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「地域共生型」の先駆け “ケアマネ市長”に聞く /松本哲治(沖縄・浦添市長)【前編】

ケアマネジャー出身の市長がいる。沖縄県浦添市の松本哲治市長だ。松本市長は、米国の大学で老年学を学んだ後、同市内の老健などでの勤務を経て、2002年にNPO法人を設立。事業所の経営者、そしてケアマネとして、いち早く「地域共生型」の福祉・介護に取り組んだ。全国的にも珍しい“ケアマネ市長”に、自身の半生について語ってもらった。

松本哲治市長

―なぜ、介護・福祉の道へ進んだのですか。経緯を教えてください。

二十歳ぐらいの時に祖母を亡くして、それがずっと心に引っ掛かっていました。父方の祖父母は戦争で亡くなっていましたし、母方の祖父も早くに他界していたので、私には、母方の祖母しかいなかったんです。

祖母は長い間、療養型の病院に入院していて、母はしょっちゅう、「おばあちゃんの顔を見に行こうか?」と誘ってくれたんですが、ちょうど10代の多感な頃で、やりたいことがたくさんあって、「今日は忙しい」とか、なんだかんだ言い訳をして行きませんでした。

今振り返ると、ひどい話ですよね。入院から7~8年経った頃、祖母が危篤になり、その時になってようやく、われに返りました。病院で寝たきりの祖母と対面して、その変わり果てた姿にショックを受けました。本当にやせ細っていて、子どもの頃よくかわいがってくれた、あのおばあちゃんと同一人物か、というぐらいの変わり様でした。

その後、祖母はすぐに亡くなってしまうんですが、“わだかまり”のようなものが残ったというか、たった1人のおばあちゃんに何もしてあげられなかった、何もしなかったことが、心に重くのしかかりました。

それからしばらく経った大学4年の時、学校を半年ぐらい休んで、世界をヒッチハイクで回りました。ところが、滞在先のイギリスでお金が無くなり、知的障がい者のための施設に泊まり込みで働くことになります。

イングランド南西部にあるエクスターという小さな都市だったんですが、その施設は、広大な田園地帯の中にありました。彼らは昼間、農作業をしていたので、夕食を準備したり、洗濯をしたり、お風呂に入れたり、戻ってきた彼らの世話するのが、私たちの仕事でした。これが意外と楽しくて、今振り返ると、この時の経験が、介護の仕事についた原体験になっていると思います。

コンサルから一転、介護・福祉の世界へ

―大学卒業後は、東京の金融コンサルティング会社に就職します。

その仕事がやりたくてついたというよりは、何をしたらいいのかわからないまま就活して、「早く沖縄から出たい。東京へ行こうかな」みたいな感じでした。金融取引の仕事をしていたので、巨大なお金が動くこともありましたが、時々、誰のために働いているのかわからなくなることがありました。

その頃、週末は施設にボランティアに行っていたのですが、“手応え”が全然違うんですよね。みんな手を取って、「松本さん、ありがとう!」と言ってくれる。誰かのために全力を尽くして感謝の言葉をもらう。「仕事って、こうじゃないといけないよな」と思って、改めて介護や福祉の仕事について考え始めました。

「介護や福祉の世界に進もう」と決意したのは28歳ごろのことです。施設の先生に相談したら、「いちから始めるんなら、海外で勉強してきたら」と言われて、アメリカの大学で老年学を勉強することに決めました。

―日本の介護との違いを感じることはありましたか。

ありましたね。アメリカは費用に応じて、本当に素晴らしいナーシングホームから、最低限のケアしかしない施設までさまざまでした。移民を安く雇用していて、言葉すら通じない中でケアが行われているところもありました。当時、日本では「おむつ外し」が始まっていたのに、「おむつを着けているから、放っておいていいんじゃない」と言われたこともあります。

日本人はお年寄りを敬うので、例えば、車椅子の方と話をする際、膝を落として、目線を自分と同じ高さにします。丁寧にケアをするのは当たり前だと思っていたんです。でも、アメリカは全然違っていて、平気で利用者さんをまたいだりする。私はそれを見て、すごく衝撃を受けましたし、「日本の介護は世界で通用する」と確信しました。

―帰国されたのはいつですか。

1997年です。ちょうど、地元の医療法人が老健を開設するタイミングだったので、そこにお世話になることになりました。

まだ介護保険制度が始まる前でしたが、その法人は、県内でも有数の総合病院を持っていて、救急から急性期医療、リハビリ、老健、居宅サービスまで、幅広いケアをやっていました。医療と介護を流れの中で学べたことは、大変勉強になりましたね。かかりつけ医との連携についても知ることができ、地域のドクターや医師会の方々とのネットワークもできました。

「地域共生型」目指して独立

―2002年に独立し、NPO法人を立ち上げます。

とても充実した毎日を送っていたんですが、介護保険制度が始まってから、自分がやりたいことと法人の事業との間にずれを感じるようになりました。

私はより地域に根ざした事業所を作りたいと思っていました。両親の介護をしながら、障がいを持つ子どもの面倒を見ている家庭もあります。お孫さんからおばあちゃんまで、地域ぐるみのケアをしたいと考えていました。

当時働いていた法人は、障がい福祉サービスを提供していなかった上、近隣の5市町村が対象エリアでした。例えば、雨が降る中、デイサービスの送迎で片道1時間かけて利用者さんの家に行くと、1人の送迎で2時間運転することになります。障がいを持つ子どもが数軒隣にいて母親が苦しんでいても、こちらは何もできません。こうした不合理な状況に対する不満が、自分の中で大きくなっていきました。

―今で言う「地域共生型」を目指していたのですか。

そうですね。NPO法人のパンフレットにも、「エリアは浦添市に限定しますが、対象者は限定しません」と明確にうたいました。浦添市内であれば、介護が必要な方だけでなく、障がいをお持ちの方も、子どもから高齢者まで、全て引き受けるスタンスでした。まだ地域密着型サービスが始まる前のことです。

一緒に法人を立ち上げたパートナーは介護福祉士、私は社会福祉士、ケアマネでしたから、プランニングを全て担当、パートナーがケアを統括する形でNPO法人をスタートさせました。

「鍛え上げてくれた利用者」

―ケアマネ時代のエピソードはありますか。

鮮明に覚えているのが、担当件数の多さです。多い時は70件を超えていたと思います。とにかく忙しくて、一度、面談した記録は残っているのに、全く記憶が無いことがありました。

その利用者さんは、ほとんどサービスを使わないまま、急きょ体調を崩されて、病院で亡くなりました。ご家族がごあいさつに訪れた際、「いろいろご相談に乗っていただき、ありがとうございました」と、お礼を言われたのですが、お顔が思い出せないんです。

記録ファイルを見たら、間違いなく私がインテークをやっている。確かに面談をしているはずなのに、記憶だけが無い。それぐらいの慌ただしさでした。

NPO法人で居宅介護支援事業所を立ち上げたばかりの頃は、他の施設や事業所が手を焼くケースを回されることも少なくありませんでした。選べる立場ではありませんでしたから、「自分たちのサービスを磨くんだ」と前向きに捉え、進んで受け入れましたが、本当に大変でしたね。

―いわゆる「困難事例」が多かったんですね。

今も忘れられない利用者さんがいます。その方は要介護5で、脳梗塞の後遺症で寝たきりだったんですが、頭はクリアだったので、無理な要望を言ってきたり、罵声を浴びせたりすることがありました。ヘルパーさんが泣きながら事務所に戻ってくることもありました。私自身も大げんかしたことがあります。

急に体調を崩されて、入院から1カ月後ぐらいで亡くなってしまうんですが、本当に苦労して支えていたので、お別れの時は涙がこぼれました。けんかし合う仲だったからこそ、思い出もたくさんあって、みんなで泣きながら、「自分たちと組織を鍛え上げてくれた人だったね」と感謝したことを覚えています。

取材・構成/敦賀陽平

松本哲治(まつもと・てつじ)
沖縄県浦添市出身。1991年3月、琉球大卒業。東京の金融コンサルティング会社に勤務後、96年に米カリフォルニア大バークレー校卒業(社会福祉学修士)。同市内の総合病院と介護老人保健施設での勤務を経て、2002年にNPO法人「ライフサポートてだこ」を設立。同法人では、訪問介護事業所や居宅介護支援事業所などを運営し、地域づくりに取り組む。2013年の浦添市長選に無所属で立候補し、初当選。現在3期目。ケアマネジャー、認知症介護指導者の資格を持つ。54歳。

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