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MSWに“選ばれるケアマネ”の条件とは?/野口百香(日本医療ソーシャルワーカー協会会長)

この春の診療報酬改定では、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)と居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの連携をさらに強化する仕組みが導入された。しかし、ケアマネの中には依然として、病院のハードルの高さを感じている人が少なくない。コロナ禍が長期化する中、ケアマネはMSWとどのように向き合うべきなのか。MSWに選ばれるケアマネの条件とは何か―。日本医療ソーシャルワーカー協会の野口百香会長に話を聞いた。

野口百香会長

コロナ禍2年も、病院の体制は変わらず

―コロナ禍になって2年余りが過ぎましたが、病院の状況に変化はありますか。

2020年からコロナ禍が始まり、同年4月に最初の緊急事態宣言が発令されました。あの時と比べると、市中の人の動きは大幅に増えたと思います。

一般市民は、緊急事態宣言やまん延(まん延防止等重点措置)が解除されれば、少し気持ちが緩むこともあるかもしれませんが、病院の体制そのものはほとんど変わっていません。患者さん、ご家族、関係機関に対して、当初の面会制限がそのまま続いています。

2020年の後半から、多くの病院でクラスターが発生しました。この影響は大変、大きかったと思います。院内で感染者や濃厚接触者が発生すると、医療スタッフが足りなくなり、病院の運営にも支障が出ます。私が働いていた病院でもクラスターが発生し、救急や入院はストップ、外来も縮小せざるを得ませんでした。収束までに相当の時間を要した、あの大変さを一度経験してしまうと、病院はそう簡単に手を緩められないと思います。

―居宅のケアマネジャーとの連携についてはいかがですか。

もともと、ケアマネジャーとは電話連絡を頻繁にやっていたので、その点は変わっていませんが、ケアマネジャーに病院に来てもらえない状況が今も続いています。

コロナ禍が始まったばかりの2020年5月、当協会がオンラインで会員に調査(回答数850、回収率15%)を実施し、診療報酬の「入退院支援加算」の算定に必要な1年間の対面による「介護支援等連携指導料」(※編注)の算定回数について尋ねたところ、約4割の会員は、達成すべき最低回数の3回すら達成困難と予想していました。
※病院の医師、看護師、MSWらと居宅介護支援事業所のケアマネジャーらが連携し、入院中の患者に退院後の介護サービスに関する説明や指導などを行った場合に病院側に支払われる診療報酬

コロナ禍が始まる前は、ケアマネジャーに病院に来てもらい、患者さんやご家族、場合によっては医師や看護師とカンファレンスを開き、リハビリの場面なども見学してもらい、関係者の認識を一致させた上で在宅に返すことを基本に取り組んできましたが、2020年以降は、それが一切できなくなっています。

当院でも、1階の外来エリアでケアマネジャーにお会いすることはできますが、入院患者さんについては原則、病棟内のみの移動になっているので、患者さんを交えてお話することができません。

ケアマネジャーに電話で患者さんの様子を伝えますが、やはり「百聞は一見にしかず」と感じます。実際に患者さんにお会いしてもらえば、その後の電話連絡もスムーズに進みます。今は、その共通認識がない中での情報交換になるので、不自由さは解消されていないと思います。

ビデオ通話が患者の介護力復活の契機に

―入退院調整でビデオ通話を利用することはありますか。

あります。当院でも、ご家族がビデオ通話を望む場合は、あらかじめ日時を決めて、個室を使用し、パソコンのモニター越しで患者さんと会話をしていただいています。

実は先日、こんな出来事がありました。要介護者の80代の夫を介護する70代の妻が、当院に入院してきました。夫は要介護2で、軽度の認知症があり、妻が入院してしまうと介護者が不在となるため、ケアマネジャーの調整で近くの地域包括ケア病棟に入院となっていました。

夫の入院期限の2カ月が迫った頃、妻である患者と今後の対応について話し合った際、患者は、夫の状態が分からないと「今の私に介護ができるかわからない」と話されました。夫の入院先のMSWから情報収集しましたが、電話だけでは詳細はわかりません。病状やADLを確認することはできますが、夫とは面識が無いため、その”全体像”がつかめないでいました。

そのうちに患者が、「決心をつけるためにお父さんと話がしたい」と話されたので、夫と入院先のMSW、夫の担当ケアマネジャー、患者と私、そして長女の6人でビデオ通話をすることにしました。この時、改めて「百聞は一見にしかず」と痛感する経験をしました。夫の状態を視覚で確認できた成果もありますが、妻である患者の表情がとても生き生きしたのです。

患者は腎臓疾患で、透析が必要な状態となり、「私たち、もう一緒に暮らせないかもしれない」とやや鬱傾向となっていました。ところが、パソコンのモニター越しに夫の姿を見た途端、食い入るように画面に近づき、「あら、お父さん、元気そうじゃないの。良かったわ」と、とても良い表情をされ、長女も私たちも大変、驚きました。ビデオ通話でそのような効果が得られるとは全く予想していなかったからです。

―コロナ禍でなければ、どのように対応されていましたか。

夫は1人では過ごせないので、どの道、地域包括ケア病棟に入院していただくことになったと思います。2人を直接会わせることはできないので、担当ケアマネジャーや遠方で暮らす長女に来院してもらい、間を取り持ってもらいながら調整したはずです。そして、その情報を患者に説明し、今後の方向性の選択を促したと思います。「そういうものだ」と思い込んでいました。

しかし、モニター越しではあっても直接、顔を会わせる対面の効果は驚くものでした。あの時、患者が「お父さん、今ご飯どれくらい食べてるの?リハビリはやってるの?歩く練習してる?」と尋ねた際、私たちは「夫を心配する力が、こんなに残っていたのだ!」と驚き、介護者としての役割を持つことが、患者の元気の源になっているのかもしれないと考えるようになりました。

あのビデオ通話で夫の姿を確認できたことで、患者には「早く家に帰りたい」というモチベーションが生まれたと思います。

―ビデオ通話は、「コロナ禍で対面できないから」というマイナスの代替手段として用いられていますが、これは平時でもプラスに働くという良い事例だと思います。多職種連携での活用についてはいかがでしょう。

活用されている事例はたくさんあると思います。しかし、居宅のケアマネジャーや地域包括支援センターでは意外にも、ビデオ通話の環境が整っていないところが少なくありません。

先ほどのエピソードでは、担当ケアマネジャーの事業所のネット環境が整っていたから良かったのですが、大手の事業所の方から、「ネットがつながっていない」と言われることもよくあります。また、ネットにつながっていたとしても、「マイクが付いていない」とか「カメラが付いていない」とか、必要な機器がそろっていないケースもあります。

プランの“すき間”を埋める姿勢を持って

―病院への“敷居の高さ”を感じているケアマネジャーも少なくありませんが、ケアマネジャーがMSWと連携する際に大切な視点は何だとお考えですか。

連携を考える際、入退院支援部門を窓口にすると、比較的スムーズにつながると思います。ケアマネジャーが病院に苦手意識を持っているのは、おそらく、なかなか接触できない医師の影響が強いのではないかと思います。何しろ忙しいので。

一口に病院と言っても、急性期から回復期、療養までさまざまな種類があります。特に急性期は、入院期間の短縮に加え、診療報酬の影響で、入退院支援部門が受け持つ患者さんの数が増えています。業務をこなすことに精一杯で、本来やらなければならない支援とは何なのか、原点を見失っているMSWもいるかもしれません。

ケアマネジャーの目には、MSWの支援が単なる“連絡係”のように映ることもあるかもしれません。しかし、少しお付き合いしてみてください。「この状況だったから、この支援で良しと判断した」といった根拠があるかもしれません。協働を重ね、互いの専門性が理解できてくると、「この人、こんなこと考えていたんだ」というところまで見えてきて、ケアマネジャーは信頼関係が深まることを経験できると思います。

―“選ばれるケアマネジャー”になるには、何が必要だと思いますか。

チームを組んで仕事をするので、やはり、同じ目線でケースと向き合えるかどうかが大切だと思います。患者さんの生きづらさをできるだけ理解し、その方が望んでいる生活をどのように保障するかというのが、私たちが取り組むべきことなので、そこに目線を合わせることが大切です。

また、ケアマネジャーとMSWが良好な関係を築ければ、それはおのずと地域づくりにもつながります。先ほどお話したMSWの「単なる“連絡係”」と同じで、“集客第一”に見えたケアマネジャーが、地域の拠点事業所となれるよう真剣に努力していることを知り、反省したこともありました。

実際に協働してみないとわからないと思います。その時、どんなアクションを共に起こせるのか、病院側はそこを吟味しているのです。

例えば、「この人ならば、地域の課題について一緒に語り合える」と思わせてくれる。決められた範囲の仕事だけじゃなく、自分がケアマネジメントを担当するに当たって、この地域に何が足りないのか、どうすれば問題を解決できるのか、こうしたことを一緒に考えながら取り組んで下さる姿勢が見えると、病院側は「この人と仕事がしたい」と考えるはずです。

自分のケアプランのどこに“すき間”があるかというのは、きっと、ケアマネジャーはわかっているはずです。ベテランになればなるほど。「ここに不具合が出るかもしれないので、一緒に考えてもらえませんか」と、駄目元で投げ掛けて下さるケアマネジャーとは協働する必要性を感じます。

先ほどの患者のビデオ通話も、「またご主人と一緒の暮らしができないものだろうか」という思いから実現しました。“すき間”を埋めることだけではなく、一緒に埋めようと奔走する姿勢を持てることが大切だと思います。

取材・構成/敦賀陽平

野口百香(のぐち・ゆか)
一般社団法人TMG(戸田中央メディカルケアグループ)本部・医療福祉部シニアスーパーバイザー。1989年にTMGの病院に就職。その後、2001年にTMG医療福祉部長となり、20年から現職。21年6月、公益社団法人「日本医療ソーシャルワーカー協会」の会長に就任。認定医療ソーシャルワーカー、認定社会福祉士(医療分野)、認定社会福祉士認証認定機構登録スーパーバイザー。

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