CMO特別インタビューCMO特別インタビュー

CMO特別インタビュー

※この記事は 2023年6月19日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

カフェに居宅を併設 パンを焼くケアマネ /亀山元(カフェ運営、ケアマネジャー)

沖縄市南部に隣接する北中城村は、市区町村別の女性の平均寿命で3回連続日本一に輝いたこともある健康長寿の村として知られる。村内のベーカリーカフェでパンを焼くのは、隣接する居宅介護支援事業所「アカラ」の管理者、亀山元さんだ。カフェは、高齢者や親子連れが集う地元の人の憩いの場。もともと障がい福祉の現場で働いていた亀山さんは、「将来、障がい者の就労支援も行っていきたい」と夢を語る。全国的にも珍しい、パンを焼くケアマネに話を聞いた。

妻さやかさん、第5子・雫ちゃんと共に笑顔の亀山さん

―パン作りと居宅のケアマネの両立は難しいと思いますが、毎日どんな風にお仕事をされているんですか。

朝5~6時に起床して、大体9時頃までパンを焼いてから、居宅の仕事を始めます。パンの販売はアルバイトに任せています。

他のケアマネさんから、「仕事の時間配分はどうしているの?」とよく聞かれますが、件数が少ない時はパン作りの仕事に集中して、件数が増えてきたら、ケアマネの仕事にシフトします。収入だけを考えると、居宅の仕事の方が大きいかもしれません。

―パンはいつもどれぐらい焼いているんですか。

大体、20種類ぐらいですかね。売れ筋は「かぼちゃあんバターパン」で、リンゴを使った天然酵母の液体で生地を膨らませています。無添加なので、体にもいいですよ。地元の特産のパッションフルーツを生地の中に入れて焼き上げたパンも人気です。

実はもともとは“ご飯派”で、パンはそれほど好きではありませんでした。だから、苦手な方も食べたくなるようなパン作りを目指しています。

無添加で素材にもこだわったパン

「自分からパンのことは話さない」

―居宅の利用者さんは、何人ぐらい担当されているんですか。

大体30人ぐらいです。要支援の方も10人ほど担当しています。北中城村の方は少なくて、近隣の宜野湾市や沖縄市の方が多いです。居宅のほかに、認定調査員の仕事も8件ぐらいやっています。

―パンを焼いていることについて、利用者さんやご家族から反応はありますか。

周りの方から事前に聞いていて、尋ねられたらお伝えしますが、自分からパンのことを話すことはありません。別に隠しているわけじゃないんですけど、そこは明確に線を引いています。

介護の関係者や行政の方からは、覚えてもらいやすいという実感はあります。先日、地元紙に取り上げてもらった際、そのことが主任の研修で話題になったと伺いました。

認定調査員の方や訪問看護の方がパンを買いに来てくださることもありますし、ケアマネさんから「カフェをやりたい」と相談を受けることもあります。

パン作りは「利用者の接し方に似ている」

―なぜパンを焼き始めたのですか。

もともとは、自宅に併設するベーカリーカフェで、妻がパンを焼いていました。5番目の子どもが生まれたタイミングで、勤めていた有料老人ホームを離れて1年間、育児休暇を取った時に、妻にパンの焼き方を教わったら、面白くてすっかりハマってしまって(笑)。ちょうどその頃、コロナでカフェを閉めていたので、ある意味、パン作りの良い修行期間になりました。

パンって、生地を発酵させる必要がありますよね。気温や湿度に影響されやすくて、それがある意味、利用者さんとの接し方に似ているかな、と。接する時間や距離の感覚が一人ひとり違うというか。パン作りは、ケアマネ業務に通じるものがあると思っています。

―カフェで地域のイベントも開いているそうですね。

この間も、行政からの依頼で認知症カフェを開催しました。それから、認知症サポーター養成講座もやっています。介護以外では、行政から産後ケア事業も受託しています。妻が元保育士なので、助産師さんや看護師さんと一緒に、お母さんと1歳未満の赤ちゃんのケアをしています。

以前借りていたアパートが手狭になって、4年ぐらい前に今の場所に越してきたんですが、こちらに来た時から、地域に根ざした場所にしたいと思っていました。12畳ぐらいの広さはあるので、15人は入ることができますから。

地元の方がふらっとやって来て、世間話をしたり、時に悩みを相談したりする。高齢者も気軽に立ち寄れて、なんとなく居心地がいい―。そんな場所を目指しています。実際、お客様から介護の相談を受けることもあります。

―昨年春、事業所を立ち上げましたが、当初からカフェに併設する予定だったのですか。

いいえ。コロナがある程度収まり、お客様に自分が焼いたパンを提供するようになって、「家でパンを焼きながら、仕事もできるようにしたい」と考えたのがきっかけです。

当初、ケアマネ一本だと、たとえ件数ぎりぎりまで持ったとしても、収益的には厳しいと思っていました。介護保険の別なサービスと併せてやることは考えていましたが、まさかパン屋と一緒にやることは頭にありませんでした(笑)。でも考えてみると、別に介護保険にこだわらなくても、お金を稼ぐことはできますよね。

客との会話で「ケアマネの幅が広がる」

―ケアマネの働き方について、何か思うことはありますか。

年々、仕事の範囲も広がっているので、皆さん、とにかく忙しいですよね。書類も多いですし。だから、つらくて辞めてしまう。頭の中が仕事でいっぱいになってしまうと、「ケアマネはこうではなくてはいけない」と、型にはまってしまう気がします。でも、自分がやりたいようにやればいいと思うんです。

実はもともと東京出身で、6年前に沖縄に移住してきました。ケアマネの仕事は、利用者さんの自宅を訪問することがメーンです。場所で仕事の内容が変わるわけではないので、ある意味、「どこでもできるな」と思って、長女が小学校に入学するタイミングで、夫婦共に好きだった沖縄にやって来ました。

たまにカフェの店頭に立つと、介護認定を受けていない団塊の世代の方々のお困り事を聞くこともあります。こういった機会は、ケアマネの業務にはないので、とても貴重な経験ですし、ケアマネとしての幅が広がると感じます。2つの仕事を持つことで、ケアマネ業務を客観的に見られるようになった気がしています。

―今後の目標はありますか。

ケアマネになる前は、障がい福祉の分野で働いていたので、障がい者のための居場所を作りたいという思いはあります。

東京で就労継続支援B型の事業所で働いていた際、いわゆる「65歳の壁」に直面しました。障がいを持つ方が高齢になっても、継続的に支援したかったので、8年ほど前にケアマネの資格を取って、高齢の障がい者を対象とした事業所で働き始めました。

今のお店は手狭なので、可能であれば2店舗目を作って、障がい者の就労支援などもやっていければと思っています。

取材・構成/敦賀陽平

亀山元(かめやま・げん)
東京都出身。立教大卒業後、都内の就労継続支援B型事業所での勤務を経て、2016年に沖縄へ移住。有料老人ホームで管理者などを務めた後、21年4月、第5子の出生を機に育児休業を取得。育休中、自宅でベーカリーカフェ「cotonowa(コトノワ)」を営む妻からパンの作り方を教わり、その奥深さと魅力を知る。昨年4月、居宅介護支援事業所「アカラ」を併設し、高齢者の居場所づくりだけでなく、行政からの委託で産後ケア事業も行う。ケアマネジャー、介護福祉士、精神保健福祉士。40歳。

スキルアップにつながる!おすすめ記事

このカテゴリの他の記事

CMO特別インタビューの記事一覧へ

こちらもおすすめ

ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報

介護関連商品・サービスのご案内

ログインしてください

無料会員登録はこちら

ログインできない方

広告掲載・マーケティング支援に
関するお問い合わせ

ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは

全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。

ケアマネジメント・オンラインの特長

「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。

ご質問やお問い合わせはこちら

お問い合わせページ