会社の個人番号の両方で受信・発信ができます。
会社の代表番号の使用者は、アプリの設定画面で切り替えることができ、あらかじめ決めておいたローテーションに沿って担当者を設定します。実際は、平日昼間はバックオフィス(※後述)のメンバー、平日夜間はケアマネジャー、土日祝日は役員が担当しています。
特定事業所加算を取得しているため、24時間365日応対できるようにしていますが、会社の個人番号については、休日中は留守電に切り替えてもらい、受信しないルールになっています。留守電の音声案内は携帯の持ち主の声を使い、緊急時は会社の代表番号への掛け直しをお願いしています。夏休みなどの長期休暇の際は、別のケアマネジャーに転送して対応してもらいます。
「電話アプリ」を使うメリットは、個人用と会社用の携帯を2台持たなくて済む点です。他方でデメリットは、個人携帯にインストールして使うので、通信料金が個人負担になってしまうことですが、弊社では「ケアマネジャー手当」を支給しており、仕事用の通信費用はこれに含まれるという考え方です。
バックオフィスとは…居宅介護支援事業所に所属している事務職員のことで、弊社には現在、常勤と非常勤を合わせて4名のバックオフィスメンバーがいます。事務所に出勤できるのは2名で、郵便物の処理や事務所の維持・管理などに当たっています。残る2名は、400キロほど離れた道東で暮らしているため、フルリモートで仕事をしています。北海道の広さを感じていただけますか?
インターネットFAXについて
<送信>
介護ソフトに登録してあるファクス番号を利用→自社のアプリで送信
※エラーメッセージは個人ごとに確認可能
<受信>
ファクスを電子メールで受信→チャットスペースに自動連絡→バックオフィスのメンバーが周知→各ケアマネジャーが確認→ご利用者のフォルダへ移動などの対応
インターネット専用のファクスは昔からありましたが、コロナ禍で在宅ワークが推奨された際、一気に需要が高まり普及しました。個人で使う分には良いサービスなのですが、会社の代表番号で送受信する場合、少し使いにくいところがあるため、工夫が必要です。
インターネットFAXの使いにくい点は、相手がなんらかの理由で受信できないなど、送信の際にエラーが生じてしまうと、全ての関係者に電子メールなどでメッセージが届くことです。複数のケアマネジャーの名前で送信している場合、全員がそれを確認する必要があります。
また、1つのファクス番号にひもづいたアカウントを共同で利用する仕組みのため、それぞれがアドレス帳に登録してしまうと、ファクス番号が重複したり、その人にしかわからない名前が付いたりするなど、アドレス帳がわかりにくいものになってしまいます。
これらの問題を解消するため、自社で送信用のアプリを作って活用しています。このアプリを使うと、送信したケアマネジャーにのみ、送信エラーを通知することができます。またファクスのアドレス帳は、介護ソフトの事業所登録情報から自動的に取得するようになっていて、その情報はアプリ間で共有されます。
ファクスを受信する際は、社内のコミュニケーションインフラであるチャットを使っています。ただ、受信にはまだまだ課題があります。月末や月初めにサービス実績が送られてくる時などは多数の受信があるため、見落としが発生するなどの問題もあります。
勤怠管理のアプリについて
弊社のケアマネジャーは、「企画型裁量労働制」という雇用契約を会社と結んでいます。所定労働時間の7時間を勤務したとみなすという内容で、出勤・退勤時間は自由裁量となっています。
このため、出勤・退勤時間を記録する必要はありませんが、運営指導などで提出することがあるため、勤怠管理もできる給与計算のアプリで“打刻”してもらっています。
運営指導の際、行政の方と話し合った末、非常勤のみ“打刻”が必要という扱いになりました。常勤については、給付管理の際に逓減管理を別途行っておくことで不要となりました。(保険者によって対応が異なるため、指定権者に確認してください)
有給休暇や慶弔休暇といった休暇申請については、各ケアマネジャーが前述のチャットを通じて上司に申請。申請を取りまとめた上司が、バックオフィスに対応を依頼すると、バックオフィスメンバーが前述のアプリに申請内容を登録してくれます。
「固定すべきものを固定しない」という選択、いかがでしたでしょうか?
会社の設立前にテレワークを行うと決めていたからこそ、できた方法かもしれませんが、参考になれば幸いです。
次回は、「“テレワークケアマネ” 働きやすさへの挑戦」というタイトルで、仕事の制度設計からアナログ的な工夫まで、幅広くお伝えしたいと思っております。

- 次田芳尚
- 日本福祉教育専門学校卒業後、社会福祉法人が運営する在宅介護支援センターのソーシャルワーカーに。その初任給で当時最先端だったWindows 95搭載のパソコンを購入した。職場の業務改善プロジェクトへの参加をきっかけに、「ICT化」と「業務改善」が自身のライフワークに。老健の相談員などを経て35歳で独立し、コンサルタントとして事業所の支援をスタートさせる。2021年4月に株式会社279(つなぐ)を設立し、テレワーク型の居宅介護支援事業所の運営を開始。現在、同社代表取締役のほか、介護現場のIT活用を支援するNPO法人「タダカヨ」の理事なども務める。
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