

CMO特別インタビュー
日本一の介護プレゼンター決定 群馬で大会主催 /髙橋将弘(日本介護福祉魅力研究協会・代表理事)
- 2022/11/10 09:00 配信
- CMO特別インタビュー
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介護福祉の仕事のやりがいを発信できる人を増やし、離職防止や業界全体のイメージアアップにつなげたい―。こうした思いから、今年4月、同じ志を持つ仲間3人と共に、一般社団法人日本介護福祉魅力研究協会を設立した。今月11日の「介護の日」には、クラウドファンディングで集めた資金を元に、介護のプレゼンター日本一を決める「第1回ベスト介護JAPAN」を群馬県前橋市内で開催。当日の模様はインターネットでライブ配信される予定だ。同協会発足の背景などについて、髙橋将弘代表理事に聞いた。
―日本介護福祉魅力研究協会を立ち上げた経緯を教えてください。
介護福祉の業界には、一般的にいわゆる「3K」に代表されるマイナスなイメージが強くありますし、高齢者の虐待や認知症の方の交通事故といったネガティブなニュースばかりクローズアップされがちです。
しかし、厚生労働省の発表を見ると、介護現場で働く人の数は少しずつ増えているんです。もちろん需要も増えていますから、決して人手が満足にうるおっているわけではありません。
新たに介護福祉の仕事についた人の中には、介護の仕事にやりがいや魅力を感じている人がたくさんいます。こうしたポジティブな情報を、私達現場の人間がどんどん発信していく必要がありますし、そのためには、介護福祉の魅力をしっかりと言葉で伝えられる人を増やさなければなりません。それが、法人を立ち上げた大きな理由です。
11日に開催する「ベスト介護JAPAN」は、介護のポジティブな情報を発信する登壇者の職員にスポットライトが当たる場をつくることが目的です。
とはいえ、4月に法人を立ち上げたばかりで、大きなイベントをする資金がなかったので、今回、時代の流れで、クラウドファンディングで資金を調達することになりました。介護福祉業界の人材不足といった社会課題の解決に向けて動いているので、私達、介護福祉現場の人だけでなく、世の中の人も、みんながウィンウィンの関係になることを考えています。
今回、民間の多くの企業様に協賛していただいているほか、群馬県や前橋市の行政、地元の上毛新聞や群馬テレビといったメディア、群馬県介護福祉士会、群馬県地域密着型サービス連絡協議会の職能団体など、さまざまな団体に後援してもらっています。ただ、お祭り騒ぎのイベントをして「楽しかったね」で終わらせるのではなく、登壇してくれた参加者や観客、スポンサーの方にアンケート調査を行って課題を把握し、次回につなげていきたいとも考えています。
―介護従事者がプレゼンテーションをするイベントは他にもあります。どう差別化を図っていきますか。
「ベスト介護JAPAN」は、事業所の垣根を超え、現場で働く介護職員や介護を学ぶ学生一人ひとりにスポットを当てることを目指しています。職場が同じだからといって、介護観も同じとは限りません。心が震えた利用者さんとのエピソード、人生を変えた現場や実習での学びといった実体験を言語化し、根拠に基づいて伝える。それがひいては、社会課題の解決や介護現場のイメージアップにつながる。いわば、業界全体のブランディングをしたいと考えています。
将来は主要都市でのエリア大会も
―介護現場は長年、「3K」と言われてきました。2022年4月のタイミングで協会を立ち上げたのはなぜですか。
2025年には、団塊の世代が後期高齢者になり、その前年に、介護報酬と診療報酬のダブル改定も控える中、私はコロナ禍が始まった2020年から、動画投稿サイトのユーチューブで自分の考えを発信してきました。法制度にあぐらをかくのではなくて、現場の私達自らが立ち上がって行動する必要があると考えたからです。
時代の流れを見た時、おそらく2025年には、5G(第5世代移動通信システム)が広く普及しているでしょう。3Gは2000年、4Gは2010年に登場しましたが、どちらも5年後には世の中に広がりました。動画での情報発信に早く取り組む必要があると思ったのです。
コロナ禍で対面が難しくなったことで、Zoomなどのオンライン会議が一気に普及し、ネット上で自分の意見を発信しやすい時代が到来したことを実感しました。オンラインを活用したハイブリッド形式で、プレゼン大会を開催する環境が整ったのです。経済活動が少しずつ戻り、温めていた計画を実行に移すタイミングが、たまたま2022年だったのだと思います。
―「ベスト介護JAPAN」は、全国各地のプレゼンターをオンラインでつなぐことを想定しているのでしょうか。
県外からの参加者も数人いらっしゃいますが、今回はあくまで、リアルの場でプレゼンをしてもらい、その模様を動画でネット配信する予定です。
将来の展望としては、全国の主要都市でエリア大会のようなものをやった後で、決勝戦を開催することも考えています。世界一の高齢者大国・日本の動向を世界が注目していると思います。法人名に「日本」と付けたのは、世界へ向けて発信することも見据えているからです。もちろん、これは大きな夢ですが。
協会設立は亡き弟との夢の延長線
―髙橋さんはいつ、介護業界に入られたのですか。
23歳の時です。今年で17年になります。それまでは、自動車の板金塗装など、全く畑違いの仕事をしていました。
―経営する介護事業会社の名前は、亡くなった弟さんの名前だそうですね。
介護の仕事についたばかりの頃、よく弟に介護の話をしていました。「認知症のじいちゃんばあちゃん、なんであんなに愛らしい笑顔なんだろう」とか、こういう話をするのがめちゃくちゃ楽しかったんです。
そうしたら弟も、「介護の仕事をやりたい」と言いだして、「自分たちの思う理想の事業所を作ろう。そうしたら、そこで働くスタッフも笑顔になれるし、仲間が集まってやりたいケアをやれば、地域も家族も笑顔になれるね」と、そんな話を夜な夜な二人でしていました。
でも、弟は23歳の時に白血病で先に旅立ち、夢をかなえることができなかった。
社名を弟の名前にしたのは、あの時、弟と語り合った夢を実現させたいという思いがあったからです。集まったメンバーと一緒に、理想の事業所をつくろう、と。今回の協会設立も、その延長線上にあると思っています。
声を出せない人に「勇気与えたい」
―ヘルパーの有効求人倍率は15倍にまで膨れ上がっています。介護人材が充足しない原因はどこにあると思いますか。
人手不足は、介護だけの問題ではありません。日本中で少子高齢化が進む中、介護よりも人手不足が厳しい業種もあります。エッセンシャルワーカーと言われている介護従事者は、処遇改善加算などでむしろ国に守られているといえます。
介護現場で働く人の数は徐々に増えてはきています。その意味では、国の魅力発信事業がうまくいっているのでしょう。ただ、高齢者が急増する中、支え手となる子供の数が減り続けているので、充足感を得られないのだと思います。
業界内で介護人材を奪い合うのも問題です。業界のイメージを向上させることで、他業種から人を呼び込まないといけないのに、お互いにつぶし合っていては一向に前へ進みません。
介護業界は、税制の優遇措置を受けている法人もあり、他の業界に比べると、まだましな方だと思います。 大事なのは、行政や制度のせいにするのではなく、介護従事者一人ひとりが声を挙げて行動することだと思います。
介護の仕事に対して熱い思いを持つ人は大勢います。でも、それを言葉にしたら、事業所の中で白い目で見られるとか、出る杭は打たれるとか、踏み出したくても踏み出せない人もいると思います。そういう人たちとつながって、「俺たちは仲間だよ」「声を大にして語っていいんだよ」「介護は素敵な仕事なんだよ」と、勇気を与え、一緒に協力関係を築けたらいいなと思っています。
取材・構成/敦賀陽平
- 髙橋将弘(たかはし・まさひろ)
- 群馬県出身。高校卒業後、自動車の板金塗装工などを経て、23歳の時に介護業界へ。弟の晃希さんと理想の介護施設の立ち上げを夢見ていたが、晃希さんは白血病で他界。自身は認知症介護の現場などを経て2017年春、弟の名を冠した株式会社晃希を設立、住宅型有料老人ホームなどの運営を始める。業界のイメージアップを図ろうと、今年4月には一般社団法人日本介護福祉魅力研究協会を発足した。県介護福祉士会前副会長。現在、県認知症ケア専門士会会長などを務める。介護福祉士、ケアマネジャー、認知症介護指導者などの資格を持つ。40歳。
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