濃くて癖ツヨ、だから沼る「小多機のケアマネ」
強烈なご利用者とご家族が、教えてくれたこと(前編)
- 2023/09/26 09:00 配信
- 濃くて癖ツヨ、だから沼る「小多機のケアマネ」
- うりさん
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小規模多機能型居宅介護、略して「小多機」。専従のケアマネジャーが配置されていることもあり、居宅介護支援事業所で働くケアマネには、ちょっと縁遠い存在でもあります。その現場に10年あまり立ち続けているうりさんが、小多機の濃くて癖ツヨな実情を、赤裸々に語ります!
小多機のケアマネとして13年間、多くのご利用者様・ご家族様に関わらせていただきました。みなそれぞれに癖が強い、個性的な方でしたが、中でも、私にとって非常に思い出深い方をご紹介します。
お目付け役として同伴通所するご主人
その方は70歳代後半の女性です。仮に「ちよちゃん」としておきます。50歳代後半に若年性アルツハイマー型認知症を発症した方で、ご主人が20年近く、ちよちゃんを支えていました。
ご主人は、どこに行くにもちよちゃんと一緒。「通い」の日は必ずご主人も一緒に事業所に同伴通所されました。そう、お世話役兼職員のお目付け役として。実際、職員がご主人の意に沿わないケアをするとすかさず「ちよちゃん、嫌やなあ!」と、ご主人の嫌味がさく裂していました。
そのため、職員の中には「ほんと、やりにくいわ!ちよちゃんだけのほうが、いいのに」という人もいました。
お世話係としても、なかなかに強烈。ちよちゃんが食事を拒否して口を開けないことがあると、「なんでや!ちよちゃん!はよ、食べんか!死んでしまうぞ!」と、職員を押しのけて肩を思いっきり揺さぶり、スプーンを固く閉じた口に突っ込むのでした。
ちよちゃんの死後、ご主人のグリーフケアを担当
そんなちよちゃんも、いよいよ食べられなくなり、動けなくなり、最期が近くなりました。そして、ある夜、ちよちゃんは、静かに亡くなりました。
ご主人の落胆ぶりは、見るも痛ましいほど。このまま、ちよちゃんの後を追ってしまうのではないかと心配になるほどでした。そのため、ご主人の心のケア(グリーフケア)が私の仕事の一つとなりました。
遺影をみせて、のろけるご主人
ご主人は、毎日のようにちよちゃんの思い出話をしてくれました。
社交ダンスをしていた自慢の嫁さんであったこと。
若年性認知症を発症してからは「ボケて」家の中でうんちをしたこともあったこと。
精神科に入院となったが、かわいそうで週末には毎週外泊させてお世話をしていたこと。
時には、ちよちゃんの遺影をみせながら、こんなのろけ方もしてくれました。
「ほら、見てみ。今でもちよちゃんは、わしを見てくれているんや!わしがどこに動いても、ちゃんと、目で追っているんや!ええやろぉ、うらやましいやろぉ」
若年性認知症の伴侶と共に歩んだ日々に、苦悩と苦痛がなかったはずがありません。それでも、ご主人は、どんな思い出も苦労話も、穏やかに、うれしそうに語り続けていました。
ちよちゃんをお世話し、同じ時間を共有することにこそ、生きる意味を見出していたのでしょう。
家族の形にも、夫婦の愛にも、決まった形などない。そんな当たり前のことを、改めて学ばせて頂けたケースでした。

- うりさん
- 「措置の時代」から介護業界で活動。ケアマネ歴は14年、そのうち13年間、小多機のケアマネとして活躍。座右の銘は「もまれてもまれてころがって、もっともっとまあるくなあれ」。
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